2019年10月20日日曜日

『ガリーボーイ』

★★★★☆

ちょっと前に観た『シークレット・スパースター』と、ストーリーの基本骨格が似ています。勝手に、同じ企画から派生した姉妹作品のようなつもりで観ていました。

両方とも、貧困層の若者が音楽で成功していくサクセスストーリーで、家族に夢など見ずに現実的に生きるべきと反対されたり、親に内緒で動画をSNSにアップして評判になったり、最終的に賞をもらうなども共通しています。作品タイトルがSNSにアップするときのハンドルネームという点まで同じです。

ただ、『シークレット・スパースター』の方は、主人公が女子中学生であるのに対して『ガリーボーイ』は男子大学生。あとは、同じ音楽といっても前者は歌い上げる感じのボーカリストで、後者はラッパー。として作品全体のトーンとして前者が明るくコミカルな演出も多いのですが、後者は暗くシリアスな印象に仕上がっています。

これだけの違いで『シークレット・スパースター』はエンターテインメント作品、『ガリーボーイ』は社会派っぽくなるから不思議です。きっと、アカデミー会員は『ガリーボーイ』の方を好むと思います。

こういう映画は、作中のラップが本当にイケてないと説得力がないと思います。残念ながら、私はラップという音楽ジャンルにほとんど馴染みがないので、この点はよくわかりませんでした。

また、ラップはやはりリリックが重要だと思うので、日本語の字幕スーパーになってしまう時点で相当不利なんだろうと想像してしまいます。本作の字幕監修としていとうせいこうさんがクレジットされており、ラップのリリックの"らしい"翻訳に協力しているようです。その出来映えも私にはわかりません。

ラップの発祥はアメリカなのでしょうか。勝手に、貧困や差別、反社会的、反体制的な思想と強く結びついているイメージがありますが、インドのスラムのイメージとまさにピッタリなので、親和性は高いのでしょう。

ちょっとビックリしたのは、主人公がスラムの仲間にそそのかされて自動車の盗難に手を染める描写です。作中では、仲間だけが警察に捕まりますが主人公が共犯であることを秘密にするので、表沙汰になることなく済むのですが、昨今の日本の風潮だと、サクセスストーリーの裏で主人公の過去の犯罪が隠蔽されるという終わり方はどうなの?と問題になりそう。インドでは、そんなに引っかかる人はいないのでしょうか。
しかもこの作品、実話に基づいているので、主人公のモデルとなった実在のラッパーがいます。なので、なおのこと複雑。


公式サイトは、こちら。
http://gullyboy.jp

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