2018年12月1日土曜日

『ムトゥ 踊るマハラジャ』

★★★★☆

20年ほど前、初めて観たインド映画が『ムトゥ 踊るマハラジャ』で、ただただカルチャー・ショックでした。
それ以前から、タモリさんが「インド映画はやたらと長い」「突然ダンスシーンが始まる」などとテレビで話しているのを聞いたことがあったのですが『ムトゥ〜』を観て「ああ、こういうことだったのか」と納得しました。

『ムトゥ〜』はコメディ色が強いので笑いの要素は多いのですが、それ以外にも映像や編集の荒っぽさや、ギャグのくだらなさ、ストーリーの強引さ、演技の臭さなどに失笑してしまうこともありました。音楽も強烈で、インドの民俗音楽とテクノを融合したような、他では聴いたことがないようなものでした。一体どこまでが本気なのか、どこまでが狙いなのか、まったくわからない作品でした。

それ以来、インド映画には何かとんでもないパワーがあるように思えて、日本で上映される作品はなるべく観るようにしてきましたし、『ムトゥ 踊るマハラジャ』はビデオを買い、DVDを買い、CDも買いました。

そんな思い出深い作品が4K&5.1chデジタルリマスター化されたというので、何の躊躇もなく観に行きました。

DVDも長らく観ていなかったので、「ああ、こんな感じだったなあ」と懐かしさを感じましたが、正直言って4K&5.1ch化された効用はほとんど感じませんでした。
画質は、おそらく見比べればきれいになっているのでしょうが、どちらかというと画面の粗さを4Kで忠実に再現した印象でした。音楽は5.1chに分離されたせいか、楽器の音色がCDと少し違うような感じもしました。
そして、このデジタルリマスターによって、この作品の持つパワーが格段にアップしたかというと、特にそんなことはないと思います。逆に言えば、この作品のエネルギー源は画質でも音質でもないということだと思います。
結局、デジタルリマスター化は、最新の映像フォーマットに合わせたという以上の意味はないように思います。

主人公ムトゥと同じ使用人仲間で、テーナッパンという小太りの男が作中に登場するのですが、この人の声が甲高くて、非常に耳障りでした。当時の私は、録音技術がよくないために音が割れているのではないかと思いました。
デジタルリマスター版ではどう聞こえるのか気になっていましたが、結果はやはり耳障りでした(^^;)。まあでも、音が割れているわけではなさそうなので、そんな風に聞こえる声なのでしょう。

あらためて観た『ムトゥ 踊るマハラジャ』は懐かしく、相変わらずの破壊力でしたが、同時にこの20年間のインド映画の進化も感じました。最近のインド映画は、映像、音、ストーリー、演出、演技、どれをとっても非常に洗練されています。それはハリウッド的になったということでもあります。それと比べると『ムトゥ〜』は明らかに野暮ったいと思います。
今のところ、インド映画はハリウッド的要素を取り入れつつもインドらしさを保ってうまく進化している印象ですが、インドらしさを失ってしまうと存在意義が薄れてしまいます。その失ってはいけないインドらしさが『ムトゥ〜』には結実していると思います。

公式サイトは、こちら。
http://www.muthu4k.com

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