2013年8月3日土曜日

『終戦のエンペラー』

★★★☆☆

GHQによる、昭和天皇の戦争責任の有無についての調査をテーマにした作品。プロデューサーは日本人だし日本人俳優もたくさん登場するけど、一応ハリウッド作品ということになるのかな。

この作品は、どうしても今という時代の日米関係、あるいは日中、日韓関係、天皇制などと結びつけて観てしまうわけで、独立したドラマとして捉えることは難しいです。色々と考えさせられる作品。

GHQは連合国軍の組織ですが、世界のリーダー面をして各地の紛争に首を突っ込みたがるアメリカのイメージそのまま。あのころからアメリカって変わってないんですね。もちろん、太平洋戦争の場合アメリカは日本から宣戦布告されて実際に戦争状態だったので、当事者として深く首を突っ込むのは当然ですが。
ただ、戦争に勝利した国の敗戦国に対する態度としてはとても冷静でまっとうだったとは思います。日本を戦争へと導いた原因を探り、証拠となるデータを探し、裁くべきは裁き、制度を改めるべきは改めるということで、とても大人な対応だったという印象です。

作中にあるように、天皇という極めて不思議な存在とそれに対する国民感情も、結局どれだけ理解できたかはわかりませんが、最大限理解しようと努め、結果的にはうまくコントロールしたようです。
不思議なのは、この日本人の機微をうまく扱ったアメリカが今、イスラム社会とはなかなかいい関係を作れないこと。GHQでは、天皇というよくわからないものはよくわからないまま、白黒つけることを諦めるという、アメリカらしくない結論だったわけですが、対イスラムの場合も、そういう態度の方が反感を買わないような気もしてしまいます。

不思議といえば、全面戦争状態から度重なる空襲や原爆投下を経てGHQ統治に至った日本が、その後アメリカと極めて親密な関係となること。これもまた、日本という国の不思議なところ。
そして、アメリカとはあっさり仲良くなれたのに、中国や韓国とは今も微妙な空気が漂っていること。やはり、ずっと隣同士だと、積年の恨みつらみのレベルが違うのかな。

天皇制の不思議さについては、私自身、GHQと同じように訳がわからないと思います。正倉院の宝物が盗難にもあわず残っていることなど、皇室が連綿と続いてきたことの意義は認めるとして、あのような存在が我々の生活に必要なのかなあ。
自分に影響がないなら、あってもなくてもいいんだけど、私が気になるのは彼らの自由のない生き方が忍びないということ。今の日本に「あなた、皇族になりたいですか?」と聞かれて「はい、喜んで」と答える人はどのくらいいるんだろう?少なくとも私はイヤ。あの家族に生まれた人たちは、そのなりたくない存在以外の生き方を選べないって、それを国が制度としているというのが、どうもしっくりこないのです。
世界には、実質「象徴」の王様が他にもいるんでしょうが、その国の国民、そして本人はどんな気持ちなんでしょうか。

さて、昭和天皇が登場する映画といえば『太陽』というロシア映画がありました。イッセー尾形さんが昭和天皇役で、本物そっくりでした。今回は片岡孝太郎さん。登場シーンはちょっとだけでしたが、こちらも雰囲気はよく似ていました。

この作品、ハリウッドが作った終戦時の日本を舞台にした作品として、日本では大規模に上映されていますが、アメリカでは話題になっているのでしょうか?英語のタイトルは『EMPEROR』なので、そのものズバリですが、うーん、多くのアメリカ人は関心持たなそうですね(^^;)。

公式サイトは、こちら。
http://www.emperor-movie.jp

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