2015年2月14日土曜日

『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』

★★★☆☆

もともとは『踊る大捜査線』の本広克行監督が手がけるアニメ作品ということで、最初のTVシリーズ、第2シリーズをざっと観て、結局映画も観てしまいました。

『攻殻機動隊』などにも通じるシリアスな近未来SFもので、設定上の最大のポイントは"シビュラシステム"によって管理された社会。
この社会では、すべての人々の心理傾向が数値化され、犯罪を起こす可能性「犯罪係数」が一定数を越えると、実際に犯罪行為を行う前に取り締まり、処罰することで秩序を維持します。この管理を行うのがシビュラシステムで、物語は取り締まりを実際に行う"刑事"たちの活動を描いています。

おそらく、この設定のもと、いくらでも物語は作れると思うので、今後もどんどん続編は出てくるのかもしれませんが、実は最初のTVシリーズでシビュラシステムの謎、このシステムが抱える矛盾などに結構深く突っ込んでいるので、満を持して公開された劇場版も内容の濃さという点ではそれを上回るものではなく、単なる1エピソードという印象でした。

ところで、この作品の制作は、アニメ界では高い実績のあるプロダクションやスタッフの手によるものですが、本広総監督の影響力がどの程度なのかが観ていてもよくわかりません。例えば機動戦士ガンダムシリーズの富野由悠季総監督ほどの影響力ではないのだろうと思ったり…。

公式サイトは、こちら。
http://psycho-pass.com

2015年2月11日水曜日

『ミルカ』

★★★★☆

インド映画のレベルの高さは私にとって既に当たり前なので驚くべきことではありませんが、とてもよくできていたと思います。インド国内では数々の映画賞を受賞した作品だそうです。

インド映画で、実話を元にした大河ドラマ的な作品は初めて観たと思います。
ミルカ・シンという実在の短距離走のアスリートの半生を描いた物語で、実際は割とシンプルなストーリーだと思いますが、ひとつひとつ丁寧に描いていますし、時間軸を入れ替えたりしてちょっと複雑さを出しています。余談ですが、この時間軸入れ替えの手法、最近私が観たインド映画ではよく使われているのですが、流行りでしょうか(^^;)。
153分、特にダレることもなく観ることができました。

インド・パキスタン分離独立の混乱が悲劇的に描かれているのも、実話ならでは。インドとパキスタンは仲が悪いという話は聞いたことがありましたが、どんな経緯があったのかよく知らなかったので、勉強になりました。

インド映画につきもののダンスシーンは最低限で、ストーリーと無関係に踊りだすわけではなく、実際にストーリーの中で踊る芝居を入れてあるという控え目な演出となっていました。どうもこの作品の監督はダンスシーン否定派のようです。インドにもそういう監督がいるんですね(^^;)。

笑いの要素もほんの少し。実はこの作品には、ブレイク前の武井壮さんが出演しているということを私は観る前から知っていたのですが、彼の登場で監督の計算にはない笑いが客席から起こるかも、と思っていましたが、特にそんなことはありませんでした。

ミルカ・シン役のファルハーン・アクタルの肉体は、短距離走選手と言われて何の違和感もないマッチョぶり。
この人の顔なんですが、ふとした瞬間に日本の俳優の池内博之さんっぽく見えました(^^;)。

この作品の邦題は『ミルカ』ですが、原題は『BHAAG MILKHA BHAAG』。
字幕をよく見ていたらコーチがミルカに対して「BHAAG !」と叫んでいるところを「走れ」と訳しているところと「逃げろ」と訳しているところがありました。もしかすると「走れ」と「逃げろ」の両方の意味を持つ言葉なのかもしれません。
インド・パキスタン分離独立で言われた「逃げろ、ミルカ」と、アスリートとして言われた「走れ、ミルカ」のダブルミーニングを込めたタイトルだとしたら、まさにこの作品の核心をついていると思います。

公式サイトは、こちら。
http://milkha-movie.com

2015年1月15日木曜日

『チェイス!』

★★★★☆

正直、インド映画には若干点が甘いと思います。本当は3.5ぐらいかな。

銀行の融資を受けられずに、シカゴのインドサーカス団の団長である父親が自殺したことを恨んで、大人になった息子が仕返しをする復讐劇。

舞台がシカゴで、タイトルの通りバイクや車の派手なカーチェイスとかもあってかなりハリウッド的なのですが、やっぱりインド映画の破天荒さやダンスシーンなどもあって、進化した現代のインド映画という感じ。

日本上映版は147分だけどオリジナルは162分だとか。いくつかのシーンがカットされているらしい。
『ロボット』のときも最初に上映されたのが短縮版で、完全版が観たいという声を受けて期間限定で完全版が上映されたはず。両方観てしまったのは私です(^^;)。あのときは、ダンスシーンがいくつかカットされていたのはわかりました。やっぱり『チェイス!』もダンスシーンかな。

事前情報としては、あり得ないチェイスシーンがあることだけ。実際に観てみると、確かにチェイスシーンは印象的ですが、上映時間全体から見れば意外と短い気がしました。
インド映画は長いので、現地での上映では途中休憩が入ると聞きます。日本でインド映画を観て休憩があった記憶はありませんが、「後半へ続く」的な字幕が出る場合があるのでその区切りがわかります。
『チェイス!』ではそのような字幕はありませんでしたが、中盤でそれまで伏せられていた事実が明らかになり、そこから急にストーリーの傾向が変わったので、たぶんあの辺りで休憩が入ったのではないかと推測します。
あそこで急に人間ドラマに切り替わった感じになって、しばらく派手なアクションが出てこないのが、多用な要素を盛り込んでいるとも言えるのですが、私自身はちょっとダレた印象も受けました。

主役のアーミル・カーンはインドでは大スターだそうです。日本でも上映された『きっと、うまくいく』にも出ていたので、顔は覚えていました。
私が初めて観たインド映画『ムトゥ 踊るマハラジャ』のラジニカーントも当時インドのスーパースターだと聞きましたが、あれはタミル語映画で、『チェイス!』はヒンディー語映画なので、ちょっとカテゴリーが違うのかな。まあ世代もキャラクターも結構違う気がします。

アーミル・カーンの演技がどれだけすごいかは正直よくわかりませんでしたが、サーカス団員としてアクロバットのシーンがあり、バイクチェイスのアクションシーンがあり、ダンスシーンもあるということで、体はムキムキでした。


公式サイトは、こちら。
http://chase-movie.jp

2015年1月5日月曜日

『ベイマックス』

★★★☆☆

ピクサーがディズニーに買収されても両者の作品を結構区別してきたのですが、徐々にどちらの作品かわからないものが出てきました。この作品も、何となくピクサー作品を観るような心構え(?)で観てしまいました。

ベイマックスの造形とアクションは、ドンくさい可愛らしさがとてもよくて、最初から最後まであの雰囲気でゆるい日常的なストーリーが展開するものとばかり思っていました。
ところが、物語の後半はかなりアベンジャーズな感じの派手な活劇。それはそれで楽しいのですが、やっぱりちょっと期待と違う…。

んー、まあドラえもんの映画とかも敵と戦ったりするので、あれと同じだと思えばいいのかなあ。でもドラえもんは、通常の短編作品の日常ストーリーがあってのスケールが大きい長編作品だからなあ。
もしベイマックスの続編があったら、ぜひスモールスケールのゆるゆるな作品を観てみたいものです。…でもあの終わり方ではムリだろうなあ。

実はこの作品の原題は『Big Hero 6』だそうです。このタイトルを最初から知っていたら、あのストーリー展開も違和感なく受入れられたかもしれません。

日本を意識したサンフランソウキョウは、結局ハリウッド映画によく出てくるインチキニッポンという感じでしたが、でも日本らしいアイテムが風景の中に沢山出てくるので楽しいです。

アメリカのフルCGアニメーションは、人間のキャラクターの顔の造形には苦労している印象があります。また、手描きアニメの時代からディズニーは動物のキャラクターはいいけど人間のキャラクターはイマイチという話も聞いたことがあり、実際私もそう感じていました。
今回も女性や子供は相変わらずでしたが、ワサビというドレッドヘアーの黒人(?)や、大学教授の顔の造形は結構いい感じに思えました。CGらしいデフォルメをしつつ「こういう人、本当にいそう」という気がしました。CGで似顔絵を描く技術が少しずつ進化しているのかもしれません。

公式サイトは、こちら。
http://www.disney.co.jp/movie/baymax.html

2015年1月3日土曜日

『バンクーバーの朝日』

★★★☆☆

いい話だと思いました。
南米やハワイや満州などは何となく知っていましたが、カナダ移民というのは初めて聞きましたし、野球チームの存在もその活躍も全く知らなかったので、そのことを知っただけでも価値があったと思います。

ただ、そうなるとドキュメンタリーの方がより自分の興味には合っていると思います。

エンターテインメントとして見た場合、登場人物たちがやけに破棄がない気がしました。必ずしも野球を楽しくやっているように見えないし、バントや盗塁を多用したスモールベースボールも、他に勝てる方法がないので仕方なくやっているので、どうも爽快感に欠ける印象でした。
たぶんそれは、史実に基づくリアルな描写なのかもしれませんが、だとしたらドキュメンタリーでいいじゃないか、ということですね。

映画では語られていないことで気になったこととして、仕事も少なく低賃金で生活に余裕もないのにどうして野球チームができたのか、カナダ人から差別されていた日本人移民のチームがどのような経緯でカナダリーグに参加するようになったのか、彼らが"発明"したスモールベースボールの具体的な戦術とはバント、盗塁以外にどんなものがあったのか、実際の戦績はどのようなものだったのか、などがあります。
仕事をしながら野球をやっていたのに、遠征とかどうしていたのかもわからないし、そもそも球団運営資金はどこから出ていたのかも不思議です。
そういう意味では、この映画はあくまでもバンクーバー朝日への興味の入り口なのでしょう。

移民一世と二世の意識に違いは作品の中でもちょっと描かれていて、なかなかよかったと思います。

名の通った役者さんが結構出てくるのですが、妻夫木くん演じる笠原とその家族、野球チームの4〜5名以外はほぼチョイ役かなあ。宮崎あおい、ユースケ・サンタマリア、本上まなみの役は、登場しなくてもいいぐらいだし、貫地谷しほりもあまり持ち味が発揮されているとは思えませんでした。よく意味がわからないキャスティングでした。

公式サイトは、こちら。
http://www.vancouver-asahi.jp

2014年12月31日水曜日

『ゴーン・ガール』

★★★★☆

けっこう前から予告編を目にしていたのですが、その時は全然観るつもりはありませんでしたが、どうも評判がよさそうなので観ることにしました。

妻が失踪し、夫に殺害の疑いの目が向けられるというサスペンスなのは予告編でわかっていたので、最後の最後に予想外の真相が明らかになるという作りだとばかり思っていたら、ちょっと違いました。そういう意味では、謎解きを楽しむ映画とは言えないと思います。

R15ですが、エログロの激しいシーンは予想外に少なく、別の意味でゾッとする作品。
単純でバカな男。陰湿で計算高い女。好き勝手にあおり立てるマスコミ。映画で描かれているストーリーはちょっと極端かもしれませんが、現実にもこのぐらいのことが起こりうるのかもしれないという気がしてしまいました。

奥さん役の女優さん、なかなか魅力的なのですが、あの役柄はコワすぎです。

公式サイトは、こちら。
http://www.foxmovies-jp.com/gone-girl/


さて2014年に観た映画は全部で32本。去年は47本だったので、大幅に減りました。もともと少し減らしたいと思っていたので、まあいいセンだったのではないでしょうか。
星5つつけたのは、おそらく『バルフィ!人生に唄えば』1本。よりによってインド映画。もともとインド映画は嫌いじゃないのですが、まさか唯一の星5つになるとは。

『寄生獣』

★★★☆☆

原作は、こういうマンガがあったことがうっすら知っていたものの、内容はまったく知りません。

もっと荒唐無稽なものを想像していたのですが、設定的には意外とちゃんとしていて楽しめました。
でもミギーのビジュアルは好きじゃないなあ。

役者さんは達者な人ばかりですが、この人も寄生されちゃった人を演じるの?!みたいな驚きもありました。

ストーリー的には、この先の展開を全く知らない私にとっては、今回の作品はぶちまけるだけぶちまけたという印象。登場人物たちの運命しかり、いくつかの謎も残されたままで、次回の完結編でどう終息していくのか想像もつきません。

公式サイトは、こちら。
http://kiseiju.com

2014年12月9日火曜日

『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』

★★★★☆

宇宙戦艦ヤマトについては、小学生から中学生のころどっぷりハマったという思い入れがあるので、あのヤマトが新作として当時よりもはるかに高いアニメーション技術で動いているというだけで、嬉しくなってしまうところがあります。
とはいえ、復活篇や実写版と比べて2199の方がワクワクするのは、やっぱり自分の中の基準として、ヤマトでさえあればいいというわけではないということでしょう。

で、今回の『〜星巡る方舟』。ガトランティスは出てきますが、あくまでもイスカンダルへの旅の1エピソードで、それ以上ではないという印象でした。完全に独立した作品にしては、何というかあまり王道ではないストーリーという印象ですし、そもそも1回も波動砲は使わないので。
で、その王道でない(と私は感じる)ストーリーは、2199のテレビシリーズの中で結構苦手な回に通じるテイストだったので「ああ、そっちに行っちゃったかあ」という感じでした(^^;)。そういう意味では、星3.5ぐらいかも(^^;)。

ガトランティスが登場するくらいだから、公開前には明かされていない設定の中にも、旧シリーズに登場している何かが出てくるのではないかと勝手に期待して観てしまいました。たまたまヤマトがたどり着いた星はもしかしてテレザート?でも『宇宙戦艦ヤマトIII』に出てきた惑星ファンタムみたいな感じもあるなあ??など、色々気になってしまいました。制作側からすると、その辺は狙いなのかも。

ガトランティスのナスカ級とデスバテーターはやっぱりかっこいいなあ。『さらば〜』の白色彗星側のメカデザインは当時の自分にはかなり衝撃的で、昆虫の複眼モチーフや、ライトモスグリーンと白のカラーリングなど、とても斬新だと感じたのをよく覚えています。
「デザイン言語」なんていう概念はまだなかったのだと思いますが、子供ながらに、そういうものを感じ取っていたと思います。

当時からヤマトのプラモデルの大部分はバンダイが作っていたのですが、なぜか野村トーイから出ていたナスカ級(旧作では高速中型空母ナスカ)とアンドロメダのプラモデルを買った記憶があります。
メダルーサは、旧シリーズでは『宇宙戦艦ヤマト2』だけに出てきた艦で、あまり好きではなかったのですが、今回の作品の中ではかなりかっこよくリデザインされていました。

公式サイトは、こちら。
http://yamato2199.net

2014年12月6日土曜日

『インターステラー』

★★★★☆

評判がいいのは知っていましたが、確かによかったと思います。0.5刻みなら星4.5かな。

上映時間は3時間近いのですが、飽きませんでした。
主人公が宇宙へ旅立つのですが、出発するまでの長いこと長いこと(^^;)。しかもそのほとんどが質素な農家の父と娘の交流を描いているので、未来が舞台の話だということを忘れそうになります。

最近のSF作品って、舞台が未来でも、庶民の生活は今とほとんど変わらないという描写をよく見る気がします。
かつて思い浮かべていた21世紀といえば、めくるめく夢のようなハイテクがあふれ、都市の景観も人々の生活も今とは全く違う未来世界でした。でも、実際21世紀になってみると、意外と何も変わっていなかったことを知ってしまった今、映画の世界で描かれる未来は、一見今と何も変わらないものの方が現実味があるのでしょうね。

宇宙に出るころからやっとSFっぽくなってきて、こんどはワームホールやブラックホール、コールドスリープ、スペースコロニー、挙句は重力の制御やら五次元など、難しい設定がてんこ盛り。難しいところへ行きすぎてちょっとスピリチュアルな雰囲気になりかかっているところもあるような…。

宇宙船の描写で、時々完全に無音になるカットがあったり、逆にものすごくBGMが前に出てくることがあったりで、音の使い方が印象的でした。

公式サイトは、こちら。
http://wwws.warnerbros.co.jp/interstellar/

『天才スピヴェット』

★★★★☆

ジャン=ピエール・ジュネ監督作品。
ひとことで言えば『アメリ』の少年版みたいな感じでしょうか。他の人達とはちょっと違う思考回路を持った天才少年の家出の話。

相変わらず、ちょっとヘンテコリンなところもあり、可笑しさも哀しさもあるのですが、そういったジャン=ピエール・ジュネらしさは割と控え目な印象でした。もっと、これでもかというほどてんこ盛りにしてもらっても、こちらは受け止めるつもりで臨んだので、ちょっと拍子抜け。
もし事前知識がなかったら、ジャン=ピエール・ジュネに影響を受けた別人がそれっぽい作品を作ったのかと思ったかも。

初めて観た彼の作品は『ロスト・チルドレン』というダーク・ファンタジーっぽいSF作品なのですが、本当に画面上のどこをとってもヘンテコリンで、SF映画といえばハリウッド発の冒険活劇しか知らなかった私に強烈な印象を残しました。
この作品や『アメリ』はフランス映画として製作されていて、何となく彼の場合、フランスで作った方が、彼らしさをふんだんに盛り込めているような気がしてしまいます。

『エイリアン4』は、シリーズ物なので当然彼の独自性は出しづらいのですが、それでも彼の作品によく登場するクセの強い俳優さんが登場していたし、『ロスト・チルドレン』的なヘンテコSF設定が垣間見えました。
『天才スピヴェット』はさらに控え目な印象。これはこれでいい作品なのですが、またフランス発のこってりジャン=ピエール・ジュネな作品も観てみたい気がします。

公式サイトは、こちら。
http://spivet.gaga.ne.jp