2014年9月27日土曜日

『イン・ザ・ヒーロー』

★★★☆☆

自分の世代だと、スーツアクターと聞いてイメージするのは、やはりウルトラマン、仮面ライダーシリーズということになります。
最初の仮面ライダーでは、本郷猛役の藤岡弘、さんが自ら仮面ライダーのスーツを着ていたとか、初代ウルトラマンの中に入っていたのが、ウルトラセブンでウルトラ警備隊のアマギ隊員を演じた古谷敏さんだとか、そういったエピソードを聞くと、なんとも言えない感慨を覚えます。
もちろん、子供向けヒーロー番組における裏方は他にも色々いるでしょうが、子どもたちからの羨望の眼差しを一身に受けながら、本人は全く認知されないというジレンマが最も大きいのは、やはりスーツアクターでしょう。
特に、初期のウルトラマン、仮面ライダーの頃はスーツアクターという職業自体が世間には知られていないし地位も確立されていないので、その役割を渋々引き受けたり、肉体的にも過酷で辞めようと思ったり、でも子どもたちの本気の声援が支えになったりと、本当にドラマティックでエピソードに事欠かなかったようです。

そういうことで、この作品は、スーツアクターをテーマに取り上げた時点でおおよそどんなストーリーなのか想像できましたし、実際想像の範囲内でした。それでも自分にとっては、こういう人たちがいてくれたおかげで子供のころのウルトラマンや仮面ライダーの思い出ができたんだと思うと、ちょっと嬉しかったりします。

最後のクライマックスは、ハリウッドの忍者映画でのチャンバラシーンでしたが、個人的にはやっぱり怪獣やヒーローの中に入った方がよかった気がします。

公式サイトは、こちら。
http://in-the-hero.com

2014年9月24日水曜日

『猿の惑星 新世紀(ライジング)』

★★★★☆

類人猿好きの私としてはとても満足度が高い作品ですが(^^;)、それを差し引いても楽しめると思います。

こういう動物モノの作品で私があまり好きではない演出に、様々なしぐさが人間的過ぎるというものがあります。充分にキャラクター化されている場合はいいと思うのですが、せっかくリアルなCGで作られた恐竜がハグをしたり肩を落としてトボトボ歩いたりすると、もちろん見ている側としてはわかりやすいのですが、なんかちょっと違和感を覚えてしまいます。

この作品の猿たちも、そういうところはあるのですが、何しろ人間に拮抗するほど知能の発達した猿なので、普段感じる違和感は割と少なめでした。

前作は断片的にしか覚えていないのですが、人間側の登場人物で前作から引き続き出てくる人はいないようですね。死んじゃったんだっけかな??

本作では、まだ色々な点で猿より人間の方が優っている状況ですが、徳の高い猿のリーダーであるシーザーがいて、密かにリーダーの座を奪おうと狙っているずる賢い猿もいて、愚かな人間もいて、これって人間同士のグループ間の対立と変わりないなあと思いながら観ていました。そういう意味では、ずいぶん考えさせられる映画ですね。

前作では、知能の高い猿の誕生と、人類滅亡の始まりを描き、今作では、猿と人間が拮抗する状態となり争いが本格化。次回作があるとすれば(この流れならきっとあるでしょう)、人類が滅ぼされて猿が地球を支配するところが描かれて、最初の『猿の惑星』へとつながるはず。そう考えると何とも悲観的な作品ですね。

公式サイトは、こちら。
http://www.foxmovies-jp.com/saruwaku-r/

2014年9月20日土曜日

『舞妓はレディ』

★★★★☆

周防監督らしい、色々なところに少し緩さを感じつつ、ホンワカできる映画でした。

やっぱりこの作品は、主演の上白石萌音さんの魅力と、京都の花街の風習がかいま見える面白さに尽きるかなあ。

上白石さんは、ちょっと垢抜けてない雰囲気があって、ベビーフェイスなんだか老け顔なんだかよくわからない風貌で、でもなんだか愛嬌があって、不思議な存在感です。雰囲気に合った役で朝の連続テレビ小説とかに出たら、一気に国民的女優になりそう。

タイミング的に、『アナと雪の女王』にあやかったわけではないと思いますが、なぜかミュージカル仕立てのこの作品。上白石さんの歌声は、他のどの役者さんよりよかったと思います。力強く声が出ているし素直でまっすぐ歌っていて好感が持てます。フレーズの最後はビブラートがかかるかかからないか微妙な感じ。たぶん今後トレーニングを積めばもっと色々なボーカルテクニックが使えるようになるのでしょうが、なんだかこの人にはノンビブラートでいって欲しい気がしました。

作品の中には、舞妓や芸姑の風習や着物の着付け、正座の仕方などが登場して興味深いですが、私が一番気になったのは、髪を結い上げるシーン。ああいう職人の作業を見るのは大好きです。最初から最後まで見ていたいくらいです。

この作品が海外の映画祭で上映されたのはテレビで見て知っています。作中、舞妓や芸姑の踊りから連続的にミュージカルシーンにつながっているところが結構ありました。いかにも日本舞踊的な動きから徐々に腰を振ったりターンしたりといういかにも西洋的なダンスに変わっていくのですが、ああいうのを外国人が見たとき、本来の舞妓や芸姑の踊りと演出としてのダンスの境界線を正しく認識できるのでしょうかね。
京都観光に来た外国人が「『舞妓はレディ』のようなダンスショーは見せてくれないのか」などと言い出しそうでちょっと心配(^^;)。

公式サイトは、こちら。
http://www.maiko-lady.jp

『るろうに剣心 伝説の最期編』

★★★★☆

映画の3作品全体を通して、新しいスタイルのチャンバラ映画として、とてもよかったと思います。

志々雄はちょっと妖怪じみていて、個人的にはやり過ぎな気がしました。人間を超越した特殊能力を出しちゃうと、仮面ライダーとかスーパーマンとか、ちょっと別の路線になってしまうので、原作でも、志々雄はああいう人なんだろうか。

福山雅治演じる師匠はよかったと思いますが、もう少しおじいちゃんっぽい役者さんの方が私のイメージには合うかなあ。剣心が子供のころに出会ったことになっているけど、いったい何歳の設定?
あの師匠の強さを見てしまうと、師匠が直接志々雄と戦ったらあっさり勝つんじゃないかと思ってしまいます。すっかり世捨て人生活を満喫している様子だから「新しい世は若いもんの力で作っていけばいいんじゃ」という考えなのかな。

一旦負けて、師匠のところで修行して強くなったらまた対戦というのは、ドラゴンボールと同じパターン?その度に新しい奥義を会得するようだと、やっぱりこの作品は超人ヒーローものなのかなあ。何しろ原作を知らないのでよくわかりません。
史実とは違うとはいえ、江戸時代から明治への国家大転換期の騒乱を描いているので、自分としては超人や妖怪を持ち出すのはちょっと…。せいぜい剣の達人にとどめてほしいと思います。

京都大火編とは二部作の扱いですが、1本にまとめるのは難しかったのでしょうか。伝説の最期編が、色々なことにきっちりと決着がついて物語としての終息感があるのに対して、京都大火編は、投げたボールが宙に浮いた状態で終わった感じで、物語的にはかなり物足りない印象でした(アクションはそれなりに楽しめるのですが)。これで同じチケット代なのかなあ、とちらっと思ってしまいました。

公式サイトは、こちら。
http://wwws.warnerbros.co.jp/rurouni-kenshin/index.html?oro=mile

2014年9月15日月曜日

『フライト・ゲーム』

★★★☆☆

派手さはありませんが、ずっと緊張感が続く感じが、サスペンス映画としてなかなかよかったと思います。

飛行機の機内のシーンが95%、空港のシーンが3%、それ以外が2%といった感じで、とにかくほとんどずっと飛行中の機内で物語が進行していきます。でも、次々に色々なことが起こるし、乗客の誰も彼もが怪しく見えるし、飽きることはありませんでした。

ちょっと前のテレビで、映画を観ていた人のほとんどが犯人を当てられなかったと宣伝していましたが、これは正統派の犯人探しミステリーではないと思います。
だってねえ、ちゃんとした犯人探し作品の場合、注意深く見ていればその人が犯人だとわかるヒントを散りばめておくものじゃないですか。この作品には、そういう伏線がないので、これで犯人を当てろという方がおかしいと思います。

それに、犯人側の立場に立ったとき、こんなにリスキーな犯罪計画はありません。逃げ場のない飛行機の中で予告殺人なんて、成功率低すぎでしょう。

そんなわけで、リアリティという観点ではツッコミどころはありますが、そこはあまり気にせず"もしもこういう状況になったら…"という部分を楽しむサスペンスとして、ハラハラドキドキできると思います。

ところで、この作品の原題は『NON-STOP』。邦題をあえて原題と変えるのは、言葉として難しすぎたり、ニュアンスが伝わりにくかったりという理由が多いと思うのですが、このタイトルを変える必要はなかった気もしますが…。


公式サイトは、こちら。
http://flight-game.gaga.ne.jp