2015年4月29日水曜日

『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』

★★★★☆

ひとことで言うと、とても不思議な映像作品。

主人公が舞台に立つプレッシャーなどで精神的に錯乱した状態に陥るという点と鳥のモチーフがどうしても『ブラック・スワン』を思い出させますが、『バードマン〜』の方がずっとぶっ飛んだ作品。

ただ、目新しいのは映像処理技術やBGMなどの斬新なアイデアなのですが、この作品にそのアイデアを組み合わせる必然性があったのかを考えると、正直よくわかりません。
強いて言えば、主人公の精神の異常性や緊張感みたいなものを感じさせる効果はあったような気がします。まあ感覚的には、作品世界にはまっていた(というか映像処理、BGMも含めて作品世界を構成していた?)と思います。
例えば『ゼロ・グラビティ』の映像表現は、その後の作品の基準を変えてしまうような影響力を感じたのですが、『バードマン〜』の映像表現は、今後の作品の基準を変えてしまうというよりは、この作品単独でユニークな表現をしているだけという印象です。

上映時間のほとんど全てが1カットでつながっています。それも、単純に主人公をハンディカメラで追い回すだけではなく、時間が経過したり、屋外から窓を通過して屋内へ移動したりローアングルからハイアングルへ劇的に目線が変わったり。もちろん実際には、別々に撮影したカットをCGで滑らかにつないているんだろうけど、あれだけ徹底的にやれば今までにない感覚が生まれます。
ただ、若干セリフが頭に入ってこない気がしたのは、この1カット手法のためかもしれません。

ドラムのみのBGMがかなりあり、映像を見ながらアドリブで叩いたんじゃないかという感じのもので、強く印象に残りました。
冒頭の作品タイトルのところは、ドラムBGMと動くタイポグラフィーがシンクロしていてそこだけ取り出してもなかなかカッコよくて、「お、これは作品は普通の作品じゃないな」と思わせるものでした。

その斬新な要素を除くと、登場人物の多くが自分勝手で、すぐにキレて感情が爆発してしまって、見ていて何らハッピーな気分にはならない作品でした(^^;)。

映画館で、私の後ろの列に若い男女3人組が座ったのですが、彼らがチョイチョイしゃべるし、作品内のちょっとした下ネタでいちいち笑うし、私の2つ隣の空席の背もたれに足を載せて、それが私の視界に入ってくるし、背もたれの振動も伝わってくるしで、映画を鑑賞する環境としては劣悪でした。
本来、この作品を観に来るような客層の人ではなさそうな気がしました。タイトルだけ見て『バットマン』や『スパイダーマン』のような娯楽作品と勘違いしたのかなあ。

公式サイトは、こちら。
http://www.foxmovies-jp.com/birdman/

2015年4月25日土曜日

『ドラゴンボールZ 復活の「F」』

★★★☆☆

"鳥山明脚本"に引かれて観てしまいました。

結果としては、まあいつものパターンではあるのですが、単純明快でよかったと思います。

ドラゴンボールというと、ある時期からは、

強い敵が現れる→最初は悟空は負けてしまう→修行その他でパワーアップ→悟空の仲間たちもコテンパンにやられる→最後にパワーアップした悟空登場。敵をやっつける

みたいな基本フォーマットができあがってしまっているのですが、映画作品ででこれをやるのは時間的に無理があるように思います。悟空のパワーアップもいい加減飽きてきて、髪の色は何色あるの?とツッコミたくなる状況です。悟空の仲間たちも多すぎて、悟空を活躍させるためには他の仲間はザコ扱いせざるを得なくなってしまいます。

今回の作品はその辺の課題がかなり整理されていたと思います。
青い髪の悟空は“超サイヤ人ゴッドのパワーを持ったサイヤ人の超サイヤ人”だそうです。個人的には、今回の作品ではあの設定はなくてもよかったと思いますが、きっとドラゴンボールのお約束として許されなかったのでしょう(^^;)。ただ、どうやってその力を会得したかはストーリー上どうでもよく、特に時間をかけて描かれているわけではありません。
今回の作品に悟天とトランクスは出てきません。登場させて、超サイヤ人なのに対して活躍する場もないくらいなら、登場人物を絞り込んでそれぞれに意味のある役割を持たせた方が作品として引き締まるので、悪くない考え方だと思います。その代わりに天津飯や亀仙人がフリーザ軍との戦いに参加するのはちょっと違和感がありましたが…(^^;)。

結局のところ今回の作品には、パワーアップしたフリーザとパワーアップした悟空の戦いを見せることがほぼ全てで、基本フォーマットのそれ以外の要素は極力排除した作りになっていたということだと思います。
そこに鳥山明的笑いが程よい塩梅で散りばめられていたと思います。

公式サイトは、こちら。
http://www.dragonball2015.com

2015年4月18日土曜日

『ジヌよさらば -かむろば村へ-』

★★★☆☆

松尾スズキ監督作品というと『クワイエットルームへようこそ』をテレビ放送だったかレンタルだったかで観たことがあります。作品の内容はほとんど覚えていませんが、独特の面白さがあったことだけは記憶に残っています。

今回の作品を観て「ああ、こんなノリだったなあ」と、松尾スズキテイストを思い出しました。

実はこの作品、もともと観るつもりはなかったのですが、"お金を使わない生活"という設定が面白いと思っていたのと、"試写会で爆笑だった"という報道などがあったので観る気になりました。

結果としては、確かに笑いの要素はたくさんあったけど、爆笑する程ではなかったかなあ(^^;)。
こちらが勝手に期待していたのは、"お金を使わない生活"を実現するための奇想天外な工夫とかそれによる大騒動とかの、知恵比べ的な笑いだったのですが、それもちょっと違いました。
どちらかというと、クセのある村民たちのエピソード、特に阿部サダヲさん演じる村長の人物像や過去にフォーカスされている印象でした

阿部サダヲさんと松たか子さんは、以前『夢売るふたり』という作品で夫婦役を演じていたのをはっきりと覚えていたので、違う作品で同じ設定、しかも割と生活水準も近い雰囲気なので、不思議な感じでした。
三谷幸喜さんが特別出演してします。

公式サイトは、こちら。
http://www.jinuyo-saraba.com

2015年4月14日火曜日

『ソロモンの偽証 後篇・裁判』

★★★★☆

前篇も含めて、全体としてなかなか面白かったと思います。

中学生が自らの手で学校内裁判を行うというアイデアがこの作品の面白さだと思いますが、謎解き重視で描くか、中学生たちの成長の物語にするかで、大きく印象が異なると思います。
この作品は、両方を狙っているのでしょうが、結果的には両方ともちょっと物足りなさを感じました。

謎解きという意味では、予想を超えたものではなかったかなあ。
明らかに裁判の趣旨と違う方向に話がブレるのは、中学生の成長物語として彼らの本音を吐き出させる必要があるのでしょうが論理ゲームとしてはちょっと余計なノイズにも思えます。
裁判に積極的に関わった中学生のうち、藤野さんや神原くん以外は、その過程で何を思いやり終えてどう感じたのか全く描かれていないので、それもちょっと残念。

全体としては、前篇、後篇の2部構成でとても丁寧に描いているのに物足りないということは、テレビドラマとかでもっと時間をかけた方がいいのかもしれません。
そう考えると、大人になった主人公が教師として母校に赴任してきて中学生だった頃を回想するというくだりは削ってもいいような気がしました。

主人公藤野涼子役の藤野涼子さんは、やっぱりとてもよかったと思います。

公式サイトは、こちら。
http://solomon-movie.jp

2015年4月5日日曜日

『エイプリルフールズ』

★★★★☆

面白かったと思います。
『エイプリルフールズ』というタイトルと、大量のキャストの存在を知っただけで、作品のコンセプトが想像できました。
つまり、様々なシチュエーションで嘘にまつわるエピソードが描かれ、それらが実はつながっていて、最後には「ああ、なるほど」となるような作品。

三谷幸喜さんの『有頂天ホテル』も似たノリだと思うのですが、このようなストーリー展開は私の大好物。

実際、期待に違わぬ「ああ、なるほど」を感じられました。

途中、泣き笑いの要素も散りばめられていますが、全体的には軽いエンターテインメントで、大作としてありがたがるような作品ではないと思いますが、こういうの好きなんですよねえ、やっぱり。

途中、エピソードのつながりがわからない部分があって、展開がはやくて見落としたのかとずっと気になっていたら、最後に謎解きが出てきたものがありました。どうしてアレだけ後出しにしたんだろうなあ。もう少し早めに種明かししてくれれば、気持ちの引っ掛かりが解消されて、気が散らなかったのに。

ほんの1シーンだけ登場した小池栄子さんが、どういうキャラクターなのかよくわかりませんでした(^^;)。

公式サイトは、こちら。
http://aprilfools.jp