2018年8月23日木曜日

『ペンギン・ハイウェイ』

★★★☆☆

原作は読んでいません。
映画レビューサイトでの評価が高かったので期待していたのですが、すみません、私は今ひとつピンと来ませんでした。どういうスタンスで観ればいいのかよくわからなかったという印象でしょうか。

自分が住む街に出現したペンギンの謎に、研究大好きな小学4年生のアオヤマ君が迫っていくのですが、本人は大人の研究者にも負けないつもりなのかもしれませんが、実際には科学的アプローチがきちんとできているわけではありません。
最終的に科学的(SF的)な理屈づけをして謎が解けるのか、それともメルヘン、ファンタジー的な答えとなるのか、どっちなんだろう?とずっと思い続けて、結末も結局フワリとした感じだったので、個人的にはあまりスッキリしませんでした。

アオヤマ君は、活発でスポーツマンというタイプでもなく、単なる優等生でもなく、内向的でナイーブでもなく、少し変わった男の子で、ありそうでなかなかないキャラクター設計だと思いました。私はかなり好き。そんな彼を否定せず、背中を押すお父さんも只者じゃないと思います。
一方で、ガキ大将のスズキ君はジャイアンもどきという印象で、何十年も前のいじめっ子キャラのように感じたのですが、いまどきの小学校にもあんな子がいるのでしょうか。

アオヤマ君の声は北香那さんという若い女優さんが演じてします。この方『めざましテレビ』に出演されているので知ってはいたのですが、小学4年生のアオヤマ君のビジュアルに素晴らしくよくハマっていたと思います。キャラクターの中から自然に発せられているようでした。

お姉さん役の蒼井優さんは逆に、すごく蒼井優さんを感じる声でしたが、実写作品でキャラと一体化するように、お姉さんになっていました。

アオヤマくんとお姉さんの関係を見ていて、『銀河鉄道999』の星野鉄郎とメーテルを思い浮かべました。憧れのお姉さんと冒険の旅に出て、少年が少し成長するという構図が似ている気がします。

スタジオコロリド作品を観たのはたぶんはじめてなのですが、なぜか名前は知っていました。こういう路線の作品を作るスタジオなのでしょうか。今後も記憶にとどめておきたいと思います。


公式サイトは、こちら。
http://penguin-highway.com

2018年8月20日月曜日

『インクレディブル・ファミリー』

★★★☆☆

前作の『Mr. インクレディブル』は、ピクサーの長編アニメの中で初めて人間が主人公の作品でした。
フルCGアニメで人間の顔の造形はおそらくとても難しく作る側もさぞかし苦労していると思いますが、見る側としてはあまり好みではないことが多い印象です。
また、おもちゃが生き生きと動くといったテーマは、まさにCGだからこそできる表現ですが、キャラクターが人間の場合、CGで表現する必然性はそれほどないように思えます。
そんなわけで、当時『Mr. インクレディブル』は私の中ではあまり好きな作品ではありませんでした。

今回『インクレディブル・ファミリー』を観るにあたって、自分の中でその点をどう感じるのかが一つの興味でした。
結論としては、どうでもよくなっていたようです。『Mr. インクレディブル』から『インクレディブル・ファミリー』まで約14年の歳月が流れており、その間CGは当たり前の映像表現となりました。3DCGを従来のアニメっぽく線画に処理したものから、実写と区別がつかないリアルなものまで目にしていると、それはもはや鉛筆で描くかボールペンで描くかぐらいの差に過ぎず、テーマがCG向きかどうかという観点は意味をなさなくなったのだと思います。

ということで、今回は割とストーリー自体を楽しめた気がします。ヒーローとしての活躍という意味では、奥さんのイラスティガール中心に展開していたのはちょっと意外でしたが、まあ普通に面白かったと思います。ただ、バットマンなどのもう少しシリアスなストーリーのヒーローものもいろいろとあるので、それと比べるとかなりライトな印象です。

子供たちが、特殊能力は持っているもののやはりまだ幼いので、しばしば足を引っ張ってしまうところがあります。彼らが人間として、ヒーローとして充分に成長したときの、プロフェッショナルなヒーローチーム、インクレディブル・ファミリーの活躍を見てみたい気がします。…結局私は、シリアスなテイストの方が好みなのでしょうね。

同時上映の短編『bao』もよかったと思います。何作か前の短編はインドを感じさせるものでしたが、今回は中国。ピクサーのスタッフもグローバル化しているでしょうから、これは当然の流れ。ストーリーもキャラクターの造形もどこかアジアを感じました。
こうやって、世界中の様々な感性を取り入れることで、CGによる人間の顔の造形も豊かになりつつある気がします。


公式サイトは、こちら。
https://www.disney.co.jp/movie/incredible-family.html

2018年8月13日月曜日

『カメラを止めるな!』


★★★★★

今話題の作品ですが、ありがたいことに近くのシネコンで上映を始めたので、早速観てきました。

ネタバレは避けたいので、かなりぼやかして書きますが、これからご覧になるつもりの方は、先に読まない方がいいかも。

映画を観る前に、内容について知っていた情報は「ゾンビ映画かと思いきや、途中から…」というようなものでした。
実際、最初はゾンビ映画。しかもかなりのB級。この時点ではどう話が展開するのかまったく読めませんでした。そして、途中からこの映画が何をやりたいのかがわかり始めました。映画作品をたくさん観ていると、実は本作と同じような構造、構成の作品に時々出会うことがあります。そういう意味では、星5つはちょっと甘い気がしますが、その構造パターンの中でもかなり手が混んでいて面白いのは間違いありません。

こういう先品を作るのはさぞ難しいだろうと思います。その難しさは、よくできたミステリー作品と似ている気がします。例えば殺人事件が起こって、探偵が登場します。探偵は色々と調べて犯人につながる手がかりを見つけていきます。それは時に、現場の状況や遺留品であり、関係者の言動ですが、探偵が見聞きしたことは全て、視聴者も知ることができます。でも、この時点では視聴者には犯人はわかりません。

そして謎解きが始まります。探偵は、自分が手に入れた手がかりの意味を解説し、犯人を指摘します。このとき、視聴者が「ああ、なるほど。そういうことだったのか」と納得できると、そのミステリーは面白いと評価されます。

謎解きの前の視聴者は、探偵と同じ手がかりを知っているはずなのに犯人はさっぱりわからず、謎解きを聞くと全ての疑問が解決するという、この落差が大きければ大きいほどミステリーは面白くなります。

そして、探偵が謎解きの解説で「あのときのあれは…」と説明するとき、視聴者が「あのときのあれ」をきちんと思い出せることが重要です。謎解きが始まるまでは現場の様子や人の言動の何に意味があるのかもわからずに見ているにもかかわらず、謎解きが始まったときにはきちんと思い出せるように映像を作るのはかなり難しいはずです。重要なものを強調しすぎると謎解きの前に視聴者が答えにたどり着いてしまいますし、強調しなさすぎるとあとで思い出せなくなります。絶妙なバランスを作り出すために、脚本も俳優の芝居やセリフも撮影の絵作りも、かなり練り上げる必要があるのではないかと想像します。

本作はミステリーではありませんが(ある意味謎解きの妙ではあるのですが)、本当によく練られた、面白い作品だと思います。


公式サイトは、こちら。
http://kametome.net/index.html

2018年8月11日土曜日

『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』

★★★★☆

ド派手なアクションエンターテインメント作品として、高いレベルで楽しめたのは間違いないのですが…。

シリーズも6作目となり、特にここ何作かは「いかにトム・クルーズが体を張っているか」を楽しむ作品になっている気がします。

1作目の有名なシーンで、敵の施設内部に侵入し、セキュリティをかいくぐるために天井からワイヤーで吊るされてコンピューターから情報を抜き取るといったものがありました。そもそもスパイなので、人に知られずに活動するということは基本でしょうし、情報戦という意味では、今やネットもスパイの活動場所として外せないと思います。

そういった、情報戦、頭脳戦といった知的(?)なスパイ活動は本作ではほとんどなく、格闘、バイク&カーチェイス、スカイダイビング、ヘリコプターなどの体育会系の活動ばかり。むしろ、それだけを追求して徹底的に高めている感があり、それはすごいと思います。

でもそうなると、次回作がもしあるなら、やはり体育会系路線で行くしかないでしょうし、トム・クルーズの年齢はさらに高くなる中、アクションはさらに高度で危険なものを求められるでしょう。そんなことができるのか心配になってしまいます。
言いかえれば、先のことを考えるなら、もう少し頭脳戦にシフトさせるべきなのに、後先考えずに詰め込めるだけ体育会系アクションを詰め込んでいるのが今作、ということになるかもしれません。

実は、ストーリー展開の細かい部分(誰がどの組織に属していて、誰を狙っているのか、など)はよくわかりませんでした。そういった情報は、ほんの一瞬のセリフの中で説明されていたりするのですが、集中力が落ちて見逃してしまったりすると、「あれ、なんでインドにきたんだっけ?」と、展開についていけなくなります。
それでも、ド派手アクションだけ楽しむことができてしまいました。ということは結局、ストーリーは重要ではない、というのは言い過ぎかな。


公式サイトは、こちら。
http://missionimpossible.jp

2018年8月5日日曜日

『スターリンの葬送狂騒曲』

★★★☆☆

どのくら史実に忠実なのかはわかりませんが、ソ連のスターリンの死を巡る後継者争いを、毒を含んだコメディタッチで描いた作品。
イギリス製作で、ロシアでは上映禁止になったそうです。
どこかで予告映像を見て面白そうだと思った記憶があるのですが、気づいたらいつも行くシネマイクスピアリでやっていたので観てみました。

結論としては、ソ連の歴史についてほとんど知識のない私だと、どうしても部分的にしかわかりませんでした。星3つはそんな私の評価ですが、たぶん予備知識がある人が観れば相当面白いのではないでしょうか。
私は、正直途中で眠くなりました。

スターリンが自室で倒れたとき、部屋の入り口にいた見張りの兵士は、室内の物音に気づいたものの、中を確認してスターリンの機嫌を損ねたら処刑されると思って何もしませんでした。優秀な医者は粛清してしまったのでヤブ医者しか残っていませんでした。側近たちもこれで自分が権力者になれると思い、彼を積極的に助けようとはしません。

そして、スターリン死亡後は、側近たちや親族による次の権力者の椅子の争奪戦です。それがどいつもこいつも自分のことしか考えないクズばかりで、しかも独裁政権を支えてきた人たちなのでやり方がえげつない。何一つ共感できません。その狂気を笑おうというのがこの作品の趣旨だと思います。

シネマイクスピアリの中でも小さめのスクリーン、しかもレイトショーでしたが、思ったよりはお客さんが入っていました。やはりこういう作品に興味を持つ層が一定数はいるようです。
最近はシネマイクスピアリでも、こういうちょっとマニアックな作品も扱うことが増えた気がします。ありがたいことです。

公式サイトは、こちら。
http://gaga.ne.jp/stalin/

2018年8月2日木曜日

『未来のミライ』

★★★☆☆

実は、映画のレビューサイトを見ると結構厳しい評価となっていたので、少々心配しつつ観に行きました。

一応4歳の男の子、くんちゃんの時空を超えた冒険の物語ということになっているのですが、なぜ、どうやって時空を超えるのかというSF的な説明は特にないので、単なる妄想の世界というか、夢オチ的なストーリー展開というか、観ていて腑に落ちる感覚はあまりありませんでした。

どちらかというと、子育てあるあるがかなり丁寧に描写されているので、親世代には共感できる部分が多いかも。子供のしぐさなど、かなり細かく演出していたし。だとすれば、作品全体を子育て奮闘記的な体裁でまとめた方がわかりやすかったのではないかと思ってしまいました。

くんちゃんの声の上白石萌歌さんの演技はとてもよかったと思いますが、個人的には、なぜかその声がくんちゃんから発せられている感じがしなかったなあ。
ミライちゃんの黒木華さんは、ミライちゃんの姿形との一体感があったのですが。
そして、福山雅治さんの声の演技は意外とよかったと思います。

くんちゃんのお父さんは建築家で、くんちゃんの家は彼が自分で設計しているのですが、なかなか面白い構造でした。子供部屋と中庭とリビングダイニング(かな?)がよく登場していましたが、さらにその上に寝室やバストイレがあるようでした。住宅全体の構造を知りたくなってしまいました。

結論としては、物語の根幹部分がやや弱くて枝葉末節が凝っているという印象でした。


公式サイトは、こちら。
http://mirai-no-mirai.jp

『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』

★★★☆☆

基本的に医療モノのドラマは好きで、つい観てしまいがちです。救命救急を扱ったものだと『救命病棟24時』シリーズは結構ガッツリ観ていました。たぶんその前にアメリカのテレビドラマ『ER』などがあるのでしょうが、こちらは観ていないので言及できることはありません。

『コード・ブルー』も観ていましたが、ひとことで言えば『救命病棟24時』にドクターヘリという要素を加えて焼き直した作品というのが私の理解で、演出的にも共通点が多いと思いました。ただ、やけに若い美男美女の役者を取りそろえているあたりは、重厚さに欠ける印象もありました。
最初のころは、主要キャストの5人と柳葉敏郎さん演じる指導医の黒田先生も含めて、いずれも人間性に難ありのキャラクターばかりで、ギスギスした空気が嫌でしたが、だんだんお互いの信頼関係が芽生えてくると、少し面白く観られるようになりました。
3rd Seasonは、それぞれ役者としての格がかなり上がっている主要キャストが勢ぞろいした驚きもあり、救命医として一流に成長し、お互いの信頼も増したプロのチームとしての活躍や、フェローを指導する立場の苦悩など、自分にとって共感しやすい部分も多く、結構楽しく観ることができました。

で、映画ですが、3rd Seasonのもう一つの最終回といった内容です。映画らしく災害のスケールは大きいのですが、実はこれまでのテレビシリーズでも結構大きな災害シーンがあったので、圧倒的とまでは言えない気がしました。

3rd Seasonの最終回であり、シリーズとしても一区切りという空気もあるので、どうしても各登場人物の身の振り方に時間を使ってしまい、フライトドクターとしての医療的な活躍の部分がなかったわけではないのですが、印象としてはやや薄かったように思いました。

また、シリーズとしての一区切りと考えた場合、1st Seasonから主要キャスト5人がどう成長したか?の答えが欲しくなります。それは黒田先生が今の彼らを認めるかどうかだと思うので、個人的には黒田先生が映画に登場することを期待していました。
実際どうだったのかは伏せておきますが、私が思っていたのとは少し違う形で、答え的なものに触れていました。

夏休み中とはいえ、レイトショーの割にお客さんが入っていました。本当にこの作品は人気があるんですね。

ところで、この作品のタイトル「コード・ブルー」って、どういう意味でしたっけ?

公式サイトは、こちら。
http://www.codeblue-movie.com/index.html