2011年1月22日土曜日

『ソーシャル・ネットワーク』

★★★☆☆

 うーん。そうですねえ、まあとりあえず面白いとは思いましたが…。

 Facebookそのものを描くのではなく、人間ドラマになっているのは事実ですが、それでも私には、Facebook人気に便乗して作られた作品のように思えました。

 変化の早いIT業界で、Facebookが本当に成功したと言えるかどうかを判断するのはまだ時期尚早だと思います。そしてマーク・ザッカーバーグはまだ26歳。普通に考えればこれからの人生の方がはるかに長いわけです。サービスとしても、マークの人生としても、結果が出たとは言えないこのタイミングで、彼の半生を描くことにどれだけの意味があるのかよくわかりません。

 しかも、内容はずいぶん脚色が加えられていて、事実とは異なるらしいです。結果として、私がうけた印象は、どちらかというとネガティブなものでした。

 映画の中のマークはものすごく偏屈で、本人に悪気はないのかもしれませんが、ある意味デリカシーに欠けるというか、非常識というか、周りに気遣いができないタイプ。私の目には、彼女に嫌われたり親友から訴訟を起こされたりしても当然に思え、決して彼に対して同情や共感の気持ちは湧いてきません。

 彼がFacebookを作ったのも、利用者に楽しんでもらえるのが喜びというよりは、利用者の求めるサービスを提供して上手くやった自分を喜んでいるようなニュアンスでした。Facebookというサービスの印象もちょっと悪くなったかも。そんな映画を、このタイミングでよく作ったなあ。
 私もFacebookのアカウントを持っているのですが、ユーザビリティ的には気になるところが色々とあって、それと映画のネガティブな印象を勝手に結びつけてしまいます。

 登場人物の早口のセリフ。予告編を見て「早いな」とは思っていましたが、英語圏の人にとってはどうなんだろう。私は基本的に字幕頼りなので早口でも関係ないのですが(^^;)、一部、英語が聞き取れたところで、字幕が端折られていることもわかりました。あのセリフを全部字幕にしたら読みきれないのは当然ですが、どれだけ情報量が減った(=内容が薄くなった)か、ちょっと気になるところ。

 映画館は、割とお客さんが入っていたと思います。ゴールデングローブ賞をとった影響もあったでしょう。普段映画を見ない人はエンドロールで席を立つ割り合いが多いのですが、今回も多かった気がします。

 ところで、この映画はPG12指定らしいのですが、どこがよろしくなかったんだろう。もしかしたらパーティでマリファナか何か吸っている場面があるからかな。しかし、仮にマリファナがなかったとしても、アメリカの若者のあのパーティの雰囲気は、個人的には全然受け付けないなあ。アメリカに生まれなくてよかった(^^;)。







2011年1月16日日曜日

『森崎書店の日々』

★★★★☆

 いつも行く映画館で、超大作ではない作品を2週間程度の短期間だけ上映することがたまにあって、この作品は予告編を観て気になっていました。

 残念ながらレイトショーの時間帯にはやっていないので、やむなく日曜日の昼間に1800円払って観に行きました。思いのほかお客さんが多くてびっくり。こういう渋い作品を観るなんて、きっと映画好きの人たちなんでしょう。

 失恋して会社を辞めた女の子が、おじさんが経営する神保町の古本屋で住み込みで働く話で、小さなスケール感のほっこり癒し系の作品。私も昔は古本店街ときどき行ってたのですが、あの古本屋独特の匂いとか、商売っけがガツガツ前面に出てこない雰囲気とか思い出して、また行ってみたくなりました。

 主人公演じる菊池亜希子さん。申し訳ないけど、見たことも聞いたこともない女優さんでした。ふと長澤まさみっぽく見えたり本上まなみっぽく見えたりする人で、整った顔立ちだけどちょい地味めで、古本屋が妙によく似合っていました。演技も、うまいんだか下手なんだかちょっとよくわからない…。もともとは雑誌のモデルさんのようです。まだ女優としては原石なのかな。今後に期待。

 おじさん役の内藤剛志さんの、何だかとても普通のおじさんっぷりはよかったと思います。主人公の女の子の、役柄上の空虚な気持ちと、若干フワフワした演技を、全部このおじさんが支えていた感じ。この手の映画は、登場人物が若者たちだけだと、頑張るにしても諦めるにしても全てが若気の至りっぽくなってしまうのですが、この作品は内藤さんはじめ大人たちがちらほらといい存在感を放っているので、古本の街とも相まって、いい意味で枯れた感じになっていたと思います。


『リミット』

★★★★☆

 ちょっと興味があった作品。いつも行く映画館で、超大作ではない作品を2週間程度の短期間だけ上映することがたまにあって、運良く観ることができました。

 画面に一度も『LIMIT』と出てこないのであとで調べたら、原題は『BURIED』です。つまり埋められちゃった、ということ。

 イラクで物資輸送トラックの運転手をしていたアメリカ人が突然襲われ、木の箱(要は棺おけ)に入れられ埋められてしまったところから話が始まります。その箱の中には、ライターとか携帯電話とか、ごくわずかなものがあって、でも徐々に酸素がなくなっていきます。さあ彼は助かるんだろうか?というストーリー。

 いわゆるワン・シチュエーションものというのかな、作品の舞台は全てその箱の中。ということは、登場人物も事実上閉じ込められたアメリカ人ひとりだけ。携帯電話でやり取りする何人かの相手は声だけの出演。映像として登場するのは、携帯電話で送られてくる映像の中の人物のみ。…とても安上がりに作られています(^^;)。

 観ている最中は、最初から最後まで飽きることなく、ハラハラドキドキすることができました。あの状況で飽きさせないのは、やっぱり演出がうまいのでしょう。まあ、いきなり箱の中から始まるので、彼の素性やなぜ箱の中にいるのかということなど謎だらけ。それが徐々にわかっていくだけでもそれなりの時間を費やすし、後半は彼が助かるのかどうか?ということでドキドキするのですが、何しろ箱の中なので、次に何が起こるのか観客にも予想ができません。なるほど、うまく出来ています。

 ただ、後で冷静に考えると、基本的には携帯電話でやり取りする会話が話の展開を支えている作品なんですね。身動きの取れない人が携帯電話で救援を呼ぶのであれば、誘拐された人でも遭難した人でもいいわけで、イラクであることや箱に入れられて埋められていることは、実はあまり作品の肝ではないような感じもします。もちろん、この作品ではイラクで起こりそうなことが取り入れられて入るのですが、中東情勢云々の社会的なメッセージがあるような感じでもないし…。まあその辺がちょっと不明瞭な感じがしました。

 まあでも、一度観てみる価値はあると思います。





2011年1月10日月曜日

『相棒 劇場版II』

★★★★☆

相棒シリーズが人気なのも知っていますし、劇場版の前作も見ましたが、なぜかテレビシリーズはほとんど見ていません。

で、今回の劇場版IIですが、なかなかよかったと思います。少なくとも踊る3よりもよかったなあ。踊るファンの私としてはちょっと残念ですが(^^;)。そして、劇場版前作よりも私は好きです。

シリーズに対する思い入れも特になく、キャストも特に気になる人がいないので、たぶん純粋にストーリーが面白かったんだと思います。

世界観がかなり踊るシリーズとダブっているので、踊るシリーズとの共通点や差を意識して見てしまいましたが、一番戸惑ったのは、一部共通の役者さんが出演していること。これは本当に不思議な感覚でした。









2011年1月8日土曜日

『UNSTOPPABLE』

★★★★★

 2011年最初に観た映画です。

 最近は、圧倒的に邦画率が高い私の映画鑑賞。でもこの作品は、予告編を見て観に行こうと決めていました。

 話は単純明快。無人の暴走列車を何とかして止めなくちゃ、というもの(プラスちょっとだけ家族のストーリー)。だから、この作品の観客のあるべき姿は、ハラハラドキドキすること。これに尽きます。
 で、実際私は、ほとんど最初から最後までハラハラドキドキできたので、大変満足できました。ちゃんとハラハラドキドキできて、しかもそれが飽きることなく継続できたので、それはやはり、演出がうまいということなのでしょう。

 とはいえ、多少「あれれ?!」と思ったところはありました。列車と止めるために、関係者がいくつかの作戦を試みるのですが、「何だよ。それを最初にやればいいのに」みたいなヤツですね。まあ、実話を元にしているそうなので、それが事実だったのかもしれませんが…。

 止められない乗り物といえば『スピード』をすぐに連想します。大きなくくりでは、同類でしょうが、『UNSTOPPABLE』の方が、よりシンプルだと思います。





2011年1月2日日曜日

若洲海浜公園

毎年恒例、新春小旅行。今年は、アテがありました。葛西臨海公園以外に初日の出を見る良いスポットがないかと地図を見ていたら、新木場の南に、東側が海に面した公園がありました。結局、初日の出は見ませんでしたが、正月二日、ここに行ってみることにしました。もちろん、エコロジカルでエコノミカルに自転車で。

公園に向かう道はこんな感じ。工事中ということもあり、また海岸沿いに巨大建造物が多いので、何だかゴチャゴチャな印象です。


公園は、こんな感じに見えます。風車や怪しげなデザインの展望台があることがわかります。期待と不安(^^;)。


そして、目的地、若洲海浜公園に到着。ゴルフ場やキャンプ場があるようです。


公園の敷地は南北に長くて、東側はひたすら直線コースが続きます。向こう側の端が見えないほど。ここを自転車で走るのは快適。


公園の北端から見える景色はこんな感じ。荒川の向こうに葛西臨海公園、さらにその向こうに東京ディズニーリゾートが見えます。この展望は葛西臨海公園よりもずっといいです。


こんなオブジェもありました(^^;)。


葛西臨海公園からも見えていた、建築中の橋。まさかここにあるとは思っていませんでした。


建築中の橋。別アングル。


公園のすぐそばにある東京ヘリポート。地図を見たときに気になっていたのですが、こんなに近くから見られるとは。何回か、ヘリの離着陸を見ることができました。


ヘリコプターの離着陸の様子。



そして、東京メトロの車庫がこんなところに。行ってみるまで知りませんでした。


若洲海浜公園は、広いし、オーシャンビューがすばらしいです。意外と人は少なめ。立地がちょっと悪いのか?整備状態も、葛西臨海公園と比べるとよくないかも。でも、人が少ないのは私にとってはむしろいいことです。それよりも、やはり家から遠いことが一番のデメリット。また行きたいとは思うけど、かなり気合を入れないと…。

2010年12月31日金曜日

『最後の忠臣蔵』

★★★★☆

 2010年の最後に『最後の忠臣蔵』を観てきました。

 私は、赤穂浪士の話は、何となくしか知りません。それでこの映画を見ても充分理解できないのではないかと心配でしたが、私が知っている知識だけで充分楽しめました。

 “忠臣蔵”だけあって武士の忠義の話ですが、その徹底ぶりが尋常ではありません。役所広司演じる孫左衛門は、苦悩や誘惑に直面しても、常に忠義を貫きます。それも、彼の主君はすでにこの世にいないのに。彼の穏やかな口調、抑えた演技から、その忠義があらがいがたいものという以上に、彼にとって当たり前のものだということを感じさせます。
 どこまでもそんな調子かと思ったら、クライマックスに、彼の苦労が報われたと感じさせるシーンがあって、予想以上に感動してしまいました。我ながらニッポンジンだなあ(^^;)。

 役所広司、佐藤浩市の演技は、毎度おなじみ、安心感があります。役所広司は『十三人の刺客』でも武士の役でしたが、どちらかと言えば『最後の忠臣蔵』の方が、彼らしい役のような気がします。
 桜庭ななみは、かなり頑張っていたと思います。彼女、CMぐらいしか見たことがなくて、特に関心もなかったのですが、意外と魅力的でした。安田成美の芝居は久しぶりに見ましたが、もうベテランの風格(^^;)。

 シネコンでは、どの劇場で上映するか、どんなスケジュールで上映するかを、客の入りを見ながら判断しているような気がします。この作品は、あまりお客さんが入っていないのか、小さい劇場で上映回数も少なめ。今日も、私を含めて5人ぐらいしか観客がいなかった様子でしたが、いやいや、なかなか味わい深い作品だと思いました。

 というわけで、2010年に映画館で観た映画をあらためて数えてみたところ全27本。これでも、月に2回以上観ている計算になります。自分のペースでは、これが限界でしょうね。
 来年はどうなることやら。







2010年12月23日木曜日

『TRON LEGACY』

★★★☆☆

 久しぶりに見た、ガッツリハリウッドSF作品。視覚的には、乗り物、建物、コスチューム、何もかもが、これぞSFな感じのデザイン。自分が学生のころ、未来の乗り物をデザインしなさいと言われたら、こんなモノをイメージしただろうという造形で、古典的な未来(なんか逆説的 ^^;)。でもそれは、わかりやすいカッコ良さということでもあると思います。

 ただ、ストーリーは、大筋はわかったのですが、トロンの世界観で使われる用語が色々とあって、唐突にその言葉が出てくると「あれ、何のことだっけ?」と、戸惑うことがしばしばありました。

 3D作品ですが、それほど効果的ではなかったかも。

 ところで、オリジナルの『TRON』のことはリアルタイムで知っていました。ディズニーが作った本格的なCGを使った作品だというので見たいと思ったものの、結局見ませんでした。当時、ディズニーといえば手書きのフルアニメーションで、気持ち悪いくらいヌメヌメと動く印象だったので、CGという無機質な表現と結びつかず、「なぜディズニーがこんなことを?」と疑問に思ったものです。







2010年12月12日日曜日

『武士の家計簿』

★★★☆☆

 原作も同様なのですが、タイトルに“家計簿”とついている割に、ストーリー全体から見ると家計簿が重要な感じはしません。むしろ『そろばん侍』とかの方が、内容にマッチしていると思います。

 ストーリーは、貧乏だけど、一生懸命働いて、倹約して、子どもの教育に熱心な、ある下級武士一家のホームドラマ。
 割と淡々としていて、ちょっとおかしくて、ほのぼのした作品。

 主演の堺雅人は、最近いろいろな作品に引っ張りだこで「またか」という印象はあるのですが、この作品の役は彼にぴったりハマっていると思います。





2010年12月4日土曜日

『SPACE BATTLESHIP ヤマト』

★★★☆☆

 私は、オリジナルの『宇宙戦艦ヤマト』が本当に大好きだったので、特に最初のテレビシリーズから『さらば宇宙戦艦ヤマト -愛の戦士たち-』に関しては、各話のあらすじはもちろん、部分的にはセリフや芝居の間、BGMのタイミングまで覚えていたりします。そういう人間が“実写版”と称する作品を観るとどうなるかというと…、どう評価していいのか全く判断できませんでした。

 まず、とにかくオリジナルとの共通点と相違点にたくさん気づいてしまいます。
 ヤマトのサイズの設定が違うこと、ヤマトクルーの所属や性別の設定が違うこと、何人かオリジナルの声優さんが登場していること、ガミラスの正体がオリジナルと違うこと、波動砲の発射プロセスがオリジナルとほとんど同じこと、…枚挙にいとまがありません。
 作品鑑賞というより間違い探しのようで、だから評価不能なのです。

 断片的に、気がついたことをいくつか。

 全体として、あまり戦いに明け暮れている感じがしませんでした。たぶん、ガミラスの正体も、地球攻撃の目的も、基地がどこにあるかもわかっていないという設定なので、突然何の前触れもなく敵が現れて、圧倒的な強さで攻撃されて、ヤマト側は結局波動砲で決着をつけるかワープで逃げるしかパターンがなかったからだと思います。まあ、オリジナルのように、何十発くらっても沈まないのもリアリティがないのですが…。

 イスカンダルまでの航海が、あまり長く感じませんでした。作品の中では、結局行って帰ってくるまでにどれだけの時間がかかったのか明らかにされませんでしたから、本当に短期間だったと言われればそれまでなのですが。地球出発前と地球近辺に戻ってきてからのエピソードもあるのでやむを得ないとは思うものの、意外とあっさりした旅でした。オリジナルの映画版もこんなもんだったかなあ…?

 地球との交信可能距離を越える前に、全乗組員に個人的な通信を許可するエピソードは、私の記憶が合っていれば、オリジナルTV版全26話の中で2話しかない、ガミラスとの接触が全くない回だったはずです(ちなみに、もう1話は、イスカンダル滞在中)。子供のころ、この回もそれなりに面白く見たのですが、戦艦の物語で戦闘の要素がないというのは不思議な感じがしました。今思うと、人間ドラマとして重要な回だったのだと思います。実写版にこのエピソードを盛りこんであるのは「やるじゃん」という感じ。ただ、あそこまでするなら、沖田と古代が地球に別れを告げるシーンもあってよかったかも。

 相原役のマイコさんは、意外とよかったですね。オリジナルの相原は通信士で男性。彼が重要な役割をするエピソードがいくつかあるものの、基本的には地味な脇役。実写版で設定を女性に変えても、存在感は地味なままなんだろうと思っていました。実写版の相原は、役割としてはオリジナルの太田と森雪を合わせたような感じ。戦闘が始まるときは、まず最初に彼女が敵を発見するので、ストーリー展開にあまり影響はしないものの、意外とセリフも多いし存在感もありました。

 エンドロールを見ていたら「原作 西崎義展」とありました。今回の映画が公開される少し前に西崎氏は亡くなっているのですが、オフィシャルWebサイトでも(テレビで見る限り)舞台挨拶でも、特にこれについてのコメントはないようですね。そして、松本零士氏にいたっては、一文字も見当たりませんでした。やはりヤマトの原作者について触れるのは、タブーということなのでしょうか。