まだ公開されていませんが、映画の方を先に知りました。で、その原作が小説ではなく、教養本だということを知って、ガゼン興味を持ちました。
読後の印象を率直に言えば、元になった資料が家計簿だということを、読者としてものすごく強く意識したという感じではなかったかな。武士の経済活動をテーマにした一般的な教養本というイメージ。
実際、「金沢藩士猪山家文書」には日記や手紙も含まれており、これによって彼らの行動や思考が明らかになっている部分も多いようです。さらに、巻末の参考文献には様々な著書や論文が多数掲載されており、この本が書かれるにあたって、武士の家計簿は、重要ではあるかもしれませんが、資料の一部に過ぎなかったことがうかがい知れます。本のタイトルとしては非常にキャッチーでいいと思いますが。
内容的には、様々な経済的課題が発生するごとに対策を講じて解決していったというよりは、家財を売り倹約して莫大な借金を返済したことが全てという印象でした。明治になってからは、猪山家はどちらかというと成功者で、困窮した生活とは無縁の状態なので、見方によっては、ちょっと期待はずれでした。
それでも、倹約生活の中でも、武士が何にお金をかけて、どこを削っていたのかがかなり詳細にわかるので、意外な事実を色々と知ることができました。もしかしたら、もう少し家計簿にこだわって、いつどんなものをいくらで購入したのかを追いかけるような内容でもよかったかもしれません。
これが、森田芳光監督によって、どんな映画になるのか、ちょっと楽しみです。