2012年5月27日日曜日

『レンタネコ』

★★★☆☆

『かもめ食堂』の荻上直子監督作品です。
予想通り『かもめ食堂』同様、起承転結がはっきりしないけど、なんとなーくほのぼのしてしまう映画でした。

ほの可笑しくてよかったのは、なぜか小林克也が隣のおばさん役をやっていること、ネコを借りるお客さんとの会話が毎回同じところ、ドーナツの穴を食べる方法、…でしょうか。

ネコがたくさん登場しますが、なかなかいいです。ルックスのいいネコばかりではないあたり、作り手の本気のネコ愛を感じます。

主役の市川実日子さんは、個人的にはちょっと苦手かも。なぜだろう?モデル顔過ぎるからかなあ。演技も、どこがとは説明できないけど、何か微妙に違和感あった気が。いや、単純に自分が、キツネ顔よりタヌキ顔が好きというだけのことかもしれません。

『かもめ食堂』の印象がとてもよかったので、それと比べて星3つにしました。冷静に比較したらどっちがいいかわかりませんが。

どうでもいいことですが、荻上監督って千葉大の工学部出身なんですね。画像工学科だそうです。…なんとなく親近感(^^;)。

2012年5月13日日曜日

『ロボット』

★★★★☆

SFアクションもののインド映画。

私が初めてインド映画を観たのは『ムトゥ 踊るマハラジャ』という作品で、調べてみると日本での公開は1998年。それ以前から、タモリがインド映画はすごいすごいと言っていたのは知っていたのですが、本当にすごかった。ぶっ飛びました。
当時のレベルとして、画像は汚いし音も悪いのですが、ストーリーの展開はハチャメチャだし、突然歌って踊りだすし、アクションはド派手だし、音楽もすごいし、とにかく面白いのです。まあ、社会的メッセージとか、人間の深い心理描写とか、そういった高級な芸術っぽさはカケラもなく、悪く言えば薄っぺらで超世俗的エンターテインメントですが、それでも惹きつけられるものがありました。

それ以来、映画館やDVDで数本観たのですが、映画館で上映される作品がなくなり(私がしらなかっただけかもしれませんが…)しばらく縁がなくなっていました。何年か前に『スラムドッグ・ミリオネア』という作品がありましたが、あれはインドを舞台にインド人俳優が出ているだけで、インド映画、いわゆるマサラ・ムービーとは別物だと私は思っています。久しぶりに映画館で上映されるインド映画ということで『ロボット』は非常に楽しみでした。

主役は『ムトゥ 踊るマハラジャ』と同じラジニカーント。この人はインドではスーパースターで、彼が出る作品は最初に、映画の配給会社のロゴと同じように「SUPER STAR RAJINI」とというロゴが出ます。『ムトゥ〜』のときはかなりチャチなアニメーションだったのですが、『ロボット』ではCGの立体文字がグルングルン回っていました。すごい進歩!『ムトゥ〜』のときすでにお腹が出始めたおじさんだったので、今やおじいさんといっていい年齢じゃないかと思うのですが、あのころの印象と全然変わりませんでした。お腹の出っ張り具合も同じくらい。なぜこの人がスーパースターなのか理解に苦しむ感じも以前と同じ(^^;)。

ストーリーは、至ってシンプル。これに普通の邦画、あるいはハリウッド的な演出をしても成立しないであろうレベル。ところが、インド映画のぶっ飛び演出の下では筋書きの方が付け足しみたいなものなのです。すごいです。ハチャメチャです。SFX技術はハリウッド製だそうですが「もしかしてこれって実写?」と思わせる気はさらさらないようです。この潔さがマサラ・ムービー。

音楽はA.R.ラフマーンという人で、『ムトゥ〜』、『スラムドッグ〜』と同じ。『ムトゥ〜』では、インドの民族音楽っぽいのにテクノっぽい、不思議な作品が印象的でCDまで買ってしまいました。『ロボット』でも、その延長上の作品であることは感じられましたが、ちょっとインドの郷土色が弱いかなあ。

インド映画といえばダンスシーン。ダンスシーンだけ監督が違うほど、作る側も力を入れているらしいのですが、『ロボット』では少なめ。インド映画も変わってきたのかと思ったら、実は日本上映版は、オリジナルから大幅にカットされているのだそうです。
インド映画は上映時間が長いのが普通で、『ロボット』の場合、オリジナルは177分。ところが日本版は139分だそうです。うーむ、これは許しがたいなあ。オフィシャルサイトでは、オリジナル版を上映したいらしく、賛同者を募っています。

http://robot-movie.com/

インドといえば多言語国家で、インド人同士でも地域が違うと言葉が通じないとか。ラジニカーントはタミル語映画にたくさん出ている人ですが、『ロボット』では、聞いているとセリフにはかなり英語が使われているようです。実際、インド国内でもあんな感じなんでしょうか。

『ムトゥ〜』は、インドの割と田舎を舞台にした作品でした。当時からムンバイなどの都会を舞台にした作品もありましたが、『ロボット』も舞台は都会。登場人物の服装などもほとんど西欧と変わらない雰囲気です。それが今のインドの実態なのでしょうが、もう少し伝統的なインドの風景、インド人の生活を見せて欲しい気もします。



【2012.06.10加筆】
177分の完全版を2週間の期間限定上映ということで、観てきました。短縮版でカットされたシーンがどこか、結構わかりました。砂漠とマチュピチュでのダンスシーンが思い切りカットされていました。

インド映画は、登場人物の感情が高まったところで、それまでのストーリー展開と無関係のダンスシーンが入るのがお約束。そもそもお話の舞台はインドなのに、わざわざダンスシーンのためにマチュピチュまでロケに行くのですから、作る側としてはものすごく気合が入っているのです。

ストーリーと関係ないのでカットしやすいのかもしれませんが、あれではインド映画としては魂を抜かれた感があります。

ああ、完全版が観られて一安心です(^^)。

2012年5月6日日曜日

『宇宙兄弟』

★★★☆☆ 

原作を読んでいないので、どんな作品なのか事前に想像する材料としては予告編しかありません。

 弟が先に宇宙飛行士になっていること、兄が後から宇宙飛行士を目指すこと、弟が月面で消息を絶つこと。これらの情報は予告編で得られます。これと『宇宙兄弟』というタイトルを合わせて考えると、最終的には兄も宇宙に関わる仕事に就くのだろうと想像はしていました。でもそれが、宇宙飛行士なのか地上の管制官なのか、あるいはロケットの設計者なのか?どこへ話を持っていってもそれなりのドラマにはなるだろう、と思っていました。
 さらに、2時間ちょっとの作品としてどこをゴールにするんだろうか?と気になっていました。宇宙飛行士採用試験の結果がわかるまで?それとも兄弟2人そろっての活躍まで描くのか?

 こんなことを映画を観る前に考えていた私にとって、あの終わり方はかなり微妙。あれだったら前編と後編に分けて、それぞれきっちり描き込んでほしいと思ってしまいました。
また、採用試験も月面での事故も若干ディテールに乏しい気がしました。特に月面事故の方は、イメージシーンで何となくごまかされた感じがしてしまいました。
小栗旬や堤真一の演技も、ロケットのデザインや発射シーンもなかなかよかったので、全体的な印象としては悪くないのですが…。

それにしても、昨年からのはやぶさ映画3作品といい今回の『宇宙兄弟』といい、映画界でのJAXAの活躍ぶりは本当にすごいですね。

そして今日2012年5月5日は、通常よりも月が大きく見えるスーパームーンだそうです。天気もよく『宇宙兄弟』のレイトショーを観て自転車で帰る道中、丸い月がくっきりと見えました。なんだかとても感慨深い気持ちになってしまいました。

『アーティスト』

★★★★☆

 アカデミー賞受賞作品のモノクロサイレントムービー。

 感動したとか、ドキドキしたとか、大笑いしたとかではなく、「よくできてるなあ」と感心したというのが、一番ピッタリくる感想かもしれません。

私はサイレントムービーというものを初めて観たのですが、意外だったのは文字で表示するセリフの少なさ。私はてっきり、役者がしゃべる演技をしたら逐一字幕がでるものだとばっかり思っていました。
実際は、明らかに役者が言葉を発している演技をしていても字幕なし。何と言っているのかは、見る側の想像にゆだねられています。どうしても文字で説明せざるを得ないところだけ字幕を出すということのようです。
 逆に言えば、それでも話の流れがわかるようにできています。それが演出上どれだけ難しいことなのかわかりませんが、きっと大変なのでしょう。

サイレントと言っても、2つの意味で厳密に言うと全く音がないわけではありません。
1つは音楽。全編に渡ってBGMがふんだんに入っています。セリフ、物音、環境音などが一切ないので、BGMがないと映画館全体がシーンと静まり返ってしまいます。でも実際は、ほとんど途切れなく音楽が続いているので、それなりににぎやかでした。むしろ音楽がなくなるとハッとするほどの沈黙が生まれて、これが演出上とても効果的だった気がします。
そして、これは言っていいのかわかりませんが、もう1つ。この作品は21世紀の映画なので、もちろんセリフもその他の音も、技術的にはいくらでも入れられるわけです。それをわざと無音にしているのですが、実はちょこっとだけ音が出る場面があります。もちろん意図的な演出として。これが無音のシーンとの対比で非常に印象に残りました。
つまり、音のある状態、音楽だけの状態、完全に無音の状態の3つを自在に使い分けているわけです。これが、私が「よくできている」と感じた理由です。

2012年5月3日木曜日

『テルマエ・ロマエ』

★★★☆☆

古代ローマの浴場設設計士が現代日本にタイムスリップして、日本のお風呂文化に触れアイデアを得ていくというコメディです。もうこの設定だけで面白そうなので、絶対観に行こうと決めていました。
で、観終わった主観的な印象は★3つなのは、期待が大きすぎたのでしょう。

映画を観る前に、原作のマンガは1巻だけ読みました。最初私は、長編のストーリーだと想像していたのですが、実は1話ごとに主人公ルシウスが日本に来て、古代ローマに帰って新しい浴場を設計する、という構成でした。
これを2時間のストーリーにどうやってまとめるんだろうと思いつつ、映画を観ました。

映画の前半は、私が読んだ1巻のエピソードがふんだんに登場し、客席からも笑いが起こっていました。ところが後半になると話が少しシリアスになり、コメディというよりは感動の歴史ドラマというか、タイムパラドクスもののアドベンチャーというか、ちょっと色合い変わった感じがしました。原作の2巻以降はこんな雰囲気なのでしょうか??
個人的には、最後まで古代ローマと現代日本の文化の違いからくる笑いに徹してもらった方が楽しめた気がします。

阿部寛、市村正親、北村一輝、宍戸開の古代ローマ人役は、それだけで笑えます。私は宍戸開さんが一番はまっている気がします。