2012年8月26日日曜日

『アベンジャーズ』

★★★☆☆

当初はそれほど興味がなかったのですが、世界的に大ヒットしているという話を聞いて、観てみることにしました。

結果は、まあ普通。宇宙からの侵略を阻止するという基本的なストーリーはよくあるものだし、SF的設定も特別ユニークということはないし、CGの出来栄えもいまどき驚くようなものではありませんでした。

たぶんこの作品を思い切り楽しむには、登場するそれぞれのヒーローに親しんでいるという下準備が必要なのでしょう。私の場合、とりあえず知っているのはアイアンマン、ハルク、キャプテン・アメリカの3人だけですが、それぞれが主役の作品は一つも観たことがありません。そんな私にとっては「おお、このメンバーが同じ画面に登場してるよ!すげー」といった感慨もないわけです。

最初なかなかヒーロー同士がチームとしてまとまらないという心理的な部分も描かれていて、もしこの作品に深みを与えるとしたら、この部分が唯一のチャンスだと思うのですが、バットマンシリーズの重たい悲壮感などと比べると、ちょっと子供っぽい気がします。

2012年8月18日土曜日

『桐島、部活やめるってよ』

★★★★☆

この作品の存在を初めて知ったのは、映画館でチラシを手に取った時。なんともB級の匂いがプンプンしたのですが、やっぱりこのタイトルは印象に残りました。で、どうも前評判が割といいらしいので、観てみることにしました。

よかったですねえ。言ってしまえば高校生たちの学園モノ。でも恋愛モノとも言えないし、スポーツモノでもないし、熱血教師モノでもなく、いじめや暴力も出てきません。下手をすると、テレビドラマの1話分ほどの事件も起こりません。
ただ単に、桐島くんが部活をやめるという出来事が周りの生徒たちにどんな影響を与えたかを描いただけの作品です。誰が主役ということもないし、明確な結論は出てきません。

でも、それまでの彼らがどんな人物像でどんな人間関係だったか、桐島くんがどんな人で、"桐島事件"が彼らにとってどんな意味があったのか、それをきっかけにそれぞれがどう変わり、人間関係がどう変わったのかが、「そうそう、そういうことってあるよね」という共感とともによく伝わってきます。

手法的には、シーンを時系列とは逆の順序で見せたり、同じシーンを別の観点から何回も見せたりという、私の大好物が使われていています。これによって、「ああ、そういうことだったの!」という納得感も増すし、女子生徒が接する相手によって顔を使い分ける様も表現しています。

群像劇なので登場人物は多く、何となく神木隆之介くん演じる前田が主人公っぽいのですが、最後は何かを決意したっぽい菊池のカットで終わるので、私としては彼の方が物語全体の主軸だったような印象です。

キャストは、有名な人から私は全然知らない人まで様々。でもみんないい演技しています。オタクはオタクらしく、熱血スポーツマンは熱血スポーツマンらしく、優等生は優等生らしく、そしてダルダルの無気力系は無気力系らしく…。

自分よりある程度下の世代と話していて「あれ?」と思うことの一つに、知らないクラスメートがいる、ということがあります。
もちろん、全員と同じレベルで仲がいいということはあり得ないとして、一般的なプロフィール、例えば名前とか何部だとか、誰と仲がいいとか成績がいいとか授業でどんな発言をしたとか、そういう情報は同じクラスにいれば嫌でもわかると思います。
私の場合、卒業して何十年も経って、今でも全員のことを覚えているかと言われれば自信がない、というより明らかに忘れていますが、少なくとも在校中、クラスメートに対して「誰、あの人?」という見方をしたことはありません。
この作品も、知らないクラスメートがいることありきで描かれていて、だからこそこういう作品になっているのですが、何かちょっと違和感を覚えなくもありません。

2012年8月11日土曜日

『トータル・リコール』

★★★★☆

一応ストーリーの起承転結もしっかりしているし、アクションもガッツリ見せてくれますが、個人的には作品の世界観を決定づける様々な設定やディテールの描写がかなりツボでした。『ブレードランナー』や『JM』、『攻殻機動隊』などと通じるものがありますね。

地球の裏側まで掘ったトンネル内を移動する交通手段"フォール"が、地球の核を通過する際、重力の方向が反転する描写とか、手のひらの中に埋め込まれた携帯電話とか、記憶を売り買いするビジネスとか、低所得者層の住む街並みのインチキアジアなテイストとか…。

われながら、こういう路線の作品が好きなんだなあと再確認してしまった作品。

『おおかみこどもの雨と雪』

★★★★☆

とてもよかったと思います。
『時をかける少女』『サマーウォーズ』の細田守監督作品ですが、彼はちょっとだけSFちっくな設定を取り入れた日常を描くのが好きなんでしょうかね。この作品は原作の映画化ではなく監督自身のオリジナルのようですが、そういう意味では前2作品と合い通じるものがある気がします。

ストーリーは、おおかみ男との間に二人の子供をもうけた女性の子育て奮闘記という感じです。
子供たちの特異体質(?)を世間にさらすことなく暮らすために無茶をしつつ、でも明るく前向きに生きていく姿はすがすがしいです。そして、全く違う生き方を選んだ二人の子供を、戸惑いながらも両方認めていく姿勢は親として立派。

こういう物語であれば、おおかみ男といった設定を用いなくても充分ありうると思いますが、適度にファンタジックで適度にリアルで、重すぎないけど考えさせられるところもある、絶妙なバランスになっていると感じました。

冒頭のCGで描かれた花が揺れるシーンは、一瞬「実写?」と思うような美しい絵でした。水の描写もCGを使っていたように思います。アニメーション技術的にも、色々とチャレンジしている様子。

声優陣もなかなかよかったと思いますが、宮﨑あおい、大沢たかお、菅原文太あたりは、声を聞いた瞬間本人の顔が思い浮かんでしまいました。