2014年5月25日日曜日

『ノア 約束の舟』

★★★☆☆

一応キリスト教系の中学高校に通っていたので、新約聖書の方はちょっとだけ学校で読む機会がありましたが、旧約聖書の方はごく一般的な知識しかありません。
映画の中で、アダムとイブからノアの時代までの流れを簡単に説明してくれるので助かりました。

そんな私なので、あまり先入観にとらわれず、単純に映画作品として観ることができた気がします。で、結局この作品は『ロード・オブ・ザ・リング』のような架空世界のファンタジーだと理解しました。神の啓示とか予言とか、若干スピリチュアルな要素が入っていますが、"番人(ウォッチャー)"という岩石人間みたいな生き物が出てきたり、人間の文明レベルや生活スタイルは、実際の人類の歴史に照らすといつの時代なんだかもよくわからないのも、ファンタジー作品っぽいと思いました。

ノアの方舟は、人間は洪水で絶滅させて、動物のみを救うためのものなので、当然ながら大量の人が死にます。ノアはその使命を全うしようとするので、人間に対してとても冷たくて残酷。でも、自分の親族に対してはどうしても甘くなり、ノア自身はそれに苦悩します。この苦しみがこの作品の大きなテーマだと思いますが、ひねくれた見方をすれば、ノアはとてもひどい奴です(^^;)。

この作品は公開前のスペシャル上映会で観たので、ノアを演じたラッセル・クロウの舞台挨拶がありました。彼自身も「この作品を観て、僕をひどい奴だと思わないでね」と言っていました(^^;)。




公式サイトは、こちら。
http://www.noah-movie.jp

2014年5月20日火曜日

美味しんぼ問題について思うこと

ニュースで盛んに採り上げられている『美味しんぼ』。読んでもいない私がとやかくいうことではないと思うのですが、いくつか思うことがあります。


ニュースなどを見ると、作品が風評被害を与えているという論調が多く、それは鼻血と原発事故の因果関係がないにもかかわらず、あたかもあるかのように表現しているから、ということのようです。つまり、争点は鼻血と原発事故の因果関係についての真偽。作品を批判している人たちにとっての真実は、"因果関係なし"で結論づけられているということでしょう。だから彼らは作品に対して、「"因果関係あり"と言うなら根拠を示せ」と主張します。

ただ、作品で描かれている"真偽"には別の見方もできると思います。それは、鼻血と原発事故の因果関係があるなしに関わらず、あるのではないかと疑っている人達がいるという真偽。作者自身の意図はわかりませんが、作品は、疑っている人達がいるという真実を訴えているように思います。
この見方をすると話がひっくり返って、「"因果関係なし"というけど、本当にその結論でいいの?すべての人を納得させられるだけの根拠は示せているの?」という、作品から批判者への問いかけという構図に見えてきます。


そもそも鼻血などの諸症状と原発事故の放射線漏れとの因果関係というのは、どうやって証明するものなのでしょう?
おそらく、まず最初に"症状と放射線漏れに因果関係あるとすればこんな事象が発生するはず"という仮設を立ててそれを検証することになるはず。その事象がはっきりと確認されれば"因果関係あり"または"因果関係ありの可能性が高い"という結論となり、事象が確認されなければ"因果関係ありとは言えない"という結論となるのではないかと思います。

この"因果関係ありとはいえない"というのは"因果関係なし"と証明されたということとは意味が違います。というのは、別の調査方法では確認できる可能性があるわけですし、因果関係があった場合に起こりうる別の事象は起こっているかもしれないのです。
つまり、"因果関係なし"を証明することは"因果関係あり"を証明することよりはるかに難しいのではないかと想像できます。因果関係があった場合に起こりうる全ての事象について、確実な調査で検証しないと"因果関係なし"とは断定できないわけですから。放射線の影響は時間が経ってから現れるという話もあるようなので、なおさら証明は難しそうです。


さらに話を難しくするのは、私も含めて多くの人はけっこう適当にものごとを信じたり疑ったりします。
星座や血液型の占いや風水、パワーストーンなど、科学的には根拠がない(まさに"因果関係ありとはいえない")ものを信じている人はけっこうたくさんいますし、政府が発表した内容はとりあえず「ヤツらは何か隠しているんじゃないか?」と疑う人たちもいます。
こういう感覚の人が福島で鼻血を体験すれば「被ばくだ」「福島には住まない方がいい」という発言をする可能性は大いにあり、それを聞いた人が、それが根拠のない断定だと思わずに「福島の人が言ってるんだから間違いない」と信じこんでしまう可能性もまた大いにありうると思います。


結局、福島内外に放射線の影響が出ているのではないかと疑っている人がいるのはすでに明らかなことですし、政治家が"福島は安全"路線を方針としていることもこれまで通りですし、科学的に因果関係なしを証明するのが難しいことも充分想像できるので、今回の騒動は私にとって特に新しい何かがあるわけではありません。
そうなると、最後に残るのは"表現の自由"なので、まあ嬉しくない人はたくさんいるでしょうけど、作品を描くこと自体は別に構わないのではないかと思います。

表現はアンダー・コントロールしないでね。

2014年5月17日土曜日

『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』

★★★★☆

『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』などの矢口史靖監督作品。

なかなかよかったと思います。
矢口監督らしい、いい感じのゆるい作品。ノリとしては他の矢口作品と同じようなものだと思いますが、この作品は割と好きな方かも。山村の風景やそびえ立つ木々などの風景の撮り方とかが好みだったからかな。

キャラクターの演出がマンガのようにわかりやすいです。染谷将太演じる都会のお調子者でやる気がない若者も、伊藤英明演じる怒りっぽい林業従事者も、長澤まさみ演じる気の強い女の子も絵に描いたよう。
そして、村の人達はみんな声がでかい(^^;)。
でも、そんな中、若者は微妙にたくましくなり、林業従事者は微妙に若者を信頼するようになり、女の子は微妙に若者に心を許していくという変化もちゃんと伝わってきました。

公式サイトは、こちら。
http://www.woodjob.jp

2014年5月10日土曜日

『テルマエ・ロマエ II』

★★★☆☆

ひとことで言うと、「完璧なパート2」でしょうか。

もともとこの作品は、古代ローマ人のテルマエ(公衆浴場)設計者のルシウスが現代日本にタイムスリップして、お風呂の新しいアイデアを入手しては元の時代に戻ってそのアイデアを盛り込んだテルマエを設計するという比較的短いエピソードの積み重ねで構成されています。

一応パート1から少し経って古代ローマの国の情勢も変化しているのですが、それは付け足しだと見れば、前作と全く変わらず日本のお風呂のアイデアを入手するエピソードが次々と続きます。絵としての見せ方も、演出の路線も特に変更はなし。最後に上戸彩演じる真実や何人かの日本人が古代ローマにタイムスリップして活躍するというパターンも一緒。

上戸彩演じる女の子とルシウスがお互いのことをすでに知っていて、ラテン語でコミュニケーションが取れるところと、元の時代に戻る方法がすでにわかっているところがちょっとだけ違うかな。
それ以外は、どのエピソードがパート1に入っていてもパート2に入っていても違和感はないでしょう。

原作の漫画は1巻しか読んだことがないので、2巻以降にどんなエピソードが入っているのか知りませんが、日本のお風呂がエピソードに事欠かないことには、あらためてびっくりしました。

そういう意味では、安心して観ていられますし、期待通り。逆に言えば、期待を上回るところは特にないかな。分析的に見るとパート2の方が色々とスケールアップしているのでしょうが、印象としてはパート1の衝撃の方が強かった気がします。

星は3つにしましたが、全体的に緩い映画なので、ひどく感動したり、大いにドキドキしたりして星5つつけるより、この作品にはふさわしい点数と理解していただけるといいかと思います。


公式サイトは、こちら。
http://thermae-romae.jp