2016年6月28日火曜日

『帰ってきたヒトラー』

★★★☆☆

どうやってヒトラーが現代によみがえったのかといったSF的考証は特になく、明確な「結末」らしいものもありません。
現代によみがえったヒトラーは、具体的な悪事を働くわけではなく、ドイツを支配するわけでもなく、基本的にはあちこちに出没して色々な人と話をするだけです。

ヒトラー自身は、どこまでも真面目に、どこまでも本気で自分の主張をぶつけるのですが、自分が未来にタイムスリップしたことに気づいてまず最初にやったのは新聞を読み漁ること。つまり、ドイツが戦争に負け、科学技術が進歩して、今がどういう社会情勢なのかをある程度理解したうえでの主張なので、時代錯誤でありつつ現代社会への批判も含まれていて、意外と説得力があったりします。

時々画面内の人物に目線が入っていたりモザイクがかかっていたりするので何となく気づきましたが、公式サイトを見ると、人が大勢いる街中でゲリラ的に撮影したりネオナチのアジトに(ヒトラーとして)突撃インタビュー(?)するなど、ドキュメンタリーのような撮り方もしていたようです。なので、撮影許可をもらっていない人は、個人が特定できないようの画像処理したというわけです。

ヒトラー(そっくりの人物)を目の当たりにした人の中には、露骨に嫌悪感を表す人もいますが、ものまね芸人だと思ってツーショットの自撮り撮影する人もたくさんいます。
ドイツは、日本と比べると第二次大戦の過ちをきちんと反省している印象でしたが、70年も経てばヒトラーも街で見かけた有名人と同じ扱いになるんですね。まあそんなもんだよなあと思いつつ、意外と考えさせられるシーンでもあります。

コメディとして観た場合、ドイツ語から日本語への翻訳の段階でかなり面白さが目減りしていたり、ヒトラーについてある程度知識がないと何が面白いのかわからなかったりで、私的にはさほど笑えませんでした。でも映画館の中には2人ほど爆笑していた人もいたので、わかる人にはわかる笑いなのだと思います。あの2人はドイツ人だったのかな。

星は3つにしましたが、3と4の間くらいかな。私にもっと知識があり、ドイツの現状を知っていたら、さらに高い評価になったのではないかと思います。

公式サイトは、こちら。
http://gaga.ne.jp/hitlerisback/





2016年6月23日木曜日

『デッドプール』

★★★☆☆

予告編を観ても特に興味が湧かなかったのですが、意外と評価が高いようなので、勢いで観に行ってしまいました。

ひとことで言うと、あの超お下品なクマのぬいぐるみ『テッド』が超人的なパワーを手に入れた感じでしょうか。お下品さのノリがほぼ一緒なのは、アメリカで下品といえばコレ、という典型なのかな。私的にはややうんざり(^^;)。

で、その下品さを取り除いてしまうと、好きな女性を守ることと自分自身の復讐のため敵と戦う超人の話で、ストーリーは極めてシンプル。アクションシーンは見応えがありますが、主人公に戦略があるわけではなく衝動に任せているので、どちらかというと私の好みではありません。

時間軸を行ったり来たりする構成は珍しく凝っていました。

結論としては、ああだこうだと理屈をこねる映画ではなく、派手なアクションとテンポのよさに乗っかって楽しむエンターテインメント作品ということでしょう。


公式サイトは、こちら。
http://www.foxmovies-jp.com/deadpool/





2016年6月18日土曜日

『64 -ロクヨン- 後編』

★★★★☆

前編と比べると、実際に事件が起こり展開があって結末へとたどり着くので、面白かったと思います。
ただ、事件自体はそんなに複雑ではないので、凝った謎解きを楽しむタイプの作品ではないと思います。

見応えという点では、超豪華俳優陣の演技合戦ということになるのでしょうか。
佐藤浩市演じる主人公が所属する県警広報室と刑事部、警務部という警察内部それぞれの対立、広報室と記者クラブの対立、昭和64年の事件の被害者と当時の捜査関係者、平成14年現在の事件の関係者と、相当複雑な関係性の中で、やたらとあちこちで感情のぶつかり合いがあり、力のこもった演技が見られます。
そのドロドロした雰囲気は、いかにも邦画という感じがしました。

対立軸がいろいろあるので、「あれ、このエピソードは、どの対立軸につながっているんだっけ?」「このエピソードは、昭和64年の事件とは関係あるんだっけ?」みたいな混乱もありました。
結局カタがついていない部分もあるような気がしているのですが…。

エンディングで流れる小田和正さんの主題歌は、本編の骨太感とは異質の清らかさで、まだ緊張感が続く前編より、一応ストーリーが収束した後編にこそふさわしいと思いました。
前編のときに気になった、BメロのボーカルメロディがCDと違っている点ですが、後編も同じでした。

公式サイトは、こちら。
http://64-movie.jp







2016年6月14日火曜日

『マネー・モンスター』

★★★★☆

面白かったと思います。

金融取引の難しいカラクリとかを聞かされるのかと思っていたのですが、まあそういう部分もないわけではありませんでしたが、意外とシンプルな人質事件の話だったかなあ、という印象。

でも、刻一刻と状況が変わり、徐々にいろいろな情報が集まってくる感じとかはとても緊迫感があって、観ている側も肩に力が入りました。
上映時間も最近の作品としてはちょっと短めですが、無理やり引き伸ばしてダレるよりはいいと思います。

ジョージ・クルーニー演じる番組司会者は人質となるわけですが、結局最後までお調子者っぽく、場の空気が読めない人で、見ていて同情する気になれません。…という役を彼はとても上手く演じています(^^;)。
でも、せっかくジョディ・フォスターが裏方に回り、これだけよくできた脚本なので、もっと無名の役者さんを使ってあげてもよかった気がします。

人質事件をテレビで見ている大衆やネットの反応はとても冷めていて、時には茶化したりする描写もあり、なかなか恐ろしいものがありました。
事件が起こった背景には、アメリカ社会の経済格差などがありますが、本作の展開を見る限り、そのものズバリを見せたいわけではなさそうでした。でも、今の時代を感じさせる作品だとは思います。

公式サイトは、こちら。
http://www.moneymonster.jp/splash/