2019年9月29日日曜日

『ホテル・ムンバイ』

★★★★☆

日本で上映されるインド映画は面白いものが多いので好んで観ています。『ホテル・ムンバイ』は、オーストラリア・アメリカ・インド合作で純インド産ではありませんが、なかなか評価も高いようなので、観てみることにしました。

この作品は2008年にムンバイで実際に起こった同時多発テロを扱った作品です。この事件はもちろん日本でも報道されましたが、日本の場合、通常のニュースメディアでは日本が直接関わらない海外のニュースは詳しく取り上げない傾向があるため、詳細は知りませんでした。
ただ、イスラム系のテロリストの活動範囲がアジアをどんどん東へ移動してきて、そのうち日本に到達するんじゃないかと恐怖を感じたこともあり(時系列的にどちらが先か覚えていませんが、バングラディシュやインドネシアでもテロ事件があったので)、当時の報道のことは意外とはっきり記憶しています。

緊迫感がすごい作品でした。この感覚は『アルゴ』と似てる気がします。

事件発生時のホテルマンの働きを"名もなき英雄"とたたえているようですが、私はそういう印象ではなありませんでした。もちろん何とかしようとできる限りのことをしていますが、武器を持っているわけでも格闘術に長けているわけでもないので、基本的には逃げるか隠れるかしかできません。言うことを聞かない客が勝手な行動を抑えることもできないし、後から見れば判断ミスだと思えることもしています。でも実際にテロの現場に出くわしたときに、そんなに都合よくヒーローが現れるわけもないので、これが現実なんだと思います。

この手の作品は群像劇のドラマの作り方として、何人かの人にフォーカスを当てつつストーリーが展開するものです。そうなると、観ている側は「この人とこの人は結局助かるんだろうな」と予想がついてしまうものですが、本作ではその予想を裏切る展開があってびっくりしました。あれは狙いなのでしょうか。

テロリスト側のテロ実行中の言動も結構描写されています。彼らの生い立ちなどについては直接描かれてはいませんが、その言動からある程度垣間見ることはできます。観てる側としては、「どうしてこんな人間になってしまったんだろう?」と悲しい気持ちになりました。

公式サイトは、こちら。
https://gaga.ne.jp/hotelmumbai/

『記憶にございません!』

★★★☆☆

三谷幸喜監督の映画作品はひととおり観ており、今回の作品も最初から観にいくことは決めていました。

三谷作品は一貫してコメディを追求していますが、だんだん観る側も慣れてきたのか、以前の作品ほど声をあげて笑ってしまうという場面が減ったように思います。『記憶にございません!』ももちろんコメディですが、そこまで爆笑に次ぐ爆笑という感じではありませんでした。

でも、現職総理大臣が記憶喪失になるという設定は、もうそれだけで面白いですし、実際作品全体としてなかなか面白かったと思います。こんなことを言ってしまっては三谷監督には申し訳ないかもしれませんが、爆笑を期待しすぎない方が楽しめる気がしました。

個人的に、前作『ギャラクシー街道』が何を表現したいのかよくわからなかったので、それと比べるとものすごくちゃんとストーリーが展開し、ちゃんと楽しめる作品だったので、そういう意味でもよかったと思います。

総理大臣を扱っているので、実在の総理や政府や政治家への批判なども含まれているのかもしれませんが、あまりそこを深読みする意味はないような気がします。

総理大臣役の中井貴一さんはじめ、一流の役者さん達が、ちゃんとしているようでいてどこかズレているキャラクターを見事に演じていましたが、ディーン・フジオカさんだけ切れ者の秘書官をほぼそのまま演じている印象でした。三谷作品なので、もうちょっと三枚目なのかと思っていました。

この手の記憶喪失モノの場合、どこかのタイミングで記憶を取り戻すというのがよくある展開で、そこでまた色々なことが起こるわけですが、その辺りがこの作品の展開はちょっと意外でした。


公式サイトは、こちら。
https://kiokunashi-movie.jp

2019年9月9日月曜日

『ヒンディー・ミディアム』

★★★☆☆

お受験をテーマにしたインド映画。
日本とインドでは教育事情も精度もまるで違うと思いますが、作中に登場する子供は小学校低学年ぐらいに見えるので、日本でいう小学校受験に近いイメージではないでしょうか。

観る前に勝手にイメージしていたのは、難関校目指して、子供そっちのけであの手この手を繰り出す親たちのドタバタをコミカルに描いた作品。
でも実際に観てみると、かなり印象が違いました。どちらかというと、教育を巡る貧富の差がテーマで、もちろん笑いの要素もありつつ、割とシリアスな要素も強い作品でした。

タイトルの『ヒンディー・ミディアム(Hindi Medium)』は、ヒンディー語で授業を行う公立校のことだそうです。mediumは中流階級のことかな?と思っていたのですが、メディア、媒体の方でした。
一方、English Mediumは英語で授業を行う私立校で、作中の親子が入学を目指しているのもそういった学校です。
さらに、私立校であっても一定の割合は低所得者層からの入学を受け入れなければならないというインドの教育制度もストーリーの重要なキーとなります。

この辺りのインド特有の事情は、作中でうまく説明されているので、予備知識なしでも特に問題なく理解できます。

コメディを期待していた割にシリアスだったこと、インド特有の教育環境に依存した内容なので、日本人が観ても自分と重ね合わせるという感覚にはなりにくいことなどから星3つとしましたが、内容的にはなかなかよかったと思うので、3.5ぐらいのイメージです。


公式サイトは、こちら。
http://hindi-medium.jp