2020年1月4日土曜日

『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』

★★★★☆

『この世界の片隅に』からずいぶん時間が経っており、テレビで放映されたときに録画はしたもののきちんと見返していないので、どこがどう違うのか、どのシーンが追加されたのか、あまりちゃんとわかりませんでした。

白木リンさんとのエピソードなどが追加されたのだと思いますが、TVドラマ版では登場していたので、既視感がありました。
リンさんが登場すると、すずさんの嫉妬心が描かれることになり、彼女がただ単にボーッとした性格の女性とは違う、別の一面が感じられます。

168分というとても長い作品ですが、どんどん戦況が悪くなっていき、原爆が落とされ終戦を迎えるという流れがわかっているせいか、さほど長さは感じませんでした。

戦争を、完全に庶民の目から描いていること、戦時中の生活を丁寧に細かく描写していることは、やはり新鮮ですし素晴らしいと思います。
ついでに、あそこまで頭身を落として、人物のプロポーションを子供っぽく描かなくてもいいのではないか?と『この世界の片隅に』を観たときと同じ疑問も再び感じました。


公式サイトは、こちら。
https://ikutsumono-katasumini.jp


さて、昨年2019年に観た映画は30本でした。
一方で、星5つを付けたのが3作品ありました。星5つをつけたのは『バジュランギおじさんと、小さな迷子』のみでした。
そして、インド映画(正確な定義が難しいですが、ざっくりとインドがらみの映画)は9本で、年間を通してよく観たという自覚があります。

『ルパン三世 THE FIRST』

★★★☆☆

ルパン三世は、最初のTVシリーズと映画『〜カリオストロの城』はかなり好きですが、第2シリーズはあまり好きではありません(というか、たまに観ても面白くないので、きちんと全部観たことがありません)。

最初のテレビシリーズは、当初大人向けのハードボイルド作品として作られたのですが視聴率が振るわず監督が降板、その後宮崎駿や高畑勲が関わることでコミカルな要素が加えられました。
ただ、私の中では第1シリーズ後半のコミカルでドタバタな作風と第2シリーズのドタバタはまったく性質が異なるものです。第1シリーズは腑に落ちることが多いのですが、第2シリーズはふざけ過ぎで子供だましっぽい印象と言えばいいでしょうか。

今作の場合、私としては第2シリーズに近い雰囲気を感じましたが、その中では頑張っている方だと思いました。

ルパン三世のキャラクターのビジュアルを3DCGで表現するのはなかなか難しそうです。あの不自然なほど細い手足などをそのままのプロポーションでCG化していましたが、結局私は最後まで違和感がありました。

ボイスアクターは、レギュラー陣に加えて、広瀬すずさん、吉田鋼太郎さん、藤原竜也さんでしたが、広瀬さんと藤原さんは、本人だとはっきりわかるので、ストーリーに没入する上ではちょっと雑念を生むかも。

ところで「ルパン三世」は英語だと「Lupin the Third」なので、「ルパン三世 THE FIRST」は「Lupin the Third the First」となりますが、これって英語として成立するのでしょうか?


公式サイトは。こちら。
https://lupin-3rd-movie.com


『カツベン!』

★★★☆☆

私は、周防正行監督の大ファンというわけでも、彼の作品の特徴を熟知しているわけでもありませんが、なぜか今回の作品は、周防作品っぽくないような印象を持ちました。

作品の舞台が大正時代で、時代劇の要素が入っているからかもしれません。
また、主人公が過去に犯罪に手を染めており、昔の仲間や警察に追われているという設定が、ほのぼのとしてちょっと緩い笑いを提供する印象のある周防作品とは色合いが違うと感じたのかもしれません。

主人公が子供のころ、駄菓子屋からキャラメルを万引きしたり、映画館のトイレの窓から中に侵入してタダで映画を観るシーンがあり、ふと、こういう描写が教育上よくないとクレームを受けたりするのだろうかと思ってしまいました。特にこの作品の場合、こういった行為にきちんと罰が与えられたという展開ではなく、どちらかというと犯罪を犯しておきながらのうのうと生きている、というトーンなので。
私は、クリエイターが自由に創作し、自由に表現できることは極めて重要だと思っている方だと思うのですが、そんな自分が観客の立場として映画を観たときにコンプライアンスが頭にチラついてしまったことがちょっとショックでした。こうやって、社会が醸し出す空気が、どんどん作り手の表現を不自由なものにしていくのでしょう。残念なことです。

活動弁士という職業がかつて存在していたことは知識としては知っていましたが、それが具体的にどのようなものだったのか詳しくは知りませんでした。本作の中では、かなり細かく活動弁士の仕事の様子がわかるので、非常に面白かったです。

作中で、ベテラン活動弁士が、映画という完成された作品に弁士が説明を加えることで壊してしまうことに疑問を持つというエピソードが描かれていましたが、このあたりを軸にして活動弁士の功罪をストーリーに描けば、警察に追われるという設定がなくても充分面白い作品になったような気もします。

そういえば、上映されるサイレント映画の中に、上白石萌音さんや草刈民代さんなどがカメオ出演(?)されていました。

公式サイトは、こちら。
https://www.katsuben.jp

『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』

★★★☆☆

エピソード1〜3、7〜9はリアルタイムで映画館で観ましたが、エピソード4〜6の最初の3部作のころ自分は宇宙戦艦ヤマトに夢中だったので、決して特別なスター・ウォーズ愛がある方ではありません。それでも、40年以上におよぶシリーズの完結編ということで、それなりの感慨はありましたが、私の印象としては、結末は意外とあっさりしたものでした。

スター・ウォーズの世界は、結局いつもダークサイドとライトサイドが戦っていて、作品によってどちらが優勢かがちょっと違っており、そこからある作戦が展開されるというのがパターンのようです。
個々の作戦は断片的でシリーズ全体の大きな流れにはあまり影響しないので、あるエピソードでのある作戦と別のエピソードの作戦を入れ替えたとしても、多少調整すればストーリーが成り立ってしまう作りのように思えます。

エピソード7〜9は、シリーズを完結させることが決まっていたので、レイとレン、ルークとレイアとハン・ソロがゴールにたどり着くプロセスをストーリーの中心に据えて丁寧に描くべきだと思いますが、どちらかというと、いくつかの断片的な作戦を描くついでに彼らの運命についても触れていた、という印象でした。
レイヤ演じるキャリー・フィッシャーが亡くなったことや、監督の交代劇なども影響しているのでしょうか。

まあでもそれは、良くも悪くも私の思うスター・ウォーズシリーズらしさという気もします。
スカイウォーカー家の物語は終わりましたが、スター・ウォーズの世界を描いた作品はいくらでも作れる終わり方なのは、ガンダムシリーズと同じでしょうか。

公式サイトは、こちら。
https://starwars.disney.co.jp

2019年11月17日日曜日

『盲目のメロディ ~インド式殺人狂騒曲~』

★★★★☆

簡単に言うと、盲目のフリをしていたピアニストが、殺人事件を目撃してしまったことをきっかけに事件に巻き込まれていくという作品です。

おそらくインドの映像作品にもミステリーやサスペンスといったジャンルのものがあるとは思うのですが、これまで私が観た作品で、その手のものは思いつきません。

映画の後半は、主人公が命を狙われることになり、そこから逃げまくるのですが、敵と味方が目まぐるしく入れ替わって、非常に忙しい展開。なんだかワンクールの連ドラを観たような感覚でした。正直、映画を観終わった直後でも細かい展開を思い出せませんでした。

このストーリー展開なら、本当にシリアスな作風にすればかなり恐怖を感じさせるサスペンスになると思うのですが、役者の演技がどこかコミカル。公式サイトなどでは「ブラックコメディ」と表現しており、まあ他に言いようがないとも思いますが、なんだか不思議な空気感だと思いました。
今度は、完全にシリアスなインドのサスペンスも見てみたいかも。

『盲目のメロディ ~インド式殺人狂騒曲~』は邦題で、原題は『Andhadhun』。残念ながら、意味はわかりませんでした。

星は、3.5ぐらいが適当かもしれませんが、インドのサスペンスが新鮮だったので、ちょっとおまけして4つにしました。


公式サイトは、こちら。
http://m-melody.jp

2019年11月2日土曜日

『ロボット2.0』

★★★☆☆

私が初めて観たインド映画『ムトゥ 踊るマハラジャ』の主役にしてインドのスーパースター、ラジニカーントの出演作で、10年ぐらい前に日本でも公開された『ロボット』という作品があり、その続編が今作です。

インド本国におけるラジニカーントの立ち位置はよくわからないのですが、彼のビジュアルはどこか垢抜けないおっさんなので、勝手にコメディ俳優のように見てしまいます。『ムトゥ 踊るマハラジャ』はドラマの舞台が田舎なのでピッタリなのですが、SF作品とはあまり馴染まない印象です。

そんな中、さらに年齢を重ねたラジニカーントが出演するSF作品『ロボット』は本当に衝撃的でした。ストーリー展開はハチャメチャですが、映像は綺麗になりCGはかなり本格的。やっぱりラジニカーントがSFの世界観の中では違和感がありますが、ハチャメチャな表現の一要素だと思えばアリだと思いますし、彼が元気に頑張っている姿は愛おしくもあります。
そして、A.R.ラフマーンの音楽は『ムトゥ 踊るマハラジャ』のときからマサラ・テクノとでも言うようなユニークなものでしたが、『ロボット』では、その特徴はそのままに技術的に大幅進化した印象でした。

で、今作『ロボット2.0』ですが、傾向としては『ロボット』とまったく同じだと思います。ただそれは、逆にいえば『ロボット』を見た人にとっては、それ以上の衝撃ではないということになります。良くも悪くも、そういったパート2の壁を感じました。

最近のインド映画は多様化しており感動作品も多いので、ただ「楽しけりゃ何でもいいじゃん」的な作品がむしろ目立たない傾向にあるかもしれません。そういったインド映画を知らず、前作の『ロボット』も観ていない人にとっては衝撃的だと思うので、観てみてもいいかもしれません。

また、今作の音楽もA.R.ラフマーンが担当しているのですが、私の印象ではちょっとマサラ色が弱まった気がしました。最初は、音楽担当が別の人に変わったのかと思ってしまいました。より洗練された、グローバルな音楽になったという捉え方もあるかもしれませんが、個人的にはもっとこってりマサラ感のある音楽を期待していました。


公式サイトは、こちら。
https://robot2-0.com

2019年10月20日日曜日

『見えない目撃者』

★★★★☆

Facebookで繋がっている先輩がこの作品について投稿しており、ネットでは中々評価が高いようなので、急遽観に行きました。

内容は、かなりシリアスでハードなサスペンス。
最大のキモは、事件の目撃者が視覚障害者だということ。オリジナルは、色々と設定が違うようですが、韓国映画のようです。

視覚障害者が目撃者というアイデアは、単に作品を面白くする狙いなのか、視覚障害というものを知ってもらう意図があるのかは不明ですが、音声フィードバックを用いた視覚障害者用の文字入力ツールや、盲導犬、スマートフォンの動画チャット機能を使った遠隔地からの支援など、結果的に視覚障害者の生活の一端を見せてくれています。

吉岡里帆さんというと明るく溌剌としたキャラクターのイメージなので、本作の役はもっとピッタリくる別の女優さんがいそうな気もしますが、少なくとも作品を見ている間違和感はなかったので、頑張っていたと思います。

作中の猟奇殺人事件がかなり残虐でR15指定なのですが、もうちょっとマイルドでも作品のコアとなる面白さは表現できたような気はします。

この作品を観ようと思った理由は実はもう一つあります。もうすぐ公開されるインド映画『盲目のメロディ インド式殺人狂騒曲』を観にいくつもりなのですが、こちらは、盲目のふりをしたピアニストが殺人事件を目撃してしまうというものです。実際には目が見えているだけに設定としてはさらに複雑で、ブラックコメディということなので、作品のトーンとしては、本作とはまったく違うと思います。その違いを確かめてみたかったので、『見えない目撃者』を観ておこうと思いました。


公式サイトは、こちら。
http://www.mienaimokugekisha.jp

『ガリーボーイ』

★★★★☆

ちょっと前に観た『シークレット・スパースター』と、ストーリーの基本骨格が似ています。勝手に、同じ企画から派生した姉妹作品のようなつもりで観ていました。

両方とも、貧困層の若者が音楽で成功していくサクセスストーリーで、家族に夢など見ずに現実的に生きるべきと反対されたり、親に内緒で動画をSNSにアップして評判になったり、最終的に賞をもらうなども共通しています。作品タイトルがSNSにアップするときのハンドルネームという点まで同じです。

ただ、『シークレット・スパースター』の方は、主人公が女子中学生であるのに対して『ガリーボーイ』は男子大学生。あとは、同じ音楽といっても前者は歌い上げる感じのボーカリストで、後者はラッパー。として作品全体のトーンとして前者が明るくコミカルな演出も多いのですが、後者は暗くシリアスな印象に仕上がっています。

これだけの違いで『シークレット・スパースター』はエンターテインメント作品、『ガリーボーイ』は社会派っぽくなるから不思議です。きっと、アカデミー会員は『ガリーボーイ』の方を好むと思います。

こういう映画は、作中のラップが本当にイケてないと説得力がないと思います。残念ながら、私はラップという音楽ジャンルにほとんど馴染みがないので、この点はよくわかりませんでした。

また、ラップはやはりリリックが重要だと思うので、日本語の字幕スーパーになってしまう時点で相当不利なんだろうと想像してしまいます。本作の字幕監修としていとうせいこうさんがクレジットされており、ラップのリリックの"らしい"翻訳に協力しているようです。その出来映えも私にはわかりません。

ラップの発祥はアメリカなのでしょうか。勝手に、貧困や差別、反社会的、反体制的な思想と強く結びついているイメージがありますが、インドのスラムのイメージとまさにピッタリなので、親和性は高いのでしょう。

ちょっとビックリしたのは、主人公がスラムの仲間にそそのかされて自動車の盗難に手を染める描写です。作中では、仲間だけが警察に捕まりますが主人公が共犯であることを秘密にするので、表沙汰になることなく済むのですが、昨今の日本の風潮だと、サクセスストーリーの裏で主人公の過去の犯罪が隠蔽されるという終わり方はどうなの?と問題になりそう。インドでは、そんなに引っかかる人はいないのでしょうか。
しかもこの作品、実話に基づいているので、主人公のモデルとなった実在のラッパーがいます。なので、なおのこと複雑。


公式サイトは、こちら。
http://gullyboy.jp

2019年10月14日月曜日

『空の青さを知る人よ』

★★★★☆

『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』のスタッフのよる作品。

『あの花』は、ずいぶん後になって再放送を何となく観た程度ですが、『ここさけ』は映画館で観てよかったので、『空青(?)』も観てみることにしました。

結果的には、とてもよかったと思います。
お約束のように日常生活を丁寧に描く中、非現実的な超常現象の設定がちょっとだけ入っています。個人的には、こういう設定は好みではありませんが、だからと言って作品全体を否定してしまうのはもったいないと思います。

主人公のあおいは高校生で、自己表現が下手で素直じゃなくて、勝手に決めつけて突っ走るタイプで、ある意味いかにもなキャラクター。世界観は全然違いますが、若さのそういった側面を描いているという点では新海誠監督の『天気の子』と共通している気がします。
私の中では『空青』の方がすんなり受け入れられる気がします。でもたぶんセールス的には『天気の子』にはかなわないのでしょうね。何がどうウケるかは、本当にわからないものです。

『天気の子』と言えば、精密でリアルでキラキラした背景が印象的ですが、本作の背景も相当頑張っていたと思います。一瞬写真かと思うほどリアルに描きこまれたものもあり、もしかしてちょっと新海誠作品を意識しているのではないかと勘ぐってしまいました。でも不思議なもので、同じリアルでも新海作品のリアルとはどこか違う印象でした。やはり絵には個性が出るものですね。

声の演技は、松平健さんはわかりましたが、吉沢亮さん、吉岡里帆さんはエンディングを見るまでわかりませんでした。吉岡さんがあおい役ではなく、そのお姉さんのあかね役なのも意外。もしかして、役の順位的にはあかねの方が上なのでしょうか。
あかねの声はほんわか、おっとりした印象で、声優さんだとばかり思っていました。


公式サイトは、こちら。
https://soraaoproject.jp

2019年10月5日土曜日

『ジョーカー』

★★★★☆

残念ながら映画館では観ませんでしたが、クリストファー・ノーラン監督のバットマン3部作はネット配信で観て、あの重たい世界観は印象に残りました。その中で、ヒース・レジャー演じるジョーカーはとても不気味でした。
本作はジョーカーが主人公で、しかもバットマンが出てこないということは、全編重苦しく狂気に満ちているということになります。なので、直前まで観るつもりではなかったのですが、あまりにも前評判がいいので、観てみることにしました。

観てみた結果は、ある意味予想どおり、本当に何の救いもない世界でした。ジョーカーだけが、というよりは、ゴッサムシティ全体が陰鬱で市民の不満がくすぶっていて、社会秩序も個人個人のモラルもすでに崩壊しかかっている状態で、ジョーカーは市民の不満爆発の引き金に過ぎないような感じでした。

ホアキン・フェニックスの演技は素晴らしい。というか、彼の演技なくしてはこの作品は成立しないと思います。笑い方や動作がちょっと奇妙で不気味さを秘めているのですが、もはや脚本では表現できない部分であり、彼の演技によって足されたものだと思えるので。

本作は日本ではR15指定で、アメリカでも映画館が子供に見せないように異例の呼びかけをしたと聞きます。決して暴力や犯罪を奨励しているわけではないでしょうが、この状況に陥ったら犯罪に走るのも仕方がない、と思えてしまうような危険性はあると思います。
まだ、あのバットマンのあのジョーカーの話なので、フィクションとして済まされますが、これが普通の犯罪者の話だったらもっとヤバいかも。
とりわけ今の時代、社会がやや不安定なムードを醸し出しているので、作中のゴッサムシティのようなことが、現実にも起こりうるような気がしてしまいます。

この世界観の映画としての完成度は極めて高いと思うのですが、そもそも私はこういった作風があまり得意ではないこと、観ていてシーンの繋がりやストーリーの展開が一部よくわからない部分があったことなどもあって、★4つとしました。

初日とはいえ、レイトショーなのにお客さんがたくさん入っていました。こういうトーンの作品ではかなり珍しいと思います。

公式サイトは、こちら。
http://wwws.warnerbros.co.jp/jokermovie/