2013年7月13日土曜日

会社設立登記 その4 定款の作成

■定款とは
会社の設立は、法務局という役所に申請するのですが、それ以前に行う一大イベントが定款の作成です。

定款というのは、「会社の憲法」などと言われるそうですが、要は会社の概要を内外に対して宣言したものです。憲法なので、詳細な情報というよりは基本的かつ普遍性の高い情報を記載することになります。

定款の作者は発起人、つまり会社設立の"言い出しっぺ"です。発起人は、会社設立当初は必ず株主にならなければいけないそうですが、取締役や社長という立場で経営に携わる必要はありません。ちなみに私の場合はひとり会社なので、発起人も株主も代表取締役も全部私です。

定款の書き方ですが、日本公証人連合法務省のWebサイト、あるいは起業の手引書などを見ればサンプルが入手できるので、作業自体は意外と難しくないと思います。

■定款に記載する内容
定款に記載する内容ですが、大きく以下の種類があります。

絶対的記載事項
必ず記載しないといけないもの。以下の5つ。

  • 商号(会社名)
  • 目的(どんな事業を行う可能性があるか)
  • 本店所在地
  • 出資額
  • 発起人の氏名及び住所

相対的記載事項
記載しなくてもいいが記載しないとその効力が生じないもの。例えば自社の株式を勝手に譲渡してはいけないという「株式譲渡制限」など。

任意的記載事項
記載が自由なもの。例えば事業年度や定時株主総会の開催時期など。

私の場合、起業の手引書のサンプルに手を加える形で定款を作成しました。結果的に、表紙を含めてA4で5ページ、30条からなる定款となりました。内容的には、商号や目的や所在地の他、株式に関すること、株主総会に関すること、取締役に関すること、事業年度や株主への配当に関することなどが含まれています。

ここまで読んでお気づきかもしれませんが、定款は会社の概要を示すものとはいっても、「お客様を大切にします」的な企業理念や「年商1億円を目指します」といった営業目標もなければ、社員数や部門名や取扱商品などの情報もありません。会社が行うビジネスの内容に関する条項は「目的」しかありません。
つまり、登記を受け付ける役所側から見た関心事は、その会社の株と株主と取締役に関する約束ごとなのでしょう。

■事前に決めておくこと
定款を作る作業は、サンプルを入試してしまえば後はちょっと編集するだけですが、それでも事前に自分の意志を持って決めておかなければいけないことがあります。

機関設計:
私の場合、自分一人だけの株式会社を作ったわけですが、取締役が複数いる場合、監査役がいて取締役会を設置する場合など、経営層の組織構造の違いは、登記手続きに大きく影響します。定款の記載内容もことなり、提供されているサンプルも、組織構造の違いで分けてあることが多いようです。
さらに言えば、そもそも株式会社にするか合同会社などその他の会社組織にするか、会社は作らず個人事業主として仕事をするかといった基本的なことは充分検討する必要がありますね。

商号:
商号すなわち会社名の付け方にはいくつかルールがありますが、それほど難しいものではないと思います。類似商号についても、今では同一住所で同一商号でなければOKというルールになっているので、よほど特殊な場合を除いて問題とはならないと思います。
ちなみに、法務局に行くと管轄地域の商号がチェックできます。私の行った法務局では検索用のパソコンが置いてあり、自分でチェックするスタイルでした。

目的:
会社の事業目的については、提供されている定款サンプルはあまり参考にならないので、自分で考えなければいけない部分かもしれません。定款における目的は「明確性」「具体性」「営利性」「適法性」を全て満たしている必要があります。記述上特に悩むのは「明確性」と「具体性」です。

私の場合、事例集を参考にしました。実際に登記済の会社の登記簿を参照することができれば、問題のない目的の記述方法を知ることはできます(ただし有料ですが)。ためしにいくつかの企業のWebサイトを見てみましたが、Webサイトに書かれている事業目的が定款の目的と同じ記述である保証はないので、あまり参考にはならない印象でした。

また、目的の草案(というより、定款全体の草案)ができた段階で法務局に持っていき、問題がないかチェックしてもらいました。電子定款にする場合は、公証人役場でも認証前にチェックしてくれるので、この二段階のチェックによって自分が書いた目的が問題ない記述だと確信できました。

目的はいくつ書いてもいいようです。確実に行うビジネス以外に、将来行う可能性があるものも書いておいた方がいいそうです。
事業の内容によっては、役所への届出、あるいは役所からの許可、認可がないと行えないものがあるので、この点も確認しておく必要があります。

その他:
その他、本店所在地、資本金額、事業年度などを決めます。

また、株式の譲渡制限を設けるかどうかを決めます。株主は会社の経営に大きな影響力を持つので、株式の譲渡が自由にできると見ず知らずの誰かに会社を乗っ取られるリスクが出てきます。そこで、株式の譲渡には株主総会の承認が必要といった制限を設けておいた方が安心なのです。…こう言われると、譲渡制限しますよね、当然。


■電子定款の場合
定款の中身は、紙の定款であろうと電子定款であろうともちろん同じなのですが、唯一差があるのは、発起人の署名押印の部分です。
紙の定款の場合、
以上、株式会社◯◯◯◯を設立するため、この定款を作成し、発起人が次に記名押印する。」
と書くところを、
電子定款の場合は、
以上、株式会社◯◯◯◯を設立するため、電磁的記録であるこの定款を作成し、発起人が次に電子署名する。」
と書き換えておく必要があり、本物の印鑑を押す代わりに電子署名を付与することになります。


0 件のコメント:

コメントを投稿