2016年2月20日土曜日

『スティーブ・ジョブズ』

★★★★☆

この映画は、アイザックソンの書いたジョブズの伝記が原案ということになっています。あの伝記は、彼の出生から亡くなる間際までをかなり詳細に描いているのですが、そこから映画作品にするときに、全体をまんべんなく描かずに、こういう切り取り方をしたのか、という、そこが一番面白かったと思います。

もう一つのジョブズ映画(邦題は本作と同じ『スティーブ・ジョブズ』ですが原題は『JOBS』)の方も、伝記で描かれている全ての範囲を網羅しているわけではなかったと思います。でも、ウォズと出会ってAppleを作って、追い出されて、また復帰してという、彼のビジネスにおけるキャリアの一番ドラマティックな部分をきちんと抑えてありました。

本作の方は、一応初代Macintosh、NeXTcube、iMacの発表会場が舞台ですが、実際には、その舞台裏で起こっているジョブズのプライベートな人間関係が描かれています。逆に、ビジネス上の功績は、この作品ではほとんどわからないと思います。

私はもともとジョブズに興味を持っていて、Apple復帰以降はリアルタイムでどんな製品を発表してきたか知っていますし、彼にまつわる様々なエピソードもあちこちで見聞きしているので、そのうちのどの部分を映画で描いているのかわかります。
ただ、ジョブズについてあまり知らない人がいきなりこの映画を見た場合、登場人物全員と喧嘩している男にしか見えないでしょう。
ずっと認知拒否してきた娘のリサ、その母親のクリスアンとの関係は比較的わかりやすいのですが、スティブ・ウォズニアック、ジョン・スカリー、アンディ・ハーツフェルドはそれぞれ何をした人で、ジョブズとどういう関係の人物なのか、あの描き方で伝わったのかなあ。
それとも、そんなことが一切わからなくても、充分面白いと感じられる映画に仕上がっているのか。描かれていない部分を補って観ることができてしまう私にはよくわかりません。

割と普通の伝記映画を想像していた私にとってはかなりの変化球でしたが、ジョブズという人物を大胆に切り取って描いた人間ドラマとしては、かなり面白いと感じました。

公式サイトは、こちら。
http://stevejobsmovie.jp







2016年2月13日土曜日

『オデッセイ』

★★★★☆

とてもよかった、というか、好みだったと思います。

トラブルに対して、知恵を使って解決していくタイプの話が自分は好きで、宇宙を舞台にした作品は、こういうタイプの話とマッチしていると思っています。
というのは、私の中で宇宙飛行士は訓練された科学者やエンジニアというイメージがあって、理系的な思考回路の持ち主だと思っているので。
そういう意味では、同じ宇宙を舞台にしたSFでも『スター・ウォーズ』はファンタジーであり、スピリチュアルであって、対極の作品ですね。

『オデッセイ』と同じタイプの作品に『アポロ13』がありますが、こちらは実話に基づいているのでさらに現実的。『オデッセイ』はフィクション版の『アポロ13』といった感じだと思います。
トラブル対策を地球側でシミュレートして検証するような描写は、『アポロ13』と同じです。

細かい演出では、『オデッセイ』は明るくて面白おかしい作風に仕上げてあって、これは『アポロ13』とは少しトーンの違いを感じます。

また、生き残りのために食料となる植物を栽培したり、化学変化で水を生成したりするのが、この手の作品としては新鮮だと思っていて、ずっとこの路線で押していくのかと思いきや、後半の方は割と普通な宇宙トラブルもののような展開になってきて、私としてはちょっと残念でした。

原題は『The Martian』。火星人という意味のようです。原作小説ではこれを『火星の人』と訳したようですが、映画の邦題は『オデッセイ』。なぜ違う言葉に変える必要があるのかなあ。

公式サイトは、こちら。
http://www.foxmovies-jp.com/odyssey/