★★★★☆
この作品の存在を初めて知ったのは、映画館でチラシを手に取った時。なんともB級の匂いがプンプンしたのですが、やっぱりこのタイトルは印象に残りました。で、どうも前評判が割といいらしいので、観てみることにしました。
よかったですねえ。言ってしまえば高校生たちの学園モノ。でも恋愛モノとも言えないし、スポーツモノでもないし、熱血教師モノでもなく、いじめや暴力も出てきません。下手をすると、テレビドラマの1話分ほどの事件も起こりません。
ただ単に、桐島くんが部活をやめるという出来事が周りの生徒たちにどんな影響を与えたかを描いただけの作品です。誰が主役ということもないし、明確な結論は出てきません。
でも、それまでの彼らがどんな人物像でどんな人間関係だったか、桐島くんがどんな人で、"桐島事件"が彼らにとってどんな意味があったのか、それをきっかけにそれぞれがどう変わり、人間関係がどう変わったのかが、「そうそう、そういうことってあるよね」という共感とともによく伝わってきます。
手法的には、シーンを時系列とは逆の順序で見せたり、同じシーンを別の観点から何回も見せたりという、私の大好物が使われていています。これによって、「ああ、そういうことだったの!」という納得感も増すし、女子生徒が接する相手によって顔を使い分ける様も表現しています。
群像劇なので登場人物は多く、何となく神木隆之介くん演じる前田が主人公っぽいのですが、最後は何かを決意したっぽい菊池のカットで終わるので、私としては彼の方が物語全体の主軸だったような印象です。
キャストは、有名な人から私は全然知らない人まで様々。でもみんないい演技しています。オタクはオタクらしく、熱血スポーツマンは熱血スポーツマンらしく、優等生は優等生らしく、そしてダルダルの無気力系は無気力系らしく…。
自分よりある程度下の世代と話していて「あれ?」と思うことの一つに、知らないクラスメートがいる、ということがあります。
もちろん、全員と同じレベルで仲がいいということはあり得ないとして、一般的なプロフィール、例えば名前とか何部だとか、誰と仲がいいとか成績がいいとか授業でどんな発言をしたとか、そういう情報は同じクラスにいれば嫌でもわかると思います。
私の場合、卒業して何十年も経って、今でも全員のことを覚えているかと言われれば自信がない、というより明らかに忘れていますが、少なくとも在校中、クラスメートに対して「誰、あの人?」という見方をしたことはありません。
この作品も、知らないクラスメートがいることありきで描かれていて、だからこそこういう作品になっているのですが、何かちょっと違和感を覚えなくもありません。
2012年8月18日土曜日
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