2010年12月31日金曜日

『最後の忠臣蔵』

★★★★☆

 2010年の最後に『最後の忠臣蔵』を観てきました。

 私は、赤穂浪士の話は、何となくしか知りません。それでこの映画を見ても充分理解できないのではないかと心配でしたが、私が知っている知識だけで充分楽しめました。

 “忠臣蔵”だけあって武士の忠義の話ですが、その徹底ぶりが尋常ではありません。役所広司演じる孫左衛門は、苦悩や誘惑に直面しても、常に忠義を貫きます。それも、彼の主君はすでにこの世にいないのに。彼の穏やかな口調、抑えた演技から、その忠義があらがいがたいものという以上に、彼にとって当たり前のものだということを感じさせます。
 どこまでもそんな調子かと思ったら、クライマックスに、彼の苦労が報われたと感じさせるシーンがあって、予想以上に感動してしまいました。我ながらニッポンジンだなあ(^^;)。

 役所広司、佐藤浩市の演技は、毎度おなじみ、安心感があります。役所広司は『十三人の刺客』でも武士の役でしたが、どちらかと言えば『最後の忠臣蔵』の方が、彼らしい役のような気がします。
 桜庭ななみは、かなり頑張っていたと思います。彼女、CMぐらいしか見たことがなくて、特に関心もなかったのですが、意外と魅力的でした。安田成美の芝居は久しぶりに見ましたが、もうベテランの風格(^^;)。

 シネコンでは、どの劇場で上映するか、どんなスケジュールで上映するかを、客の入りを見ながら判断しているような気がします。この作品は、あまりお客さんが入っていないのか、小さい劇場で上映回数も少なめ。今日も、私を含めて5人ぐらいしか観客がいなかった様子でしたが、いやいや、なかなか味わい深い作品だと思いました。

 というわけで、2010年に映画館で観た映画をあらためて数えてみたところ全27本。これでも、月に2回以上観ている計算になります。自分のペースでは、これが限界でしょうね。
 来年はどうなることやら。







2010年12月23日木曜日

『TRON LEGACY』

★★★☆☆

 久しぶりに見た、ガッツリハリウッドSF作品。視覚的には、乗り物、建物、コスチューム、何もかもが、これぞSFな感じのデザイン。自分が学生のころ、未来の乗り物をデザインしなさいと言われたら、こんなモノをイメージしただろうという造形で、古典的な未来(なんか逆説的 ^^;)。でもそれは、わかりやすいカッコ良さということでもあると思います。

 ただ、ストーリーは、大筋はわかったのですが、トロンの世界観で使われる用語が色々とあって、唐突にその言葉が出てくると「あれ、何のことだっけ?」と、戸惑うことがしばしばありました。

 3D作品ですが、それほど効果的ではなかったかも。

 ところで、オリジナルの『TRON』のことはリアルタイムで知っていました。ディズニーが作った本格的なCGを使った作品だというので見たいと思ったものの、結局見ませんでした。当時、ディズニーといえば手書きのフルアニメーションで、気持ち悪いくらいヌメヌメと動く印象だったので、CGという無機質な表現と結びつかず、「なぜディズニーがこんなことを?」と疑問に思ったものです。







2010年12月12日日曜日

『武士の家計簿』

★★★☆☆

 原作も同様なのですが、タイトルに“家計簿”とついている割に、ストーリー全体から見ると家計簿が重要な感じはしません。むしろ『そろばん侍』とかの方が、内容にマッチしていると思います。

 ストーリーは、貧乏だけど、一生懸命働いて、倹約して、子どもの教育に熱心な、ある下級武士一家のホームドラマ。
 割と淡々としていて、ちょっとおかしくて、ほのぼのした作品。

 主演の堺雅人は、最近いろいろな作品に引っ張りだこで「またか」という印象はあるのですが、この作品の役は彼にぴったりハマっていると思います。





2010年12月4日土曜日

『SPACE BATTLESHIP ヤマト』

★★★☆☆

 私は、オリジナルの『宇宙戦艦ヤマト』が本当に大好きだったので、特に最初のテレビシリーズから『さらば宇宙戦艦ヤマト -愛の戦士たち-』に関しては、各話のあらすじはもちろん、部分的にはセリフや芝居の間、BGMのタイミングまで覚えていたりします。そういう人間が“実写版”と称する作品を観るとどうなるかというと…、どう評価していいのか全く判断できませんでした。

 まず、とにかくオリジナルとの共通点と相違点にたくさん気づいてしまいます。
 ヤマトのサイズの設定が違うこと、ヤマトクルーの所属や性別の設定が違うこと、何人かオリジナルの声優さんが登場していること、ガミラスの正体がオリジナルと違うこと、波動砲の発射プロセスがオリジナルとほとんど同じこと、…枚挙にいとまがありません。
 作品鑑賞というより間違い探しのようで、だから評価不能なのです。

 断片的に、気がついたことをいくつか。

 全体として、あまり戦いに明け暮れている感じがしませんでした。たぶん、ガミラスの正体も、地球攻撃の目的も、基地がどこにあるかもわかっていないという設定なので、突然何の前触れもなく敵が現れて、圧倒的な強さで攻撃されて、ヤマト側は結局波動砲で決着をつけるかワープで逃げるしかパターンがなかったからだと思います。まあ、オリジナルのように、何十発くらっても沈まないのもリアリティがないのですが…。

 イスカンダルまでの航海が、あまり長く感じませんでした。作品の中では、結局行って帰ってくるまでにどれだけの時間がかかったのか明らかにされませんでしたから、本当に短期間だったと言われればそれまでなのですが。地球出発前と地球近辺に戻ってきてからのエピソードもあるのでやむを得ないとは思うものの、意外とあっさりした旅でした。オリジナルの映画版もこんなもんだったかなあ…?

 地球との交信可能距離を越える前に、全乗組員に個人的な通信を許可するエピソードは、私の記憶が合っていれば、オリジナルTV版全26話の中で2話しかない、ガミラスとの接触が全くない回だったはずです(ちなみに、もう1話は、イスカンダル滞在中)。子供のころ、この回もそれなりに面白く見たのですが、戦艦の物語で戦闘の要素がないというのは不思議な感じがしました。今思うと、人間ドラマとして重要な回だったのだと思います。実写版にこのエピソードを盛りこんであるのは「やるじゃん」という感じ。ただ、あそこまでするなら、沖田と古代が地球に別れを告げるシーンもあってよかったかも。

 相原役のマイコさんは、意外とよかったですね。オリジナルの相原は通信士で男性。彼が重要な役割をするエピソードがいくつかあるものの、基本的には地味な脇役。実写版で設定を女性に変えても、存在感は地味なままなんだろうと思っていました。実写版の相原は、役割としてはオリジナルの太田と森雪を合わせたような感じ。戦闘が始まるときは、まず最初に彼女が敵を発見するので、ストーリー展開にあまり影響はしないものの、意外とセリフも多いし存在感もありました。

 エンドロールを見ていたら「原作 西崎義展」とありました。今回の映画が公開される少し前に西崎氏は亡くなっているのですが、オフィシャルWebサイトでも(テレビで見る限り)舞台挨拶でも、特にこれについてのコメントはないようですね。そして、松本零士氏にいたっては、一文字も見当たりませんでした。やはりヤマトの原作者について触れるのは、タブーということなのでしょうか。