2013年12月31日火曜日

『永遠の0』

★★★★☆

現代に生きる孫が戦死した祖父の足跡を追うというのが『男たちの大和』を思い起こさせました。テーマ曲も、長渕剛 v.s. サザンオールスターズ。製作陣には、対抗意識はあったのでしょうか??

本作は、孫が祖父の実像に迫る謎解きミステリーのような作りになっていて、だんだん核心に迫っていく感じもよかったと思います。

『ALWAYS 三丁目の夕日』の山崎貴監督なので、人間ドラマだけどCGはとても凝っていて、それも見応えがありました。

この映画のメッセージはシンプルで「命を大切にしなさい」ということですね。それを、戦時中の特攻という異常な死に方の不条理や恐怖や痛みをリアルに感じてもらうことで観客に伝えようとしているのだと思います。

そういう意味では、現代の若者が戦争体験者に当時のことを聞いて回るという極めてストレートな演出。CGを駆使して描かれたリアルな戦闘シーンも、狙いに合致していたと思います。

戦争がないのはいいことですが、今の「平和」が、先の戦争の強烈な反省から成り立っているのは明らかで、だとすれば何とかして戦争を今に伝えることは必要なはず。神風精神論とは対極にあるCGのようなデジタル技術が、それに一役買っているのが、なかなか興味深いところです。

公式サイトは、こちら。
http://www.eienno-zero.jp/index.html


2013年に見た映画は全部で47本。うち、iTunesStoreでのレンタルは2本、試写会で見たものが2本でした。
星5つつけたのは、つい最近に見た『ゼロ・グラビティ』のみ。でも星4つつけた作品は結構たくさんあったはず。
『ラ・ワン』『きっと、うまくいく』『マッキー』と、インド映画が3本も含まれていたのは、面白いところかも。本当はもう1本『スタンリーのお弁当箱』という作品が気になっていたのですが観に行けませんでした。でもiTuneseStoreにあることはチェック済みなので、いつかレンタルすると思います。

2013年12月23日月曜日

『キャプテン・フィリップス』

★★★★☆

アフリカのソマリア沖で海賊に襲われたアメリカの貨物船の、実話を元にした作品。

ほぼ最初から最後まで緊張が緩むことがなく、この手の映画としては素晴らしいと思います。たまたま『アルゴ』とか『ゼロ・グラビティ』とか、割と近いジャンルの最上級の作品の印象が残っているので、差をつけるために星4つにしましたが…。

危機を扱った映画では、まず危機を"作り出す"必要があるわけですが、そこが安直なもの(例えば、明らかに主人公の行動が軽率とか)がよく見受けられます。
でもこの作品では、武器を携帯しない民間の海運業者として、海賊対策は怠りなく、自分たちとしてやれる準備は全てやっており、それでも海賊の襲撃を防げなかったところに、リアルな恐ろしさを感じます。

また、実際海賊に襲われた後も、登場人物がスーパーマン的な大活躍で敵を倒すわけではありません。できることは特別なことではないし、失敗もしますが、冷静に、粘り強く、助かる道を探ります。
この、普通の人は普通の人のレベルを超えないで目一杯頑張っている姿が、共感と感動につながっていると思います。

トム・ハンクスの演技は素晴らしいです。普通のレベルを超えない頑張り、普通のレベルを超えないカッコよさが見事。救出された後の、一気に力が抜けてしまう演技は、ちょっとオーバーな気もしますが「よく頑張ったね」と讃えたくなりました。

ソマリア人の海賊の描き方については、どのくらいリアリティがあるか、若干疑っています。若干アメリカ人の思い込みが入っているような気がしなくもないです。
映画としても、彼らが海賊行為を行うに至った背景とか、海賊組織の内情とかを描くのであればもっとキッチリ描けばいいし、そこは全く描かずにワケの分からない悪者として描くならそれでもいいと思うのですが、どっちつかずな気がしました。

結局最後は、アメリカ海軍が登場します。こういう状況での海軍の頼もしいことと言ったらありません。ONE PIECE好きには申し訳ないけど、やっぱり海賊より海軍でしょ、と思ってしまいました。

公式サイトは、こちら。
http://www.captainphillips.jp

2013年12月22日日曜日

『フード・インク』

★★★☆☆

iTunesStoreでレンタルして観ました。

食料生産の問題を採り上げたドキュメンタリー。

今や、農産物や畜産物も工場で大量生産されて、その安全性も疑わしい状況。でも、そのような食品の方がオーガニック食品よりずっと安く、経済的理由でそちらを買わざるをえない人がいるという、アメリカの食料事情に迫った作品。

興味深いと思いましたが、自分としては薄々感じていたことなので、大きなショックを受けたわけでもなく、突然目からうろこが落ちたわけでもなく、ああやっぱり…という感じでした。

自分の、食の安全に対する意識は結構大雑把。そりゃあ絶対安全だと思えるものだけを選択できればそれに越したことはないけど、もしそれを本当にやろうとしたら大変な緊張感を持って食品や食材を見極めていかなければならず、そこに多大なエネルギーをつぎ込む気はありません。

こういった議論でよく敵視される合成保存料、遺伝子組み換え商品などでも、実際には全く安全なものもあるはずなのに、あたかもこれらが毒であるかのように見るのはある種の宗教のようでむしろ怖いと思います。
それに本当に食料不足になった場合、Aランクの安全性を持った食品を食べれば本来の寿命まで生きられる、Bランクの安全性を持った食品を食べれば寿命が10年縮まる、何も食べなければ後1年で死ぬとしたら、Bランクの食品を大量に安定的に生産できることは決して悪いことではないでしょう。

ともかく『フード・インク』で取り上げられているような実態を知ることができたのはよかったと思います

公式サイトは、こちら。
http://www.cinemacafe.net/official/foodinc/


『皇帝と公爵』

★★★☆☆

試写会に当たったので、観てきました。

星3つにしましたが、正直眠くて眠くて、1/3ぐらいは意識朦朧としていたので、正当な評価ではないかも。

この作品は、ナポレオン率いるフランス軍のポルトガル侵攻を、イギリス・ポルトガル連合軍のウェリントン将軍が食い止める、ブサコの戦いを描いたもの。といっても、世界史が苦手な私には予備知識ゼロでした。まあ、ヨーロッパ版大河ドラマだと思えば話が早いと思います。

映画では、もちろん戦闘や戦術にも触れていますが、主に名も無き兵士や戦争に巻き込まれた民間人にフォーカスが当たっています。フランス・ポルトガル合作映画ですが、私のイメージするフランス映画的なネットリ感、ドロドロ感がある人間の描き方でした。

群像劇で登場人物が多く、それぞれのエピソードが断片的につなぎ合わされているような構成です。覚醒度が低かった私には、フランス勢、イギリス勢、ポルトガル勢の区別もつかなくなり、同一人物を特定できなくなってしまいました。その結果、作品全体の大きなうねりが捉えられなくなり、ショートムービーのオムニバスを観るような感覚でした。

試写会の会場が、一般的な市民ホールみたいなところで、照明を全部落としても真っ暗になりませんでした。映像自体はさほど見づらくなかったけど、客席の様子が見えてしまうので、途中でトイレに立つ人とかが気になってしまいました。
なぜか最初に中尾彬さんが登場して、司会の映画コメンテーターの方とトークショーがありました。あれ、必要だったかなあ(^^;)。そのため終了時間が22:00ぐらいになり、途中で退席する人がチラホラ、エンドロールが流れ始めた途端どっとみんな立ち上がる始末。
居眠りしていた自分が言うことではないけど、映画を鑑賞する環境としては、いいとは言えなかったかな。

公式サイトは、こちら。
http://www.alcine-terran.com/koutei/

2013年12月16日月曜日

『ゼロ・グラビティ』

★★★★★

かなり早い段階から、観ようと決めていた作品。
字幕の3Dをレイトショーで観ようと近隣の映画館を調べてみると、一番近いシネマイクスピアリは、3D上映のレイトショーはなし。ワーナー・マイカル・シネマズ市川妙典は、レイトショーはあるけど吹替版のみ。109シネマズ木場は、レイトショーはあるけど、レイトショー割引の対象外。その代わりIMAX 3Dが観られます。
結局のところ、どうしても3D字幕版にしたいなら、シネマイクスピアリか109シネマズ木場で割引なしで観るしかありませんでした。…で、どうしても3D字幕版にしたかったので、IMAX 3Dの木場を選択。

実はこの映画、上映時間が91分と短め。それを3Dで割引なしで観たので、普段レイトショーばかり観ている私にとっては単位時間あたりの金額は相当な割高です。
でも、充分元は取れました。大満足。私の中での今年最高の映画は、たぶんこれで決まり。

宇宙での事故を扱った映画といえば実話を元にした『アポロ13』があるので、言ってしまえば『ゼロ・グラビティ』はそのフィクション版のような感じ。
ただ、登場人物がずっと宇宙船の中にいる『アポロ13』と比べて、宇宙船外での漂流の方がはるかに恐怖感も孤独感も絶望感も強いですね。

そう感じたのは、やっぱりこの作品の映像が徹底的に作りこまれているからでしょう。重力がない=体が浮く、だと思っていたのは間違い。空気抵抗と重力のない宇宙空間で起こる運動力学の基本「動いているものは力を加えない限り動き続ける」が、いかに恐ろしいかがよくわかります。主人公がクルクル回り始めると、本当にひたすら回り続けます。それを、カットを割らずに、俯瞰視点から一人称視点に変化させたりとカメラが動きます。正直、酔いそうでした。

通信相手の声を除けば、登場人物が2名だけというのもなかなか大胆ですが、それだけに感情移入しやすく、自分が宇宙漂流者になった気分になれました。

公式サイトは、こちら。
http://wwws.warnerbros.co.jp/gravity/

2013年12月9日月曜日

『かぐや姫の物語』

★★★☆☆

何がよかったのかよくわからないのですが、何だかよかったなあ。

最初、かぐや姫を2時間のストーリーにするのってすごく大変そうだと思ったのですが、特に無理矢理な感じもなく時間が過ぎていきました。その中に盛り込まれているエビソードは、私が知っているかぐや姫の話から大きく外れることなく、丁寧に誠実に描かれている印象。
あれは、古典の竹取物語に忠実なストーリーなのでしょうか。

絵は、鉛筆の線画に水彩絵の具で着色した質感ですが、もちろん鉄拳のパラパラアニメとは次元が違います(^^;)。たぶんデジタル技術を駆使して手描きのぬくもりを醸し出しているのでしょうから、実はとても凝った、高度な技術が使われていると思います。

ただ、手描きの風合いとはいっても、キャラクターの顔の描き方とかがやや定まっていないように思えたのは、個人的には気になってしまいました。わざとやっているのだとは思うのですが、服装や髪型に特徴がなければ同一人物だとわからないかと思うほどだったので…。

定まらないといえば、かぐや姫のの言動がかなり大きく変動するのが印象的でした。ものすごくおしとやかだったり、やんちゃだったり、落ち込んだり、激したり…。これについては彼女の内側に抱えているものからくるという必然性を感じました。とはいえ、子供のころから知っているかぐや姫のイメージとは全然違って面食らいました。

最新のビジュアル表現技術を使った現代の古典文学。大人向けのお伽話。そんな感じのエンターテインメントでした。

 公式サイトは、こちら。
http://kaguyahime-monogatari.jp