2022年11月12日土曜日

『トップガン マーヴェリック』

★★★★☆ 

前作の『トップガン』は、上映当時話題になったことはおぼえていますが、映画館では観ていません。後にテレビで観た可能性はありますが、まったくおぼえていません。

今作は、前作の直接の続編ということで、トム・クルーズ演じるマーヴェリックが教官としてトップガンに戻ってくるというストーリーですが、全体として見た場合、結局マーヴェリックの"現役バイロットとしての"活躍を描いているとしか思えないので、ちょっと想像と違いました。

高い技術を持った者が老いていくことや、その技術をいかに若い者に継承していくかといった問題は映画として充分見応えのあるテーマとなりうると思いますし、トム・クルーズも実際そういう年齢だと思います。本作が話題になったのもそこがおじさん世代の共感を得たからかと思っていたのですが、そうではなかったようです。個人的には、おじさんとして生きるトム・クルーズを見て見たかったと思います。

本作は、ウクライナでの戦争が継続中の上映でした。作中の敵国が具体的にどこなのかは語られていませんが、どんなにカッコよく描いても、戦闘機が活躍するということは敵の命を奪うこと。エンターテインメントとしてミッションの成功を大喜びする描写は必要だと思いますし、この作品の中で戦争の是非を問うのは違うでしょうが、見る側としては「スカッとして気持ちよく観終わった」というわけではありませんでした。


公式サイトは、こちら。

https://topgunmovie.jp


2022年10月22日土曜日

『RRR』

★★★★☆

『バーフバリ』シリーズのS.S. ラージャマウリ監督作品。

超ド迫力のアクションエンターテインメントという点では『バーフバリ』とまったく同じテイストなので、『バーフバリ』が好きな人は本作も好きだと思います。

2作品は、時代背景や設定はもちろんまったく異なりますが、本質的に肉体派アクション映画なので、そのような細かい設定の違いにどれだけの意味があるか…。そうなると『バーフバリ』を見ておけば『RRR』は見なくてもいいという考え方も成り立ちます。弓矢を使ったアクションシーンは、実際『バーフバリ』とよく似ていました。

ハリウッドのアクション作品が緩いとは言いませんが、インドのアクションって、エキストラが何十人か死んでるんじゃないかと思うほど荒っぽいシーンが多いように思います。観客としては、それを見てたぎるのかエグくて引くのかが、この作品の評価の分かれ目かもしれません。

インド映画はわかりやすい勧善懲悪。ヒーロー像はめちゃめちゃ強くて、仲間にはめちゃめちゃ優しくて涙もろいというのがお決まりで、悪く言えば画一的。

本作の舞台は1920年代のイギリス統治下のインドなので、イギリスが極悪に描かれています。あまりそういう作品は見たことがなかったので新鮮でした。

今回、この作品の日本公開に合わせて監督と主役俳優2名が来日したそうで、これまでのインド映画ではなかったほど、プロモーションに力が入っているようです。上映映画関数も多いと思います。日本でのインド映画人気はまだまだ局所的ですが、この機会に人気が定着して、より多くのインド映画が日本で見られるようになってほしいものです。その起爆剤となる衝撃力が、『RRR』にはあると思います。


公式サイトは、こちら。

https://rrr-movie.jp/

 

2020年12月31日木曜日

『サーホー』

★★★☆☆

『バーフバリ』のプラバース主演の現代劇。
亡くなった闇社会のトップが残した資産をめぐる、組織内の各勢力の争奪戦と、それを阻止しようとする警察との攻防を描いた、アクション映画。
格闘アクションあり、カーアクションあり、謎解き要素あり、複雑な伏線あり、どんでん返しあり、ラブロマンス要素あり、押してインド映画のお約束のダンスシーンもありという、てんこ盛りな作品。
プラバースは、捜査官役ですが、『バーフバリ』同様超人的な強さ。ただ先に観た『バーフバリ』の方が印象が強いので、相対的に見劣りがする気がします。

公式サイトは、こちら。

2020年3月6日金曜日

『プレーム兄貴、王になる』

★★★★☆

2020年最初のインド映画。

最近のインド映画は多様化が進み、何が典型なのかよくわからない印象です。
私自身も、インド映画を総括的に語れるほど観ているわけではありません。

が、この作品は、私が初めて観たインド映画『ムトゥ 踊るマハラジャ』に近い雰囲気を感じます。おそらく昔ながらのインド映画の王道なのではないかと推察します。

貧乏役者のプレームが、行方不明になった王子と顔がそっくりだったため替え玉として連れてこられ、王子の婚約者とのラブストーリーあり、権力争いに巻き込まれアクションあり、インド映画定番の歌と踊りあり、笑いあり、涙あり、ハラハラドキドキあり、といった、とてもわかりやすい娯楽作品。

『ムトゥ〜』もそうですが、インド映画はどうやら、庶民の正義が権力者の悪事を打ち砕くという構図が好きらしいです。そして、庶民の正義の象徴となる主人公はだいたいお人好しで仲間思いで強いというのが定番のようです。本作の主人公プレームも、まさにそういうキャラクター。

『ムトゥ〜』は25年も前の作品なので時代も違いますが、作品の舞台がインドの田舎だと思いますが、『プレーム』はスマートフォンも登場するので時代的には現代で場所も随分都会です。ただ、現在のインドにああいう王族がいるのかが私にはよくわかりません。

インド映画らしいインド映画に触れてみたい方はぜひ。


公式サイトは、こちら。
https://prem-aniki.jp

2020年2月21日金曜日

『1917 命をかけた伝令』

★★★★☆

直前まで観に行くつもりはなかったのですが、アカデミー賞ノミネートや全編ワンカットに見えるように撮影しているということで、何となく興味が湧いて観てみました。

ストーリーはいたってシンプルで、第一次大戦中のイギリス軍の兵士が、敵ドイツ軍が潜んでいるかもしれないエリアを通って最前線の味方に作戦中止命令を伝えるというもの。

全編ワンカット風の映像は臨場感があり、戦場に立たされる恐怖感を疑似体験できます。
この感じ、前にも体験したような気がして思い返してみると『ダンケルク』とちょっと似ている気がします。

『ダンケルク』の方は第二次大戦ですが、なぜかやはりドイツ軍と戦闘状態のイギリス軍が撤退する内容で、ドイツとイギリス、どれだけ仲が悪いんだ?!と思ってしまいました。
そして、主人公は士官でもなく英雄でもエースパイロットでもない、本当に下っ端の兵士で、敵からの攻撃に怯えながら最終的に逃げ伸びられるかが最大の見どころという点も同じです。
『ダンケルク』も割と長いカットがあったような気がしますが、さすがに前編ワンカット(風)ではなかったようです。

で、全編ワンカット風と言えば、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』がありました。映像処理技術が発展して、本当にワンカットで撮影しなくてもワンカット風に仕上げられるようになると、ちょいちょいこういう作品が出てくるのでしょうね。ただ、全編ワンカットの使い道としては『バードマン〜』より『1917〜』の方が必然性を感じる気がします。

ただ、実際には全編ワンカットというには無理がある繋ぎ方の部分もあって、ちょっと宣伝文句として強調しすぎのような気もします。技術的には、本当に全編ワンカット風の映像は作れるのでしょうが、演出上は息継ぎをするタイミングを用意できなくなりますし、時間経過が表現できなくなり、むしろ不自由になるのかもしれません。
そういう部分が多少あっても充分素晴らしい映像技術ですし、技術サンプルではなく作品なので、完全な全編ワンカットにこだわらない姿勢は間違っていないと思います。

今年のアカデミー賞は『パラサイト 半地下の家族』が話題ですが、昔ながらの西洋的なアカデミー賞作品の流れをくむ映画として本作もなかなかよかったと思います。


公式サイトは、こちら。
https://1917-movie.jp

2020年2月9日日曜日

『フォード VS フェラーリ』

★★★☆☆

私は、車には詳しくないですし、今は自分の車を持ってもいませんし、もう随分運転もしていません。
でも、自分が学生のころはF1をテレビで放送していましたし、周りに車好きの友人がたくさんいたということもあり、常に何となく気になる工業製品の一つではあります。

車に限らず、様々な製品開発の裏話や苦労話にはとても興味があります。
レーシングカーはある意味極限の製品開発なので、そこにどんな裏話があるのか知りたくて、この映画を観てみました。

製品開発をドラマの中で表現するとき、どこまで専門技術に触れるかは難しいところだと思います。ある程度触れないと製品開発を描いたことにならないですし、やりすぎると一般の観客はついていけなくなります。
この作品の場合は、あまり専門技術には触れないという選択をしたような印象でした。テストドライブと設計上の仕様変更を繰り返す描写はあるのですが、具体的な技術的説明は端折っているので、結局キツイ練習に耐えたので足が速くなったというような理解しかできず、スポ根の色合いが強くなっている気がしました。
つまり、製品開発の裏話を期待していた私にとっては、ちょっと物足りませんでした。

また、フォード対フェラーリという構図の他に、フォード社内の現場対上層部という対立の構図があって、こちらは、まあ想像の範囲でしたが楽しめました。朝の情報番組で「『踊る大捜査線』のよう」と表現していましたが、なるほどそのような感じでした。

マット・デイモンがフェラーリのル・マンプロジェクトリーダー役でクリスチャン・ベールががドライバー役なのですが、なぜか自分の中では、逆の配役の方がしっくりくるような気もしました。

ちなみに、私の知り合いがこの映画について解説(?)しています。
https://nikken-career.jp/special/1371/


公式サイトは、こちら。
http://www.foxmovies-jp.com/fordvsferrari/

2020年2月1日土曜日

『ロマンスドール』

★★★☆☆

蒼井優さんとタナダユキ監督というと『百万円と苦虫女』という作品がなかなか面白かったので、この作品も観てみようと思いました。

ラブドール職人であることを隠したまま結婚した夫と妻、それぞれの嘘や秘密やすれ違いが描かれています。でも、ラブドール職人という特殊性を除けば、割と普通のストーリー展開のような気がします。

あとは、役者の芝居の力のような気がします。
相変わらず蒼井優さんの演技は素晴らしいと思います(あ、でも旦那さんの山里さんはあまり見たくないかも ^^;)。そして、高橋一生さんも他の役者さんも、演技演技しておらず、サラリとその人になっている感じがします。

ピエール瀧さんもガッツリ出演して、いい味出しています。手錠かけられるシーンもあって、ちょっと余計なことを考えてしまいましたが、それを当然のことのように上映しているのは、この作品の制作に関わったどなたかが頑張ったからでしょうか。心の中で拍手を送りたいと思います。

ラブドール職人の話とはいえ、ラブドールそのものにはそんなにフォーカスが当たらないのだろうと勝手に思っていましたが、結構ダイレクトに登場していました。そういうものの存在は知っていましたし、すごい技術だとは思っていましたが、本物は見たこともないので、なかなか興味深かったです。


公式サイトは、こちら。
https://romancedoll.jp

2020年1月25日土曜日

『ラストレター』

★★★★☆

岩井俊二作品でちゃんと観たことがあるのは『リップヴァンウィンクルの花嫁』ぐらいで、それも映画館で1回しか観ていないのでかなり忘れている状態です。

この作品が二つの時間軸を扱っていることは何となく知っていました。最近、このようなテーマの作品の場合、主人公が時空を飛び越えちゃったり、蘇りや生まれ変わりや憑依など、SF的な要素が入っていることがよくあるのですが、この作品にはそういう要素はありません。
『リップヴァンウィンクルの花嫁』は確かちょっと倒錯感のあるシーンとかがあったような気がするので(記憶が曖昧ですが)、それと比べると現実感があるというか日常から離れない感覚の作品でした。

登場人物は基本的にみな穏やかで誠実で落ち着きがあり、演技らしい演技というよりは普通の人の普通の振る舞いをドキュメンタリーで撮っているような雰囲気でした。

それでいて、優しさや悲しさやほんわかしたものはしっかり伝わってきて、こういう落ち着いた作品もいいものだなあと思いました。

福山雅治さんは、落ちぶれた小説家をよく演じていましたが、彼が演じる限りどこかカッコよさが漂ってしまう気がしました。
そういえば、福山さんと広瀬すずさんは是枝裕和作品の『三度目の殺人』で共演していますが、別の監督作品で再び共演するのはどういう感覚なのでしょうか。映画を観ているときはまったく気づかなかったのは、それぞれの役者さんが本作の登場人物になり切れているということなのでしょうか。

庵野秀明さんの出演もそうですが、鈴木慶一さんや小室等さんも出演されていて、不思議なキャスティングだと思いました。


公式サイトは、こちら。
https://last-letter-movie.jp

『パラサイト 半地下の家族』

★★★★☆

カンヌでパルム・ドールを取った作品ということはかなり前に知っていて、そのときから観に行こうと決めていました。

実際に観てみると、なるほど、面白いと思いました。

低所得層の一家が家族ぐるみで犯罪に手を染めるという設定を最初に聞いたときは、同じくパルム・ドールを取った『万引き家族』とよく似ていると思いました。でも予想どおり、そこからの展開はまったく違いました。
個人的には、ストーリーの起伏や展開がはっきりしている『パラサイト〜』の方がわかりやすくて好きです。まあ、比べるものではないと思いますが。

前評判としては、予想外の方向へ話が展開していくということだったのですが、まさにその通りでした。ただ単に予想外に展開させるのはたぶん簡単ですが、それだけだとデタラメな印象になってしまいます。とてもよく練られて、はっきりと意味的なつながりがあるのに観客の想像とは違う展開、つまりよく言われる"斜め上をいく"ということになるのでしょうか。

格差社会を描いていますが、必要以上な重苦しさや湿度感はなく、ドタバタやコミカルな部分もあり、一方で暴力的な部分もあり、サスペンスっぽい部分もありの、エンターテインメントだと思います。

ソン・ガンホさんは、ずいぶん前から韓国の名優と評されていて、出演作を何本が観たことがあります。イケメン芸能人がたくさんいる韓国で、彼はどう見てもおじさんですし、ダンディという感じでもなく、どういうポジションなのかよくわかりませんでした。
最近は、年代的にはちょっと差がありますが、日本でいうと西田敏行さんのような感じなのではないかと、思うようになりました。

公式サイトを見ると、日本の俳優さんや映画監督のこの上ない賛辞が多数掲載されていますが、私自身はとても面白いと思ったものの、そこまですごいという感じはしませんでした(^^;)。

公式サイトは、こちら。
http://www.parasite-mv.jp

2020年1月4日土曜日

『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』

★★★★☆

『この世界の片隅に』からずいぶん時間が経っており、テレビで放映されたときに録画はしたもののきちんと見返していないので、どこがどう違うのか、どのシーンが追加されたのか、あまりちゃんとわかりませんでした。

白木リンさんとのエピソードなどが追加されたのだと思いますが、TVドラマ版では登場していたので、既視感がありました。
リンさんが登場すると、すずさんの嫉妬心が描かれることになり、彼女がただ単にボーッとした性格の女性とは違う、別の一面が感じられます。

168分というとても長い作品ですが、どんどん戦況が悪くなっていき、原爆が落とされ終戦を迎えるという流れがわかっているせいか、さほど長さは感じませんでした。

戦争を、完全に庶民の目から描いていること、戦時中の生活を丁寧に細かく描写していることは、やはり新鮮ですし素晴らしいと思います。
ついでに、あそこまで頭身を落として、人物のプロポーションを子供っぽく描かなくてもいいのではないか?と『この世界の片隅に』を観たときと同じ疑問も再び感じました。


公式サイトは、こちら。
https://ikutsumono-katasumini.jp


さて、昨年2019年に観た映画は30本でした。
一方で、星5つを付けたのが3作品ありました。星5つをつけたのは『バジュランギおじさんと、小さな迷子』のみでした。
そして、インド映画(正確な定義が難しいですが、ざっくりとインドがらみの映画)は9本で、年間を通してよく観たという自覚があります。