2019年6月29日土曜日

『僕はイエス様が嫌い』


★★★☆☆

いつだったか、若い日本人監督作品で海外の映画祭で評価されたと聞いて興味が湧いたのですが、たまたま近くの映画館で期間限定で上映することを知って観てみました。

小学5年の2学期が終わる少し前にミッション系の学校に転校してきた男の子の話です。

私自身も、中学高校はミッション系でした。キリスト教を感じさせる学校内イベントは多くはありませんでしたが、それでも入学式、卒業式、始業式、終業式などのときは校長(ブラザー)によるお祈りなどがあり、全校生徒で「アーメン」と言うことになっていました。ただ、自分はキリスト教徒ではないのに、形だけ真似て「アーメン」と言うことがかえって失礼な気がして、実は在校中の後半はほとんど黙っていました。

 校長以外にもブラザーの先生は何人もいて、奈良京都の修学旅行に同行したときは、彼らも神社仏閣を参拝していたので、まあ大したことではないのかもしれませんが、信仰を持たない者が宗教の世界に触れたときの戸惑いが、自分の体験として多少なりともあるので、この映画ではそれをどのように描いているのか気になったのです。

映画は、間違いなく男の子がキリスト教に触れた戸惑いが一つのテーマとなっていますが、とても口数が少ない作品なのでそれを直接セリフでしゃべらせるような表現はほとんどありません。
でも、彼がキリスト教のお祈りに対して、不思議がったり、興味を持ったり、期待したり、がっかりしたりしていることが感じられます。その後彼が卒業まであの小学校に通って、お祈りの時間をどのように過ごしたのかを想像すると、ちょっと切ないです。

主人公の男の子やその友達の演技はとてもよかったと思います。特に2人で人生ゲームをやるシーンは全部脚本通りなのかアドリブなのか、普通の小学生のやり取りをドキュメンタリーとして撮影したようでした。

舞台となる小学校の木造校舎や別荘の魅力的な建物や、雪の上を歩く白いニワトリのシーンなど、絵として「お!」と思う部分も多々ありました。

男の子が手を合わせると、彼にだけ小さなキリストが見えるという設定は、面白いけど奇をてらいすぎのような気もしました。

タイトルからわかるとおり、主役の男の子目線ではイエスを否定する内容ですが、これがヨーロッパの映画祭で賞をとったというのも興味深いところです。受賞理由が気になります。ちなみに英題は『JESUS』。

宗教に対する純粋な疑問を描くという意味では、インド映画の『PK』を思い出しましたが、あちらは主人公が宇宙人のコメディで、まったく趣が異なります。

公式サイトは、こちら。
https://jesus-movie.com

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