2016年9月24日土曜日

『聲の形』

★★★★☆

原作のマンガは読んでいませんが、聴覚障害者へのいじめの描写がきつすぎると話題になったことが頭の片隅に残っていた作品。
映画については、近所の映画館ではやっておらず当初は観ないつもりでしたが『君の名は。』がとてもよかったので、ちょうど登場人物が同じ年代のこの作品が気になって観てみることにしました。

結論としては『君の名は。』とは全く違う、でもとてもいい作品だったと思います。

ストーリーはかなり暗くて重たい内容でした。それをかなりストレートに、思っていたよりもずっと真面目に描いている印象でした。
キャラデザインはとてもイマドキ感があり、いわゆる胸キュンものと区別がつかないビジュアルなのです。実際、恋愛の要素も入っているのですが、聴覚障害やいじめといったテーマが入っている分、辛さ、苦しさ、悩みなどのネガティブな空気感が強かったと思います。

今年、日本テレビの24時間テレビとNHKのバリバラが放送されたころに『感動ポルノ』という言葉を初めて知ったこともあり、この作品は感動ポルノなんだろうか?という疑問を持ちながら観ましたが、自分としては感動ポルノ的ではないと思いました。

すごくリアルに感じたのは、いじめのきっかけの描き方。人は、それまで自分たちがやっていたやり方やノリを誰かのために変えさせられそうになると、どうしてもその人を排除して、これまでのやり方を維持しようとしてしまうんですね。
本当はやり方を変えることによって新しい何かが得られるということもあるはずですが、なかなかそういう捉え方は難しいようです。ましてや、経験が少なく比較的狭い世界で生きている小学生には、相当なハードルだと思います。

そして、ストーリー上は全くフォーカスが当たらないのですが、あの担任の教師の対応は相当にまずいと思います。

BGMの音楽は、曲としての印象は特に残っていないのですが、サウンドとして印象的でした。というのは、割と目立つノイズが入っているのです。プールで耳に水が入ったときのようなちょっとボソボソとこもったような音が聞こえていました。もしかしたら聴覚障害者の聞こえ方を再現しているのかな?とも思いましたが、公式サイトには、ピアノのハンマーが動く音や消音フェルトが擦れる音などについて触れているので、あれは楽器から出る、本来の音以外の音なのかもしれません。何れにせよ、意図的に入れられたノイズのようです。

さて、今回は渋谷の映画館で観たのですが、周りのお客さんは若い人が本当にたくさん。彼らの目にこの作品はどのように見えたのかなあ。


公式サイトは、こちら。
http://koenokatachi-movie.com





2016年9月17日土曜日

『四月は君の嘘』

★★★☆☆

たまたまテレビアニメ版を観たことがあって、おじさんにはキュンキュンすぎて小っ恥ずかしい作品ではあったのですがとてもよかったので、実写版も観てみました。

あの作品を2時間に凝縮して実写化すると、まああんな感じになると思います。印象に残っていたシーンやセリフは入っていたし、キャラクターの雰囲気もそれなりに再現されていたと思います。
でもやはりアニメ版を超えた気はしませんでした。どうしても広瀬すずさんは広瀬すずさんに見え、山﨑賢人君は山﨑賢人君に見えてしまいました。

演奏シーンは、実際の演奏家でないとわからないようなヴァイオリンとピアノの掛け合いを表現しなくてはいけないので、アニメ版でも演出が難しいところだと思います。実写版では役者が本当の演奏家に見えるかどうかということも含めてさらにハードルが高くなると思います。広瀬すずさんも山﨑賢人君も、思った以上にちゃんと弾いていたようですが、シーンの仕上がりとしてはなかなか微妙な気がしました。

ところで、アニメ版を観たときは、この作品の主人公は山﨑賢人君演じる有馬公生だと思っていたのですが、実写版では広瀬すずさん演じる宮園かをりが主演扱いのようです。
まあ誰が主演で誰が助演でもいいのですが、なんだかちょっと引っかかりました。


公式サイトは、こちら。
http://kimiuso-movie.jp





『超高速!参勤交代 リターンズ』

★★★☆☆

お気楽なコメディ時代劇。
前作同様、いい感じのゆるい笑いを誘う、ちょっとB級感のある作品。

ストーリー的には完全に前作の続きですが、『超高速!参勤交代』のようにテーマがはっきりしている作品の続編はやはり難しいですね。

前作が江戸への往路、本作が自藩への復路を描いたものです。
前作は、基本的に期限内に江戸へ到着することが目的で、江戸到着でほぼエンディングだったと思います。
ただ、続編で全く同じパターンでは作品に新鮮味がありません。でも『超高速!参勤交代』の続編なので、"急いで移動しなければならない"というテーマは外せません。案の定、急いで藩に戻った後も藩で起こった事件を解決するべく色々と話が続きます。全体の印象としては、超高速移動よりもこちらの事件解決の方がメインテーマのように思えます。

『超高速!参勤交代』というキャッチーなタイトルは面白いと思いますが、続編を作ることを想定した場合、逆に足かせになってしまった気もします。あの設定、キャラであれば、さらなる続編も作れると思いますが、もう往路と復路を使ってしまいましたから、かなりやりにくいでしょう。

ところで、作中に出てくる湯長谷(ゆながや)藩って、てっきり架空の藩だと思っていたのですが、実際にあったんですね。佐々木蔵之介さん演じる藩主、内藤政醇(まさあつ)も実在の人物のようです。あのキャラは脚色なんだろうけど(^^;)。


公式サイトは、こちら。
http://www.cho-sankin.jp







2016年9月1日木曜日

『君の名は。』

★★★★☆

"次は新海誠監督が来る"という話をテレビか何かで聞いて『秒速5センチメートル』を動画配信で観て、とにかく背景画の美しさに感銘を受けました。
その後『言の葉の庭』も動画配信で観てやはりよかったので、『君の名は。』は最初から観に行くつもりでした。
ヒットしているようで、なんだかちょっと嬉しいです。

『秒速5センチメートル』では、新海監督自身が美術監督や色彩設計もやっていたようで、背景画にとてもこだわっていたんだと思いますが、『君の名は。』では、このような役割ではクレジットされていません。でも、期待を裏切らない絵の美しさでした。作品の舞台が東京と田舎なので、都市も自然も魅力的に描かれており、贅沢な写真集のようでした。

最近は一見日常的なストーリーでも、蘇りや人格の入れ替わりや人の心が読めるなど、ちょっと非現実的な設定を加えてあるものがしばしば目につきますが、この作品もそんな感じ。作る側としては目新しさが欲しいのかもしれませんが、私自身は必ずしも好きではないので、星は4つとしました。
でも、全体としては爽やかで淡いラブストーリーで、なかなかよいのではないでしょうか。

これまでに観た新海作品はいずれも1時間程度かそれ以下の中編だったので、『君の名は。』はとても長く感じました。後半はストーリー的にもちょっと複雑で、集中力が必要かも。

声優は、いわゆる声優さんと俳優さんが混ざっているようですが、特に違和感はありませんでした。

音楽はRADWIMPSだそうですが、予告編を見たときはてっきりBUMP OF CHICKENだと思いました。本編ではボーカル入りの楽曲が4曲ほど流れるのですが、やっぱり声も歌詞のメロディへの乗り方もBUMPっぽくて、自分のような素人には区別がつかないですね。

この作品は、海外展開されるそうですが、田舎の神社の風習とかが出てくるので、海外の人にはどのように伝わるのか、興味深いところです。

公式サイトは、こちら。
http://www.kiminona.com/index.html


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2016年8月13日土曜日

『ジャングル・ブック』

★★★☆☆

主人公の男の子以外全部CGということに興味を持って、観てみました。

CGは本当にすごいと思いました。でも、イマドキのフルCGアニメは実に細かいところまで"演技"しているし、実写作品で使われるCGも実際の映像と区別がつかないほど溶け込んでいることを考えると、このくらいはできちゃうんだろうなあという感じ。

動物の造形は基本的にリアルなのですが、たまに若干アニメキャラっぽさを感じさせるものもあった気がしました(センザンコウあたりが、ちょっとアヤシイ)。

アニメの『ジャングル・ブック』は知らないのですが、ストーリーは正直言って普通だと思いました。ライオンキングも主人公が人間ではないだけで、大きな意味では同じような展開。
『ターザン:REBORN』は観にいくつもりはありませんが、ちょうど同じ時期の上映。似たような"ジャングル映画"の中で、どれだけ差別化できているのかは疑わしい気がします。

それにしても、寒いところに生息する動物も暖かいところに生息する動物も、アフリカに生息する動物もアジアに生息する動物も、同じジャングルに棲んでいることになっているのは、この手の"ジャングル映画"の共通点ですね。不思議と、ライオン、キリン、シマウマなどの定番の動物は登場しませんでした。
…と思ったら、登場する動物はインドに生息するものに統一されているとか。オオカミってインドにいるのか。知らなかった。


公式サイトは、こちら。
http://www.disney.co.jp/movie/junglebook.html



2016年8月5日金曜日

『ファインディング・ドリー』

★★★★☆

『ファインディング・ニモ』はDVDを持っているのですが、細かいストーリーはあまり覚えておらず、今回のために見返したりもしませんでした。
そのせいか、よかったと思うのですが、なぜか私自身はノリきれなかったという感覚が残りました。1年後のストーリーを13年後に製作するなんて、勘弁してほしいです(^^;)。

考えてみると、今作品のように行ったことがない場所へ行くというストーリーは、いわばロード・ムービーなわけです。行く先々で色々な人と出会い、色々な危険に遭遇するというエピソードをつないで一つの作品になっているのですが、個々のエピソードの関連性や必然性が希薄な作品は、私は苦手です。

『ファインディング・ドリー』の場合は、関連性や必然性がないわけではないと思うのですが、ドリーというキャラクターはかなり衝動的で思いつきで動くタイプなので、この強烈な個性に引っ張られて、エピソード自体が無関係に起こっているように見えちゃったのかもしれません。

ディスニー作品の『ズートピア』は差別問題を扱っていることで話題となりましたが、このドリーも人間社会では仲間はずれにされそうなキャラクター。こちらはピクサースタジオ作品ですが、その辺りを狙いたい何かがあるのでしょうか。

同時上映の『ひな鳥の冒険』は、最初実写のように見えてびっくりしました。ヤドカリやひな鳥はキャラクターらしくデザインされているのですが、親鳥はかなりリアルでした。
今後ピクサーが実写映画のCGのような方向性の作品を作ることもあるのか?などと考えてしまいました。

星は4つにしましたが、正確には3と4の間ぐらいかなあ。


公式サイトは、こちら。
http://www.disney.co.jp/movie/dory.html



2016年8月4日木曜日

『シン・ゴジラ』

★★★★☆

ゴジラ映画というと、子供のころにゴジラシリーズが割とエンターテインメント化していった世代だと思うのですが、私はもっぱらテレビでウルトラマンシリーズを見ていました。
そして、あらためて思い返してみると、ちゃんと観たゴジラ映画はハリウッド版だけだと気づきました。

で、今回のゴジラですが、とてもシリアスな作品で、少なくとも自分が観たハリウッド版2作品よりははるかに見応えがありました。
それはたぶん、もし現在の日本にゴジラのような巨大生物が現れたら、社会はどうなるのか?国家はどうするのか?を限りなくリアルに再現しようという狙いが自分には刺さったのだと思います。

日本のアニメ作品には、ディテールの設定をとことんまで追求することで作品の世界観にリアリティを持たせようというアプローチがよく使われている印象があります。『機動戦士ガンダム』も当時としてはとても細かかったし、『攻殻機動隊』もすごいし、ジブリ作品も方向性はずいぶん違っていますがディテールの積み上げによる世界観の構築という点では似たようなことをやっていると思います。
『新世紀エヴァンゲリオン』ももちろんそういう作品の一つなので、庵野ゴジラがこういう作品になるのは、すごく納得できます。

演出的にも、ゴジラへの最後の作戦の次々と攻撃をたたみかける感じとかは、まさにエヴァでした。

俳優陣は、長谷川博己さん、石原さとみさん、國村隼さんなど、樋口真嗣監督の『進撃の巨人』出演者と結構かぶっているのでどうなんだろう?と思っていましたが、全然大丈夫でした。

エンドロールでは伊福部昭楽曲を使っていました。日本のゴジラ映画を全く観てこなかった私ですが、不思議と感慨深い気持ちになりました。
その音楽が、モノラルだった気がするのですが(スクリーンの真ん中から聞こえる)、当時の音源そのものなのでしょうか。

星は4つにしましたが、正確には4と5の間ぐらいかなあ。


公式サイトは、こちら。
http://shin-godzilla.jp











2016年7月30日土曜日

『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』

★★★★☆

前作は映画館で観ていますが、その後テレビやDVDなどでは1度も見直す機会はなかったので、20年前のかすかな記憶が残っているだけです。
はっきり言って細かいストーリーは覚えていません。都市全体を覆うような異星人の宇宙船が現れて、人類が壊滅的な状況に追い込まれること、元パイロットであるアメリカ大統領自ら戦闘機に乗って戦うこと、エイリアンの姿は出てこないのかと思ったら最後にちょっとだけ出てきたこと、ただ一人のヒーローやチームが活躍するのではなく色々な立場の人たちの物語を追う群像劇であること、などがかろうじて思い出せます。

で、今回の作品は前作の20年後を描いた続編なので、共通の登場人物が何人か出てくるのですが、私が覚えているのはジェフ・ゴールドブラムだけ。前作で戦闘機に乗った元大統領が同じ役者さんなのかは見てもわからないし、20年ぶりに意識を取り戻した科学者に至っては「この人は誰?」というありさま。
でも、前作とのつながりがわからなくても楽しめる作りだったと思います。

群像劇なのは今回も同じで、「ああ、そういえば前作もこんな雰囲気だった気がするなあ」と、ちょっと懐かしい感じ。どうやら私は群像劇スタイルは好きみたいです。

全体的なスケール感や、アクションエンターテインメント映画としてのクオリティも、大ヒットした前作と同等だと思います。

ただ、20年前と今ではアメリカという国の状況が大きく違います。
前作のときも「アメリカ人って、ここまでアメリカ最高!アメリカは偉大なり!っていう映画を、よく恥ずかしげもなく作れるね」と私の周りでは話していました。それは、実際に国際社会の中で1番影響力のあるアメリカが調子に乗っているという意味でした。

今作もブレることなく「アメリカ最高!アメリカは偉大なり!」という映画に仕上がっているのですが、今回はどちらかというと当時と比べるとパワーが落ちているアメリカ国民に向けての"国威発揚"という意味に思えます。
その目線でこの映画を見てしまうと、出来過ぎたストーリー展開はむしろイタイ印象になってしまうから不思議なものです。

ところで、この映画のタイトルのカタカナ表記『インデペンデンス』の"デ"が気になって仕方がありません。英語の発音からすると"ディ"の方が近いと思います。前作も"デ"だったようなので、続編も同じ表記にせざるを得ないのでしょうが。


公式サイトは、こちら。







2016年7月24日日曜日

『ロスト・バケーション』

★★★★☆

予告編を観たときから、観に行くことを決めていました。

なかなかよかったと思います。
干潮時だけ海面から出ている岩の上で、いかにサメから逃れるかという究極のサバイバル映画で、それ以外の要素はほとんどありません。
ストーリーの都合上、主人公がなぜそのビーチに来たのかという背景説明の要素とサーフィンのシーンにそれなりの時間をとっていますが、それは前フリに過ぎません。という割に、サーフィンのシーンが結構本格的でカッコよく、美しかったです。

こういう究極のサバイバルもので私が期待するのは、「よくその作戦に気づいたなあ」とか「限られた状況の中でよくそれが実現できたなあ」とか「確かにその作戦なら効果があるよね」とか。意外性と納得感といえばいいでしょうか。

そいういう意味では、この映画の場合ちょっと状況が限られすぎていた気がします。サーフィン中なので身につけているものもごくわずか。おのずと、作戦が限られてきます。正直、ものすごく意外性と納得感のある作戦ではなかった気がします。
せめてもう少し何か持っていたら、色々なバリエーションが出せて私好みになったと思うのですが、まあそれは制作者の意図とは違うのかもしれません。

ともかく、ほぼ全編ずっと緊張感があって、独特の恐怖感を堪能できました。それにしても、サメってあんなにしつこくつきまとうものなのでしょうか。

映画のタイトルは原題では"The Shallows"。浅瀬という意味のようですね。邦題として『ロスト・バケーション』としたかった意図はよくわかりますが、若干説明的すぎるかなあ。

公式サイトは、こちら。
http://www.lostvacation.jp/splash/





2016年7月2日土曜日

『エクス・マキナ』

★★★☆☆

この作品の存在は知っていて気になっていたものの「SFホラー」と銘打たれていたので、怖いなら観るのはやめておこうと思っていました。でも、Facebookで友人が観たことを知り、負けじと(というわけでもないのですが ^^;)観ることにしました。

そもそも"EX_MACHINA"が何だかわからず調べてみたところ、"機械仕掛けの"というような意味らしいですね。

さて作品は、要は「AIはやっかいだ」という内容なのですが、AIのどういう性質がどのように危険だというメッセージなのか、あるいはそういったメッセージを発信する意図はないのか、正直よくわかりませんでした。

ただ、雰囲気はかなりよかったと思います。
女性型ロボットAvaの透明なボディは面白いと思いました。彼女はとにかく姿勢がよく動作がゆったりしていて、床に座るときは正座をします。その振る舞いに"所作"のようなものすら感じました。
閉鎖された空間の中で、ごく少人数でストーリーが展開する作りも好きです。

星は一応3にしましたが、3と4の間ぐらいの印象でした。

結局「SFホラー」といっても、私にとってはそれほど怖いとは思わない(少なくともホラー映画の怖さではない)作品でした。


公式サイトは、こちら。
http://www.exmachina-movie.jp/index.html


Blu-ray / DVD

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