2012年5月13日日曜日

『ロボット』

★★★★☆

SFアクションもののインド映画。

私が初めてインド映画を観たのは『ムトゥ 踊るマハラジャ』という作品で、調べてみると日本での公開は1998年。それ以前から、タモリがインド映画はすごいすごいと言っていたのは知っていたのですが、本当にすごかった。ぶっ飛びました。
当時のレベルとして、画像は汚いし音も悪いのですが、ストーリーの展開はハチャメチャだし、突然歌って踊りだすし、アクションはド派手だし、音楽もすごいし、とにかく面白いのです。まあ、社会的メッセージとか、人間の深い心理描写とか、そういった高級な芸術っぽさはカケラもなく、悪く言えば薄っぺらで超世俗的エンターテインメントですが、それでも惹きつけられるものがありました。

それ以来、映画館やDVDで数本観たのですが、映画館で上映される作品がなくなり(私がしらなかっただけかもしれませんが…)しばらく縁がなくなっていました。何年か前に『スラムドッグ・ミリオネア』という作品がありましたが、あれはインドを舞台にインド人俳優が出ているだけで、インド映画、いわゆるマサラ・ムービーとは別物だと私は思っています。久しぶりに映画館で上映されるインド映画ということで『ロボット』は非常に楽しみでした。

主役は『ムトゥ 踊るマハラジャ』と同じラジニカーント。この人はインドではスーパースターで、彼が出る作品は最初に、映画の配給会社のロゴと同じように「SUPER STAR RAJINI」とというロゴが出ます。『ムトゥ〜』のときはかなりチャチなアニメーションだったのですが、『ロボット』ではCGの立体文字がグルングルン回っていました。すごい進歩!『ムトゥ〜』のときすでにお腹が出始めたおじさんだったので、今やおじいさんといっていい年齢じゃないかと思うのですが、あのころの印象と全然変わりませんでした。お腹の出っ張り具合も同じくらい。なぜこの人がスーパースターなのか理解に苦しむ感じも以前と同じ(^^;)。

ストーリーは、至ってシンプル。これに普通の邦画、あるいはハリウッド的な演出をしても成立しないであろうレベル。ところが、インド映画のぶっ飛び演出の下では筋書きの方が付け足しみたいなものなのです。すごいです。ハチャメチャです。SFX技術はハリウッド製だそうですが「もしかしてこれって実写?」と思わせる気はさらさらないようです。この潔さがマサラ・ムービー。

音楽はA.R.ラフマーンという人で、『ムトゥ〜』、『スラムドッグ〜』と同じ。『ムトゥ〜』では、インドの民族音楽っぽいのにテクノっぽい、不思議な作品が印象的でCDまで買ってしまいました。『ロボット』でも、その延長上の作品であることは感じられましたが、ちょっとインドの郷土色が弱いかなあ。

インド映画といえばダンスシーン。ダンスシーンだけ監督が違うほど、作る側も力を入れているらしいのですが、『ロボット』では少なめ。インド映画も変わってきたのかと思ったら、実は日本上映版は、オリジナルから大幅にカットされているのだそうです。
インド映画は上映時間が長いのが普通で、『ロボット』の場合、オリジナルは177分。ところが日本版は139分だそうです。うーむ、これは許しがたいなあ。オフィシャルサイトでは、オリジナル版を上映したいらしく、賛同者を募っています。

http://robot-movie.com/

インドといえば多言語国家で、インド人同士でも地域が違うと言葉が通じないとか。ラジニカーントはタミル語映画にたくさん出ている人ですが、『ロボット』では、聞いているとセリフにはかなり英語が使われているようです。実際、インド国内でもあんな感じなんでしょうか。

『ムトゥ〜』は、インドの割と田舎を舞台にした作品でした。当時からムンバイなどの都会を舞台にした作品もありましたが、『ロボット』も舞台は都会。登場人物の服装などもほとんど西欧と変わらない雰囲気です。それが今のインドの実態なのでしょうが、もう少し伝統的なインドの風景、インド人の生活を見せて欲しい気もします。



【2012.06.10加筆】
177分の完全版を2週間の期間限定上映ということで、観てきました。短縮版でカットされたシーンがどこか、結構わかりました。砂漠とマチュピチュでのダンスシーンが思い切りカットされていました。

インド映画は、登場人物の感情が高まったところで、それまでのストーリー展開と無関係のダンスシーンが入るのがお約束。そもそもお話の舞台はインドなのに、わざわざダンスシーンのためにマチュピチュまでロケに行くのですから、作る側としてはものすごく気合が入っているのです。

ストーリーと関係ないのでカットしやすいのかもしれませんが、あれではインド映画としては魂を抜かれた感があります。

ああ、完全版が観られて一安心です(^^)。

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