2012年9月10日月曜日

『夢売るふたり』

★★★☆☆

西川美和監督といえば、『ゆれる』『ディア・ドクター』などの監督ですが、私は観たことがありません。でも、どうやら評判がいいようなので、今作を観てみることにしました。

この作品、言ってしまえばバカップルの転落人生。たぶん、この基本的なストーリーの骨子がこの作品の魅力ではないと思います。そこに、都会の風景、街のノイズ、ごく普通の人間の生活、ちょっとしたしぐさ、表情、言葉などを生々しく肉付けしていった結果、完成した作品は、妙に魅力的に仕上がっています。

全体的に「だから何?」的なシーンがつながっていて、本当に表現したいものを行間から読み取らないといけない感じの作品で、何ら救いのない終わり方といい、とても日本的な作品という印象を持ちました。

R15指定なのは、ほんのちょっとそういうシーンがあるからだと思いますが、たぶんそのシーンがなくても作品全体の印象はそれほど変わらない気がします。でも、人間の営みを生々しくリアルに描きたいんだろうな。そのためにはR15でいいと判断したのが監督かどうかわかりませんが、こだわりを感じますね。

なるほど、西川監督というのはこういう作品を作る人なんだと、納得できたし、評判がいいのもよくわかりましたが、最終的にこういう作風が自分の好みかというとそれほどでもないので、星3つにしてみました。

http://yumeuru.asmik-ace.co.jp

2012年9月8日土曜日

『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』

★★★★☆

前作3は、個人的にはイマイチだったのと、先日放送されたTHE LAST TVも微妙(踊るの世界観を思い出すのには役立ちましたが)だったので、さすがにパワーが落ちてきたかなあと思いつつ観ました。

結果的には、なかなか良かったと思います。まあ、基本的には過去の作品と同じノリなので、マンネリといえばマンネリ。シリアスなシーンとコミカルなシーンがコロコロと切り替わる感じ。複数の事件が並行して推移しながら、実はつながっているという展開。湾岸署内の、大人数での芝居。絶妙な間でクスリとさせる笑いのセンス。最初のTVシリーズからお馴染みの脇役。では、3と比べて何がよかったのかと問われてもよくわかりませんが、たぶん、ストーリーが好みだったのかなあ。あとは「これで最後」という気持ちで少し点が甘くなったかも(^^;)。

今作ではFINALだけに、青島、室井、すみれが前面に押し出されていて、あとは全部脇役といった印象。3で登場した青島の部下たちは、出演シーンは多いものの、あまり活躍していません。もしかして、彼らに活躍の場を与えるためにTHE LAST TVがあったのか?という気もします。

さて、踊るシリーズは今回で最後ということですが、続けようと思えば続けられる終わり方でした。何年か経ったらもしかして続編が?という気がしないでもない感じです。個人的には、シリーズが続くことへの期待もなくなないのですが、3のときに感じたようにイマイチな作品が増えていくことは望まないので、まあこれで終了ということでいいと思います。

http://www.odoru.com/index.html

『るろうに剣心』

★★★☆☆

監督が大河ドラマ『龍馬伝』と同じで、主要キャストの佐藤健、香川照之、青木崇高、蒼井優は『龍馬伝』にも出ていたので、どうしても『龍馬伝』とダブりますね。特に、佐藤健と香川照之は役柄的にも近いし。

『龍馬伝』が史実にそった歴史モノだったのに対して『るろうに剣心』は、一言で言えばチャンバラアクション映画ですね。とにかくチャンバラシーンが派手。相手を刀で切るというより殴ると言った方がピッタリくる力強さ。スピード。ワイヤーアクション。カメラワークと編集。効果音のボリュームの大きさ。
作品そのものが、チャンバラシーンを見せるためのもののように思えました。

幕末、人斬りとして恐れられた武士が、明治に入って自分の進むべき道を見失い、逆刃刀(峰側に刃がついていて、普通に振っても相手を斬れない)を手に浪人となっているという、その時代ならではの設定はとても魅力的なのですが、この設定を生かした心のドラマとしては描ききれていないような印象を受けました。

確かに逆刃刀なら相手は死なないけど、チャンバラをやるということは結局武力で相手を倒すということで、あそこまで派手にやるなら単にものすごく強い浪人の話でいいように思います。
また、敵役にもそれなりの事情があれば心のドラマとして深みが出ると思うのですが、本当に単なる「悪」なので、こちらとしては「こいつらはやっつけて当然」という気持ちになります。

ということで、ごくごくシンプルな勧善懲悪の構図の中で、目一杯派手でスタイリッシュなチャンバラアクションを楽しむ作品だと思いました。

http://wwws.warnerbros.co.jp/rurouni-kenshin/index.html

2012年9月1日土曜日

『プロメテウス』

★★★☆☆

これぞSF映画という感じで、映像や設定のディテールはよくできていると思いました。

ただ、釈然としない点も少なくありませんでした。

まず、人類の起源を探る目的で惑星探査を行うという話なのですが、その答えが何だったのかよくわかりませんでした。そもそも、なぜその惑星に行けば人類の起源にたどり着くと判断したのか、その根拠も不明。
そして、デヴィッドの、仲間を危機に陥れるような不可解な行動の理由も全然わかりませんでした。

惑星探査チームには科学者も含まれているのに、あまりにも行動が軽率。初めて行く惑星で何があるのかわからないのに、大気組成のデータを見ただけで宇宙服のヘルメットを外しちゃうし、未知の生物に手を伸ばしちゃうし、天候が悪化しても避難よりも遺跡の調査を優先しちゃうし…。
せっかくメカの設定がちゃんとしていても、探査のプロセスがお粗末だと、なんか日本の子供向け特撮ものみたいな印象になってしまいますね。