2020年1月4日土曜日

『カツベン!』

★★★☆☆

私は、周防正行監督の大ファンというわけでも、彼の作品の特徴を熟知しているわけでもありませんが、なぜか今回の作品は、周防作品っぽくないような印象を持ちました。

作品の舞台が大正時代で、時代劇の要素が入っているからかもしれません。
また、主人公が過去に犯罪に手を染めており、昔の仲間や警察に追われているという設定が、ほのぼのとしてちょっと緩い笑いを提供する印象のある周防作品とは色合いが違うと感じたのかもしれません。

主人公が子供のころ、駄菓子屋からキャラメルを万引きしたり、映画館のトイレの窓から中に侵入してタダで映画を観るシーンがあり、ふと、こういう描写が教育上よくないとクレームを受けたりするのだろうかと思ってしまいました。特にこの作品の場合、こういった行為にきちんと罰が与えられたという展開ではなく、どちらかというと犯罪を犯しておきながらのうのうと生きている、というトーンなので。
私は、クリエイターが自由に創作し、自由に表現できることは極めて重要だと思っている方だと思うのですが、そんな自分が観客の立場として映画を観たときにコンプライアンスが頭にチラついてしまったことがちょっとショックでした。こうやって、社会が醸し出す空気が、どんどん作り手の表現を不自由なものにしていくのでしょう。残念なことです。

活動弁士という職業がかつて存在していたことは知識としては知っていましたが、それが具体的にどのようなものだったのか詳しくは知りませんでした。本作の中では、かなり細かく活動弁士の仕事の様子がわかるので、非常に面白かったです。

作中で、ベテラン活動弁士が、映画という完成された作品に弁士が説明を加えることで壊してしまうことに疑問を持つというエピソードが描かれていましたが、このあたりを軸にして活動弁士の功罪をストーリーに描けば、警察に追われるという設定がなくても充分面白い作品になったような気もします。

そういえば、上映されるサイレント映画の中に、上白石萌音さんや草刈民代さんなどがカメオ出演(?)されていました。

公式サイトは、こちら。
https://www.katsuben.jp

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