2012年12月10日月曜日

『砂漠でサーモン・フィッシング』

★★★☆☆

一番最初、映画館の予告編で観たとき、このふざけたタイトルからドタバタ・コメディを想像して、まったく観に行く気にはなりませんでした。
でもその後、どうやら意外とちゃんとした映画らしいことがわかってきて、観てみる気になりました。
実際に観てみると、飛び抜けた何かがあるわけではないのですが、安心感があったと思います。

タイトルからわかる通り、イエメンで鮭を釣るという夢を実行に移していくわけですが、どんなテクノロジーを使って、どんな創意工夫をしてそれを成し遂げていくか、という技術的なプロセスを見せる映画ではありません。
そのプロジェクトに関わる人達の心理的な変化にフォーカスされています。

この作品の登場人物は、何というか、みんなちゃんとしてます。主人公の水産学者はちょっと変わり者だし、英国首相の広報担当の女性もちょっと面白いキャラクターですが、それでも極端なキャラ設定ではないし、変に誇張された演技でもありません。
ストーリーの軸のひとつとしてロマンスも描かれていて、出会いもあれば別れもあるのですが、登場人物の対応が大人。
こんなおかしな依頼をしてきたイエメンの大富豪も、すごく周りがちゃんと見えていて、自分に対する反対勢力にでさえ配慮がある人物として描かれています。

この作品、BBCが関わっているせいか、鮭の遡上の水中撮影(あれは実写なのか…、CGのような気もしました)が、BBCのドキュメンタリー番組っぽく見えました。
ただ、役者の芝居と遡上する鮭が同時に映るカットがほとんどありませんでした。鮭のいない場所で役者の芝居を撮影して、編集で鮭のカットとつなぐことで、あたかもそこに鮭がいるかのように演出しているのが丸わかりでした。それがちょっと残念。

公式サイトはこちら。
http://salmon.gaga.ne.jp

2012年12月3日月曜日

『ボス その男シヴァージ』

★★★☆☆

『ロボット』で、久しぶりにインド映画、マサラ・ムービー熱が蘇ってきたので、その勢いで観てみました。

東京では渋谷と新宿で上映しているのですが、新宿の映画館では月曜日がメンズデーで1000円ということで、新宿を選択。

インド映画では当たり前なのですが、上映時間185分は本当に長い!それでも、面白ければ時間の長さはあまり感じないのですが、本作は若干退屈で、途中眠くなりました。

作品のそこかしこに笑いの要素が入れてあり、小ネタというかギャグが出てくるのですが、あまりにもベタで面白くないことが多かったと思います。
あとは、主人公のシヴァージが気に入った女性に結婚を迫る様がほぼストーカーで、いくらコミカルな演出であってもこれはちょっとないな、と。
シヴァージは、最初から慈悲深い金持ちの実業家で、貧困層から絶大な人気があります。この設定は『ムトゥ 踊るマハラジャ』に近いような気がします。似たような作品をもう一度観ているという感覚も、途中で退屈した原因だったかも。

実はこの作品、インドでの公開は2007年で『ロボット』よりも前。『ロボット』の方は主人公がロボットなので、多少行動がハチャメチャでも違和感がありませんし、アクションも思い切りド派手に表現することができます。本作の後に、よりスケールアップした作品を作るべく、"主人公がロボット"という設定にしたのは、実に筋が通っているように思えます。

それでも、インド映画らしい歌とダンス、笑い、涙、アクションなどがこれでもかと盛り込まれた、楽しい作品です。

公式サイトはこちら。
http://www.masala-movie.com/sivaji/

2012年12月2日日曜日

『カラスの親指』

★★★☆☆

まあ普通に楽しめました。

詐欺師の話なので、オーディエンスに対するだましが色々と盛り込まれているのですが、最初からそのつもりで見てしまうので、あんまり驚かなかったかなあ。別に予想できていたわけではないのですが、誰々は実は◯◯で…みたいな展開はよくあるので、答えがわかっても「まあそういうこともあるだろう」と。
金庫の金をだましとるところで、どういうトリックを使ったのかきちんと説明されていなくて、いくつか腑に落ちない点がありました。また、貫太郎の行動で気になる点が2つばかりあったのですが、あれがなんだったのか結局わからずじまい。この辺は、もう少しクリアにして欲しかったと思いました。
でも、基本的にこういう話は好物です。

上映時間が175分らしいのですが、ちょっと長いかなあ。観ていて飽きはしなかったけど、一番最後の種明かし的部分とかは「まだあるのかあ」と思ってしまいました。一部のエピソードだけ取り出して2時間ぐらいにまとめても映画としては成立するような…。

村上ショージの演技は、うまいのか下手なのかよくわからないなあ。若干セリフが棒読みっぽいのですが、それがかえって、この男には何か裏があるんじゃないかという感じを与えていたような気がします。
石原さとみのおバカキャラはちょっと新鮮でした。最初テレビCM見たときは彼女だと気づきませんでした。
まひろ役の能年玲奈は、爽やかでなかなかよかったと思います。10代前半の人かと思ったら、19歳らしい。
貫太郎役の小柳友は、何か別の作品で見た記憶がありますが、何だったかなあ。図体はでかいのに気が弱いキャラクターをうまく演じていたと思います。

公式サイトはこちら。
http://movies.foxjapan.com/crow/index.html

『エル・ブリ 世界一予約のとれないレストラン』

★★★☆☆

世界一予約がとれないレストランと言われた、スペインのレストラン「エル・ブリ」の、主にメニュー開発の様子を追ったドキュメンタリー映画です。

映画館で上映していたときから気になっていたのですが観られず、今回iTunes Storeでレンタルしました。

https://itunes.apple.com/jp/movie/eru-burino-mi-mi-shi-jie-yi/id573221178

このレストランは、半年間店を休業して、次の年のメニュー開発にあたるのですが、その様子をカメラが追います。

映画作品としてみた場合、時系列に反って淡々とシェフたちの様子が映されるだけなので、特にストーリー的な起伏はありません。その様子に対して、何か解釈や解説が字幕やナレーションとして付け加えられているわけでもないので、本当にただのぞき見しているような感じです。
それでも、忙しく仕事をこなすシェフたちの足だけを写したりするカットがあったりして、映画っぽさも多少見られます。

新しいメニューが創作される様子はやっぱり面白いですね。それはまさにデザインプロセスそのもので、最初はアイデアの断片を次々と試していき、可能性のあるものをコンセプト化して、より狙いにあったものへと調整していきます。さらにディテールを高めていき、コースとしての構成を考えていきます。その間、写真やメモを適宜残していきます。こういう様子を垣間見るのは、ワクワクします。

この映画を観ると、エル・ブリがいかにオーナーシェフ、フェラン・アドリアのワンマンっぷりがよくわかります。メニュー開発にあたって実際に手を動かすのはシェフのチームで、おそらく相当優秀な人達なんだと思いますが、あらゆる判断、決定はフェランにおうかがいを立てます。そして、フェランの言い出すことが、ものすごく感覚的で思いつきっぽい。フェランはほとんど笑わないし、いつ何を言い出すかわからないので、現場はいつもピリピリしています。
エル・ブリの頭脳でありすべてであるフェランと、その手足として働くシェフたちという組織の実態はよくわかりますし、それでうまくいっているんでしょうが、理想的な組織かどうかは、疑問符がつくような気がします。

公式サイトはこちら。
http://www.elbulli-movie.jp